ずーーっとウクライナ軍の壊滅を予言し続けている軍事専門家の方はどうされちゃったんでしょう

軍事基地のイラスト
戦争はどちらかが勝つべきというものでもないのですが、それにしてもここまで「お仕事」が当たらないとなるとさすがに専門家としての資質を疑うというか、、






「ウクライナ軍壊滅は間近か」

ここ何ヶ月かJBPressというサイトでニュースを読むことが多いです。色んな立場の方が色んな記事を投稿されているのが気に入っているのですが、その中に矢野義昭さんという元自衛官の軍事専門家の方(73歳)がいらっしゃいまして、この1年はずっとロシア・ウクライナ戦争に関する記事を投稿されています。


他の多くの軍事専門家の方が、アメリカやイギリスの当局またはそれに近い関係者の話をベースに「ウクライナに最新鋭の装備が支給される」「ウクライナが反撃する」といった論調で記事を書かれているのに対し、矢野さんは一線を画していて、「ウクライナが近く全滅する」という論調を終始崩していません。直近の記事はこちら。


これらの動向から、ウクライナ戦争はこれまで報じられてきたようにウクライナ軍が優勢とは言えず、かなりの劣勢に追い込まれているのではないかと思われる。

 戦場の実相は現在どのようになっているのであろうか。

ロシア軍が遊牧民型の戦法で著しい戦果、ウクライナ軍壊滅は間近か 東部ドンバスの戦況と動き出した停戦交渉(1/9) | JBpress (ジェイビープレス)


マジかよ、ウクライナ軍もうダメなの?



間近っていつ?

僕は専門家ではないので未来の予想に対してそれが正しいか間違っているかは判断出来ません。矢野さんの記事はロシア高官の発言だけを取り上げたものではなく、アメリカの分析やウクライナの分析も織り交ぜながら多角的に検討した結果になっているので、読んでいると「そうであってもおかしくない」とも思うのですが、ただしかし一点だけ明らかになっていることがあって、矢野さんはこれを1年間ずっと言ってるんですよ。最新の記事はともかく過去の記事については誤った予想だったと言わざるを得ません。

戦争勃発後の記事を時系列順に掲載してみます。


2022年8月8日

 将来戦の様相を予測し、理論と実践の両面から戦略原則を明示し、情報、編成装備、運用、兵站、人事、訓練など、軍事力全般にわたる諸要素が含まれている。

 さらに国家全体としての戦争の予防・準備・遂行についての採るべき態勢にも言及している。

 その方針に沿って、5年以上の歳月をかけて、ロシアは軍のみならず国家総力を挙げて戦争の準備と遂行に備えてきた。

 その成果が、今回のウクライナ戦争に現れている。

ウクライナ軍壊滅の日は近い? ロシアから見える現在の戦況 ゲラシモフ論文の戦略を実践、5年間準備してきたロシア軍の底力(1/13) | JBpress (ジェイビープレス)


2022年12月21日

12月12日頃からロシア軍(露軍)の本格的な冬季攻勢が開始された模様である。

 今冬で露軍が勝利しウクライナ戦争に決着が着くかどうかの分岐点に差し掛かっている。

本格攻勢に出始めたロシア軍と崩壊寸前のウクライナ軍 損耗著しいウクライナ兵に代わりNATO軍兵士も戦闘参加(1/6) | JBpress (ジェイビープレス)


2023年3月1日

開戦から1年を超えたウクライナ戦争に終末が近づいている兆候がみられる。ウクライナが敗北する可能性が高まっている。

 その背景を探ると共に今後の推移と影響を分析する。

ウクライナ軍はまもなく大敗北喫し戦争終結、これだけの証拠 紛争の東アジア飛び火に備えて日本がすべきこと(1/5) | JBpress (ジェイビープレス)


え、間近って何年後ですか。



戦争前には「戦争が起こる可能性は低い」とも

ロシア軍約10万人がウクライナ国境付近に集結し、NATO(北大西洋条約機構)がウクライナ支援を表明するなど、ロシア軍によるウクライナ侵攻の危機が報じられている。

 しかし、本当に戦争が起こりうるのか、ロシアとウクライナ・NATO双方の開戦動機と国力、戦力比較から見て、その可能性を冷静に分析する必要がある。

軍事専門家が徹底分析、ロシア軍のウクライナ侵攻はあるか 政治・外交的動機、国力と戦力からみた戦争勃発の可能性(1/11) | JBpress (ジェイビープレス)



記事は有料記事になっていますが矢野さんが上席研究員として所属している「一般社団法人日本安全保障戦略研究所」サイト掲載のこちらのPDFで全文を閲覧出来ます。それによると結論はこんな感じ。



Ⅲ ロシア・ウクライナ戦争はあるのか?
このようなバイデン政権の挑発的姿勢が現在の緊張関係の主な要因とすれば、ロシアとウクライナ間の全面戦争に至る可能性は低いであろう。

(中略)

以上の諸要因から見て、プーチン大統領がウクライナとの戦争を決断する可能性は低い。

また欧米にとってもロシアとウクライナの全面戦争は望ましいとはみられない。仮に起きたとしても、いずれにも決定的な勝利はなく、長期の泥沼の戦いとなるであろう。結局は現状に近い、東部ウクライナでのロシア軍の支援を受けた親ロ武装勢力とウクライナ軍の限定的な代理戦争になるとみられる。

yano-48-20220210.pdf


全部が的外れというわけではないものの、日本から素人が眺めた感じでは「プーチンは戦争を望んでいない」「プーチンは勝てない戦争だと解っている」「代理戦争で終わる」といった言説が結果的に的を射ていなかったのは明らかに見えます。またこの記事が掲載されたのが戦争突入直前の2022年2月8日であることから、矢野さんは直前になっても正確な情報を得ることが出来ていなかったことがわかります。


軍事的な知識はしっかりされているのだろうとは思うのですが、情報の収集や分析には向いていらっしゃらないのかなと。情報戦について専門に研究されていた方に素人がこんなことを言うのは大変おこがましいのですが、、



そろそろ手じまいにされたらいかがでしょうか

繰り返しになりますが矢野さんの仰ることは間違いだということをいいたいわけではありません。局面、局面では正しいことを仰っているときもあるでしょうし、個々の情報は正しいのだろうと思います(僕にはわかりません)。ただそれらをつなぎ合わせて大局を語るとき、少なくともこの戦争に関しては1年経った今でも上手く勘所をつかめておられないようです。

道徳心のある専門家であれば、最新記事はまず「前回の自分の分析のどこが誤りで、どの部分は正しかったか」から入ると思うのですがそれもない。うーん。


まあ別に知ったこっちゃないので放っておけばいいことではあるのですけど、さすがに心配になってきました。ご自身のキャリアに傷を付けないためにも、ここらで手じまいにされた方が良いのでは無いかと老婆心ながら思うのですが、余計なお世話でしょうか。

編集の方も何か言ってあげていただければと思います。先生、ここらで一連の連載記事を振り返ってみましょうぐらいの話はしても良いのでは。さすがに。