日本でよく見掛ける主張
当然ですが日本では大谷翔平選手をMVPに推す声がよく聞かれます。アメリカでは実際には2つに分かれて侃々諤々やってるわけですけど、日本で紹介されるときには大谷選手よりの意見が多いですね。例えばこんな。熱烈な大谷ファンとして知られるベン・バーランダー氏の番組に出演したカリーさん。大谷とジャッジを巡る“MVP論争”が高まる中、大谷の価値を強調した。「どのスポーツにも共通しますが、何故今起きている素晴らしいことを(理解して)味わえないのでしょう?」と疑問を呈し、「ショウヘイ・オオタニはMLBで誰も成し遂げたことがないことをやってのけています。先週、オオタニは1シーズンで10勝&30本塁打超えを達成した唯一の選手になりました」と力説した。
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さらに「その活躍と比較できる選手は他にいないし、その記録に近づくことさえできません。議論するのもおかしいし、去年は満場一致で(MVPを)受賞しています」と強調。投打二刀流で唯一無二の成績を残している大谷がふさわしいと訴えている。
バーランダー氏もカリーさんに同調。「アーロン・ジャッジの活躍には興奮しているし、記録(ロジャー・マリスが1961年にマークした球団記録の61本塁打)を破ってくれることを願っている。ただ、破ったとしても彼がMVPを受賞するいう意味にはならない」とし、「ショウヘイ・オオタニは毎日誰も見たことのないことを見せてくれる。彼(ジャッジ)は歴史を追いかけているが、ショウヘイ・オオタニ自体が歴史であり、誰も成し遂げたことがないことを我々の目の前で起こしている」などと意見を述べている。
わかります。満票でMVPを獲得した昨年は「すごい球を投げる、めちゃくちゃホームラン打つ選手」だったのが、今年は「めちゃくちゃすごい球を投げる、ホームランを打つ選手」になっていて評価のポイントが若干投手に変わっています。総合評価では依然として比べるもののない存在であり、匹敵する選手を見つけろというのが無理という話。
でもね、MVPというのは実力を評価する賞ではないのですよ。MVPが投票によるものである以上、ある意味で人気投票であり、その年最もインパクトのある活躍をした選手が選ばれるべきです。大谷選手の活躍はもちろんインパクトがあるけれど、去年はなかったものが今年はあるという意味でやはりジャッジ選手の方がよりインパクトがあるかなと。
でも、チームの成績は関係ない
お前が言うなでお馴染みのマグワイアさんがこんなこと言ってました。マグワイア氏は「オオタニの活躍を私は知っている。けれどもだ。エンゼルスの順位を見てほしい。ワイルドカード争いにもいない。ジャッジ抜きならヤンキースは今頃どこにいるのか。(MVPは)断然ジャッジだ」と力説。現在ア・リーグ東地区の首位を走るヤンキースと、ワイルドカード争いからも大きく離されたエンゼルスの成績がMVPにも直結するとしている。
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わかる部分はあります。チームを優勝に導いた選手はすなわちその年、最も印象的な活躍をしたと言えるでしょう。でもMVPというのは優勝への貢献度を比べる賞ではありません。その活躍がチームの優勝に繋がるならベストだけれど、繋がらなくてもMVPに選ばれている選手はたくさんおり(例えばマイク・トラウト)、チーム成績は必ずしも必要ありません。
だいたい、守備が上手いことを指して「二刀流」って呼んでることに知性を感じないんだよなあ。
米全国紙「USAトゥデイ」のボブ・ナイチンゲール記者に語ったもの。「マーク・マグワイア氏が語る。アーロン・ジャッジはボンズを超え、プホルスは700本塁打に射程圏内だ」と題した同紙の記事によれば、MVP争いについてマグワイア氏は「ジャッジが最終的に何本打とうが、文句なしでMVPになるべきだ」と語っている。
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その理由として「ジャッジは二刀流ではないが、外野の守備力を誇る“二刀流”の選手」だと主張、さらに「ヤンキースをプレーオフ、そしてワールドシリーズへ牽引する存在が彼だ。MVPになるだろう」と、チームを勝利に導くことが何よりも重要と考えているようだ。
そんなバカみたいな理屈を持ち出さなくても、ホームランだけで十分にMVPの価値があります。全体的にホームランが減った今年、ジャッジ選手のホームランにはそれだけのインパクトがありました。
ただ、残り21試合で現在ホームラン55本。ペースとしてはシーズン63本ぐらいでマグワイアさんの記録には及ばないし「すごいけどベストではない」というレベルに落ち着きそうで、そうなるとインパクトがあったかというとちょっと弱いかなあ。好記録でありステロイドなしの記録として素晴らしくはあっても衝撃的な記録というわけではない。それでMVP?ちょっとなあ……
大谷選手以降「衝撃的」のハードルが上がってる気がする
なんというかこう、ダウンタウン以降のお笑いみたいな感じですよ。ちょっとぐらい気の利いたツッコミする程度ではお客は沸かなくなってるんですね。だってホームラン34本打って(アメリカンリーグ2位タイ)投手としても12勝を挙げてて(アメリカンリーグ7位タイ)、史上初の規定打席と規定投球回の同時達成を狙える状況ですから。「ホームラン63本」と「史上初の規定打席と規定投球回の同時達成」とを比べたら、そりゃあ大谷選手の方がインパクトがあったといわざるを得ないでしょう。ジャッジ選手がここから打ちまくって75本とか打てば話は別ですけどね……あとはまあ投票権を持つ記者の人たちが何を求めているかにかかっているんでしょうね。「飽きた」という気持ちは理解出来なくもないので、難しい判断になるだろうなとは思います。
最後にMVP投票者やファンが“飽きてしまうこと”に言及した。「人々は飽きるもの」で新しいものを求めると指摘。昨年大谷とMVPを争ったブラディミール・ゲレーロJr.(ブルージェイズ)を上回る成績をジャッジが残しており、投票者やファンのジャッジへの感情は、ゲレーロJr.と比較しても大きくなっていると指摘。さらに「飽きは影響する。今季がオオタニの二刀流としてのブレークイヤーであればアメリカン・リーグMVP論争はさらに白熱していたであろう」と主張している。
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どうなるかなあ。