とある唐揚げ屋の値段から考える鶏肉の値段について

唐揚げのイラスト
近所の元チェーン店系弁当屋だったところの跡地に、最近流行っているテイクアウト専門の鶏の唐揚げ屋(大手のチェーン系じゃなく独立店みたい)が出来ましてそこそこ流行ってます。夕方17時ぐらいから、晩ごはんのおかずにするのか結構な数の人が待ってます。僕も鶏の唐揚げは好きですがまだ買ったことはありません。美味しいのかな。






こだわりの材料?

鶏の唐揚げ屋の店頭には、その店がいかに材料にこだわって作っているかということが書かれています。化学調味料不使用、醤油、塩麹、砂糖、塩など各種調味料もそれぞれ伝統的な製法で作られたこだわりの材料を使っているとのこと。油は山中油店の圧搾油、米粉は京都丹波産などなど。へーすごいじゃんと思うんですけど、唯一、鶏肉についてだけ詳しい話は書かれていません。公式サイトを見ても「肉の専門家が選んだこだわりの鶏肉」とだけ。

おいおい、そこが一番大事なところなんじゃないの?「鶏の唐揚げ」なんだからさ。



ぶっちゃけ、国産鶏では採算が取れません

ま、言うまでもないことなので誰も突っ込まないんでしょうけど、当たり前だけど国産鶏なんかでは多くの飲食店の鶏メニューは成立しません。

国産鶏肉を使った場合

例えば我が家で買っている国産鶏もも肉(抗生物質・合成抗菌剤不使用)は100gあたり180円(税込、以下同じ)します。いわゆる「国産若鶏」と書かれているノンブランド肉であればもう少し安くなりますが、それでも鶏もも肉は100gあたり140円前後(安売りなら100円前後)します。もしうちで買っている鶏もも肉で先ほどのお店が商売した場合、40gで162円だそうですから、鶏肉だけで原価率が44.4%になることになります。こだわりの材料を加算したら余裕で原価率60%を越えるでしょう。賃料や光熱費を考えるとそんな原価率ではどれだけ売っても儲けが出ません。

業務用ブラジル産鶏肉を使った場合

多くの飲食店で使われている鶏肉は、いわゆる「ブラジル産鶏肉」というやつです。輸入されてる以上安全性は確認されていると思いますが、過去には問題が起きたこともある鶏肉です。で、このお値段がいくらかというと、業務用で来る冷凍鶏もも肉は2kgでだいだい600円ぐらいです。つまり 100gあたり30円 です。我が家で買っている鶏もも肉の1/6、国産若鶏の1/5程度の値段です。この鶏もも肉で原価を計算すると鶏肉部分が7%。これなら諸々いれても原価率20%ぐらいで収まりそうです。小さな店舗で大きな売上を見込めない規模でも効率的に利益を得られて商売になってくる。

例えば某店のチキンを使ったスパイスカレー(950円)で使われている鶏肉は、1食当たり20円を切ります。2kg使ってカレーを仕込めって言われて常識的な材料で仕込んだら20食分しか作れなかったんですが、他のスタッフはそれで40人前仕込んでました。どんだけだよ。それで「原価が厳しい」と言ってましたけど、いやあ申し訳ないけどさすがにそれは狂ってるとしか。でも、ブラジル産鶏肉を使ったメニューってそういう立ち位置ですよね。



こだわりの唐揚げ屋が鶏肉の話をしないのは欺瞞じゃないのかな

そういうわけなので、くだんのこだわりの鶏唐揚げ屋が使っている肉は、ブラジル産鶏肉もしくはそれと同じレベルの鶏肉でしょう。でないと商売が成立しませんから。その店に限らず、鶏肉について詳しい説明をしていない飲食店で扱っている鶏肉は、基本的にブラジル産です。どう考えたって値段が安すぎます。国産から変えるだけで利益が何倍にもなり、経営を支えるメニューになるんですからこんな美味しいことはありません。こだわりさえ捨てれば。

当たり前の話ですけど、鶏の唐揚げで一番重要な食材は鶏肉ですよね。こだわりを訴えるのであれば、まず最初に鶏肉の詳しい話をしないと始まらないはずです。それなりのお値段する焼き鳥屋は必ずその鶏の話をするでしょう。こだわりのステーキ屋が、出している肉の話をしないなんてことはあり得ないわけです。どこ産のどの部位かを説明してからがスタート。油だの塩だのといった話はその後です。こだわりをアピールしてるのに鶏肉の話をしないのは明らかに欺瞞でしょう。そこのところどう考えてるんですかね。



いつか買える日が来ることを願って

いつか、その店が鶏肉に関する説明とアピールをしてくれる日が来るかなと期待しつつ、そうなったら買っても良いかなと思って店の前を通っているんですけど、相変わらずピントのずれたこだわりアピールを続けていて見るたびに笑ってしまいます。こだわりの材料に対するアピールがすごいせいで余計に鶏肉に対する無言な感じが浮いちゃっておかしくて。いくら安くても材料にこだわってても、ブラジル産とわかってる唐揚げをわざわざ買うのはなあ。居酒屋でわかってて注文するのとは違うしなあ。いつかその辺を解決して買っても良いかなと思える日が来ることを願っております。


まあ、今のまま続いてもそれはそれで面白いから別にいいんですけどね。