警察に事情を聞かれていた件がようやく書類送検に至った模様です

京の洛スク
別に止められていたわけではありませんが、なんとなく伏せていた事件のあらまし。NHKニュースでばっちり記事になってたのでもういいよね






ニュース詳細

軽い力でペダルがこげる電動アシスト自転車に安全基準を超えるアシスト力をつけた製品を、法律の適合品のように見せかけてネット販売したとして、京都市の会社が不正競争防止法違反の疑いで書類送検されました。

(中略)

京都府警察本部によりますと、京都市の自転車販売店「京の洛スク」の運営会社は、この基準を大幅に超える強力なアシスト力をつけた製品をネット上に「すべてがスゴイ電動アシスト自転車」などと広告を出して販売していた疑いがあるということです。

(中略)

代表取締役は容疑を認め、「法律の基準外であることは分かっていたが、利益のためインターネットサイトで伏せて販売していた」と話しているということです。

会社では、海外から製品を安く仕入れていたとみられるということで、安全基準を超えることが確認された製品を少なくとも136台を全国に販売していたということです。

電動アシスト自転車 安全基準超で販売か 京都の会社を書類送検 | NHK | 事件



事情を聞かれたあらまし

京都府警にお呼ばれすることになりました

引き続き警察に事情を聞かれました(警察署には行かなくて良くなった)

警察の供述調書に署名しました(一旦一区切り)




何が問題か?

はてなブックマークコメントをちらっと眺めたところあんまり事情が飲み込めてない人がちらほらいたので、何が問題とされたかを簡単に。


今回の書類送検に関して、社会的な意味で最も問題があると思われることは、


「基準を大幅に超える強力なアシスト力をつけた」自転車を販売することは、違法ではない


ということです。結局の所、一番の問題はそこです。



警察の「苦肉の策」のアプローチ

京都府警(または警察庁もしくは警視庁)としては、多くの事故が報告され安全上問題が認められる自転車を規制したいと考えているのですが、現状、乗っている人を止めて事情を聞き任意で協力を要請し、乗っていた自転車のアシスト比がどうなっているかを工場などで調べた上で問題があったら道路交通法違反に問うというアプローチしか出来ません。罪を問われるのはあくまで乗っていた人間であって販売業者ではなく、販売業者が売りさばく限りこのような自転車は増え続けるわけで、イタチごっこ以上に分が悪い戦いです。


その中でなんとしてでも流通量を減らしたい警察としては、せめて「問題ない自転車だと誤認して購入する人を減らしたい」「合法と偽って販売する業者を減らしたい」というアプローチは出来ないか?というのが今回の一件です。その辺りは事情を聞かれた刑事さんからも「何とかしたいのに何も出来ない」という悔しさが非常によく伝わってきましたし、考えに考えた上で辿り着いた苦肉の策だったのだろうと思います。なんせ交通課の刑事が扱う事件が不正競争防止法違反ですからね。畑違いにも程がある。


恐らく立件に当たっては多くの販売業者を調べたんだと思うんですよ。その結果いちばん危ない売り方をしていたのが京の洛スク(株式会社The NeO)だったので、標的に定められたんでしょうね。事情を聞かれた中でサイト上の具体的な文言がどうであったかとか、その文言を掲載するように指示したのは誰だったかなどをかなり重点的に聞かれましたが、それも責任をどこに持っていくかという話だったからでしょう。僕が働いていた当時は、基準内であることを意識していたように思うのですけど(実際にレクチャーも受けたし全ての製品がその基準を満たしているという認識だった)、僕が辞めた後のどこかのタイミングで変わったのかも知れません。その辺りは石川社長に直接聞かないとわからないです。



海外から製品を安く仕入れていたとみられる

NHKの記事の中で笑ったのはここで、NHKも警察も京の洛スクが自転車を製造していたとはみなしていないんですよね。超笑える。


何度か書いてきたことなんですけど、この会社のやっていることって企画を中国の自転車製造会社に投げて返ってきたデザインに色を塗る、それだけなんですよね。ラフなデザインを投げることはあったにしても、自転車のフレームの開発だとか、製造に当たっての設計だとかそういったことは全部中国に丸投げで、開発なんか1ミリもしてません。この状況で「当社で開発・製造した電動アシスト自転車」とかどの口で言ってんだよと当時から思っていたもんですけど、一昔前にあった深圳のIT企業から製品をかき集めて「起業1ヶ月で20製品」とか言ってたガワだけの会社、要はあれと同じです。


会社としては「我が社が作っている」と言い張ってましたが、実際には安く仕入れて組み立てて売るだけなので、それが簡単だとか暴利をむさぼるとかいうつもりはありませんが(実際に大変な仕事だし競争力確保のために安価に設定してるから利益はたかが知れてる)、少なくとも製造はしてません。ぶっちゃけ輸入業ですよねえ。WordPressのテンプレートを開発して「我が社で開発したCMS」とかいって売るようなもんです。エンジニアとしてはなめんなって感じですね。今なら中国の会社が直でAmazonで売ってそうですけどね。



社長には頑張って再出発して欲しい

京の洛スクの名誉のために言っておきますが、よくない製品をラインナップしていたのは一部のモデルだけです。NHKでサムネイルにされたモデルは「SEAGULL 26インチ」というスポーツタイプのモデルで、確かに京都市内でもこのモデルがバカみたいな速度で疾走しているのを目にすることがあります。マジ危ねえ。アレを売ってたことは、ホントに深く反省していただきたい。


ただ一方でママチャリとか街乗りのラインナップに関しては結構真面目に売ってたと思うんですよね。最近でこそあらゆるメーカーが電動アシスト自転車を販売していますが、僕が働いていた当初は国内の一流メーカーが販売しているのみで、京の洛スクのママチャリはその半分以下の値段でした。性能はそんなに変わらないし乗りやすさも変わらない。子供を乗せて大変な思いをしているお母さんを助けるという意味で、京の洛スクのママチャリが果たした役割は小さくないと僕は思うんです。そこは評価してあげたい。


ただそれでも「闇落ち」という印象はやはり拭えないし、このまま電動アシスト自転車にもどってやっていけるのか?というとどうなんでしょう。むしろ開き直って電動バイクでも売ったらどうなんでしょうね。先のSEAGULLをLUUPと同じ基準で整備して(ミラーとナンバープレートがあれば行けるはず)、今度こそ堂々と売り出したらそれはそれで面白いかも。まあ、山師みたいな社長であり、今までも商機を逃さずビジネスしてきた人なので大丈夫かな。挫けずに頑張って再起して欲しいと思います。



関係した皆さん、お疲れさまでした。いやあよかったよかった。