5 minutes

いつから彼女を好きだったのかは、もう憶えていない。 そのころ熱心に付けていた日記には何か書いているだろうか? いや、たぶんなにも書かれていないだろう。 あれは、彼女が好きになり始めてから、『熱心に』書き始めたのだから。 僕は彼女に突然出会ったわけではなかった。 出会って1年以上もの間、本当にごく近くにいたのに、ほとんど何も話したことがなかった。 そして、ある日、それはたぶん、ある5月のよく晴れた日、 いつも通り、教室の一番後ろの席からぼんやりとクラスメイトを眺めていて、 彼女がいることに気づいた、のだ。 以前に冗談めかしてその話をしたら、ずっと前からいたよぉ、と、冗談めかして返されて、 二の句が継げなかった。いや、確かにそうなんだけど、僕には、そうじゃなかったからだ。 そんな僕の恋の始まりは、結局のところ、いままでと同じことだった。 よくよく考えてみれば、僕には一目惚れというヤツがない。 照れ隠し、というわけではないけど、比較的長い間なんとも思わなかったのに、 ある日突然、あ、こんな女の子いたんだ…パチリ、とスイッチが切り替わるように 想う、 自分でもよくわからない、わからないから、ただ、そうなんだ…と思う、 初めから仲がいい女の子はそのまま仲がいいままという方が多い、 でも、その恋は上手くはいかなかった。 そのとき、彼女には彼氏がいたし、その彼氏に遠慮してる間に、僕の友達に取られてしまった。 『取られてしまった』…嫌な表現だけど、でも、正直な感想だ ただ、その友達が好きだったから、しょうがないか、と思っただけだ そう、上手くいかなかったのだ、 ある、5分間を除いては… ** 本屋を出て、交差点をわたり、2ブロック歩いた先に、 紅い看板が下がっているビルがある、 そこは僕のお気に入りの場所で、 待ち合わせのビルに週2日行くのだって、このバーによるついで、みたいなものだ とはいっても、店員と何かを話したことはない。 顔さえ定かではない だいたい僕はタヒチ・ビールを注文して、それを飲みながらタバコをふかし、 目の前の窓から見える前の通りをぼんやり眺めて、 きょうあったことや、昨日あったことや、明日あるかもしれないことや、 ずっと、前にあったことを思い返しているだけだから、 そこに来ている誰かと、共通の話題を持つことは極めて少ない、 注文以外で言葉を発したことさえないかもしれない、 だから僕は、顔なじみだけど、常連客じゃなかった でも、そのバーはそんな客が多かった

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正直に言って、部屋を出るとき、まだ迷っていた。『どんな自分で行こう』か、と。 もちろん、何を考えて出掛けたとしても、『僕は僕』で間違いはないのだが その日逢う相手が、5年間想い続けてきた相手…というのなら話は別だ。 ただし、5年前とは違う、彼女は結婚を間近に控えた女性であり、 僕にも、半ば将来を誓い合った相手がいる、 そう、5年は長かった だとしても、僕にとって『昔好きだった女性』というのは特別であり、 それはつまり、期待する心と、失望を拒絶する不安とが入り交じった時間でもあった だが、僕はいちばん正直な心は、『逢いたい』ということだ、ということを素直に認め、 ── それはもとよりわかっていたことなのだが ── バス・ルームの鏡で最終チェックをしてから、 部屋に鍵を掛け出掛けた。 待ち合わせたのは僕が週に2度は出掛けているビルの1階で、 同じような待ち合わせの男女がひしめいてる他は、迷うわけなどあるはずはなかった、しかし、 そこへ向かうまでの道のりは、とにかく、非常に遠く思えた 出来れば、その交差点の向かい側の2階の、 少しこじゃれたおよそこのドキドキした心境には似つかわしくないようなカフェの一角に陣取り、 待ち合わせ場所を盗み見ながら、気付けのウオッカなどをあおりたいような気分だった だが、待ち合わせの時間に既に3分ほど遅れていた僕はそんな話はさておき いそいそと待ち合わせ場所へと向かった まるで、初めてのデート、の時のように。 彼女は、すぐそばの本屋で立ち読みして待っていた。 一瞬、怒って帰ってしまったかとも思ったが、 彼女に限ってはそんなことはあり得ないし、正直言ってかなりあせったが、 結局のところ、何も問題はなかった。 彼女は ── 僕が好きだった頃のままだった。なにも変わってやしない。 あやうく、本屋で見つけた瞬間に、惚れそうになったが、いやいや。そうはいかない。 少し、いつもより(僕が知っていた『いつも』より、だが)厚く化粧をし、 少し派手めの服装をし、 つまり、気を遣ってくれていた。 一方の僕はといえば、未だに学生気分であり、普段着に毛の生えた程度の格好だった。 もちろん、スーツや、その他の、『デート仕様』で来ることも考えたが、 そんな服を着て一番焦ってしまうのは自分で、 なにより、彼女に警戒されたり、笑われるのが嫌だったので、 努めて、『普通』にしていたのだった そして、先に見つけたが、何も言わずに近づいていった僕を見て、 彼女は、 『久し振り、変わらないね』 とだけいい、にこっと、笑って見せた。 それは、僕が、惚れた、笑顔だった。

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absolute[VODKA]

僕を知っている友人なら知っていると思うが、 僕は、とにかく、ウォッカが好きだ。 なかでも、スウェーデン産ウォッカ、[absolute] がたまらなく好きで、 いまも、自宅の冷凍庫に保存してある。 ウォッカといえば、ロシアだが、実際に広まったのは フランスで生産されるようになってから、らしく、ロシア、フィンランド、スウェーデンの北欧3ヵ国を ウォッカライン、と呼んだりする。 そうそう、ウォッカを飲む上で大事なことは、 『冷凍庫に保存する』ということだ 霜がつき、半ば凍り付くほどの温度で保存する、 ものによっては、中身が凍り付き、きらきらと綺麗に光るものもある、 先ほど出してきたこの [absolute] は なぜか、とろりとした感じになっていて、ほのかに甘い。 冷えきっているから、氷など足さなくても、 ストレートで十分に美味い。 ウォッカは強い酒、そのとおりだが、 僕は不思議とウォッカでは二日酔いにはならない。 きょうは既にビール2本と梅酒を少々飲んでいるからわからないが、 とにかく、酔い覚めがいい。 その点でいうと、 バーボンやウィスキーは飲んでるうちに頭が痛くなるし、 日本酒はあのにおいがあまり好きではない、 だから、ウォッカは最高だ。 そういえば、 【absolute】とは、【絶対、完全、純粋】という意味だ。 僕にとってこの飲み物は、 まさにそのとおりかもしれない。

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alpha

オブジェクトの alpha値を 100%から0%に減っていくように設定すれば、 そのオブジェクトは徐々に拡散し、消えていくような効果を得ることができる… 『FLASH』を触ったことがある人なら誰でも知っている『手法』だ >> なぜか、残念でしかないのだけど、 いま、枯れている僕の心には そんな言葉も何の衝撃も生み出さない、 『そうなんだ、がんばってね』 秋の月を目に入れたまま ひどく関心がなさそうな顔でそういった >> 最近ずっと気がのらないんだ、誰といても、どこにいても いつからなんだろう…? そういえば26日には既にそんな感じだった 『すべてがどうでもいいんじゃない?』 って友達が言ったのとはちょっと違う >> SEX も面倒だ、な、重症だろう? もちろん、インポテンツなんかじゃない、性欲はある、 でも面倒なんだ 誰かに特別逢いたいとも思わないし、 音楽を聴きたいとも、酒を飲みたいとも思わない ただ、 面倒なんだ、枯れてる >> そんなだから、 キミのalpha値が僕にとって0%に近づいていったとしても なにも起こらない。 きっと、変わらず呆然として、『そうなんだ』と言うだけだと思う 昔から何度も思ってた、 いい彼氏を連れてきたらいいのになって いまはただそれだけを願う >> 1度ならず2度まで キミの“幸せ”に割り込んだことは本当にすまなかった だけど、自分を見失っている、または とても幸せそうには思えなかった だから、悪いことをした、とは、思わない どんな人生を送り、どんな恋をして、どんな結婚をしてもいい 俺にはおよそ関係のないことだ だけど、意味もなく焦って、自分を説得して 見失うのだけはやめてくれ…。 …。 まぁいいや、 そんなこともあるよな。 >> 俺は、変わらない。 逢って、といわれたら逢いに行くし 顔も見たくない、 といわれたら顔を見そうな場所は避ける 変わってないよ しばらく後でも。 is.

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no emotion

実際の話、、 僕は長いこと1人だけ悩んでいなかった もう悩むのを止めてしまったからだ 自分のしていることや言っていることが どんな影響を及ぼすか想像できないわけではなかったが そんなことどうでもよかった 都合が良かろうが、 誰かのこころを傷付けたり 踏みにじったりしていようが 自分さえよければ良かった 残念ながら いまも、そうだ。 いろんな人とそのことで話をし、 いろんな人がいろんなことを言った でも結局はそのほとんどを無視して 僕はしたいようにし、やりたいことをやり、だらだらとした、 他人たちの好意に甘えてだらだらと自分のしたいことだけを、した、 そしてちっとも反省していない いちばん怖くて情けないのは すべての人がそういう僕に気づくこと 『盲目』から醒めてきちんと評価して、 『アナタが』ダメなのよ ということ、 恐れながら、しかし、そう望んでいる、 いま僕はほとんど引きこもりだ 誰にも特に会いたくはない 25のひきこもり、 それが僕のすべてだし、それ以上なんかでは決してない あらゆる選択に 決意に 遅すぎるということはない 人は流れる時間の中で生きているのではなく 『いま』でしか生きられないからだ 『いま』選択したのなら、その後に選択後の世界があるだけだ コミュニケーションを取りたくない、というわけではない 電話やメールがあれば嬉しい。 話をしても取り立てておかしくない、かもしれない 金曜日に家に来た大学からの友達、は、 果たしてそれに気づいたろうか、いや…無理かもしれない。 ただ、逢いたくないのだ。 そんなわけで、ここ2年の間に知り合いになった人たちとも 会いに行けるか定かではない 明後日、10/3夜は出掛けようと思っているけど 止めてしまうかもしれない。5分5分だ、 ひとつだけ、心配性のひとのためにいっておかなくちゃならないのは、 僕がこうなっているのは、誰のせいでもない 僕は決して死んだりしない そういうことだ、 また、どこかで シニカルなことを言いながら しったかぶって 生きてるだろうよ。

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ウエタミ

ウエタミ。 明けてみると、 そんなに体調は悪くなっていなくて ほっと一安心なんだけど 何かやっぱり気乗りがしないのはかわってなかったと思いつつ まぁそのうちなんとかなるよ。 というわけで wait a minutes ウエタミ。 (『夕方らせん』銀色夏生)

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photograph-003

デジタルカメラという便利なものを購入して以来、 かなりのスピードで写真を撮りまくっている。 1枚のメモリーカードで約80枚(正確には82枚)撮れるのだが、 もしかすると、9月だけで1000枚近く撮ってるかもしれない。 何故そんなにデジカメを使うかと言えば、 ひとえに“現像”の簡単さにある。 プリントして『写真』にしようと思えばそれなりの手間がかかるが パソコンにた保存しておこうというのならば、 帰宅して5分で完了である。 そして当然また撮りまくることができる。 さらに見た目はコンパクトカメラでも、光学ズーム付きだし、 (つまりデジタルズームのように拡大したら粗くなるという心配がない) レンズもなかなかだし、 画質もパソコン上で見る限りは悪くはない。 とにかく、便利なのだ。 『質』と『便利さ』のバランスが、いまのところ申し分がない。 そんな中で、唯一頭が痛いのが『電池』だ。 ディスプレイを見ながら撮影すると (一眼レフではないので“覗き穴”で見て撮ると、多くの場合できあがりが違ってしまう) 82枚撮りきった時点でアルカリ単3、2本が終わる。 フィルムに比べれば金銭的には大したこと無いのだが、 フィルムに比べて『電池の大量消費』はどこか精神的にこたえるところがある。 まぁ充電電池(実売\5 000程度)を購入すればいいのだけど。 ていうか、近日中に購入予定。 そんなわけで、 日常、非日常に限らず、残しておきたい、 というときにはカメラを持っていられる。 事実、かなりの枚数を撮り、自分のサイトにもアップし、 その数倍から数十倍の画像がパソコンに保存されている、 サイトを作るときにちょっとした素材、何かも撮れるようになった (以前は撮ってもパソコンに持ってくるまでに時間がかかりすぎていた) んーデジカメにはまだまだ飽きそうにないが、 こんなに頻繁に撮ってると、周りの人に嫌がられそうだな(笑) 最近の撮影状況:鴨川、清水、北山、パーティ。

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for Girls(around me)

女の子の表情が好きだ、 ただ女の子が好き、なのではなくて、 だから、僕と仲良くなってしまった女の子は 大変だろうな、と想像する 多くの、突拍子もない表情を要求するからだ この女の子は、 僕がこんなことをしたらどんな表情をするんだろう? それが見たくて、およそ幼稚なことを、 したり、言ったりする。 思った通りのリアクションでも、 まったく違ったリアクションでも、 わくわくする。 いつも穏やかににこにこしてくれている女の子は その子がいい子かどうかはともかく、 つまらない。 拗ねたり、泣いたり、怒ったり、ぼーっとしたり、困ったり、 照れたり、憧れたり、喜んだり、楽しんだり、迷ったり、 決心したり、見入ったり、がっかりしたり、酔ったり、 微笑んだり、 しててほしい。 恋人や憧れの人、だけじゃなくて。 僕の周りにいる、すべての女の子に。

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991209

『羽根』 知らない店のカウンターで、ビールの後に、『アラユ』を飲みながら 友達の女の子と、その子の友達の、知らない女の子と 3人で話をする。 非日常なはずなのに、日常的、それとも日常にあるけどどこか非日常的? どこか違和感を感じながら、でも、それを楽しみながら、ブラジル産、 アルコール度数40%のスピリッツを飲み干す。 僕はその3人目の女の子は知らない。最初に ── ですと紹介された名前が 少し酔ってきた頭の中のどこかに引っかかっている、だけだ。 だけどその彼女は、友達から聞いているのだろう、 僕のことを少しは ── または、“よく” ── 知っているらしい 何を知ってるんだか、という思いは拭えないが、大方想像はつくし、 そんなことより、今口にしているスピリッツがあまりに美味しいので 細かいことはどうでもよくなっていて、サプライズ・バースディ・パーティ について意見を求められているのを聞き流してしまって、困った顔をさせる。 barの店長はさして客も入っていないので、暇そうに、ちょっと憂鬱そうにしていて、 女の子の話に時々きれぎれの言葉を返し、灰皿を確認する。 3人の吸っているタバコの煙が、狭い店のさらに狭い天井へと立ち上って、 僕は2人の話半分に、白くもやのかかった景色を追いかける。 3人で話しているのに、ずっと カウンターの奥に綺麗に並べられた、 エメラルド・グリーンのグラスに向かって喋り続けている気になって それを取り戻すために 2人の顔を確かめてみたり、タバコの火を借りたり、携帯電話の表示を見たりする。 『でさぁ、』という区切りからまた話に耳を傾けて、適当な言葉や返事を選んだり、 しなくてもいい冷静な分析を ── そんな気分じゃないのに! ── 加えたりする。 ちょっと気になって脚を組み替えると、 とたんに両足のしびれが爆発して考えどころではなくなるけど、 じきに気にならなくなるだろう。 知らなかった女の子(もう少しは知ってる女の子)はもうすぐ帰ると言い出していて 僕もどうしたもんかね?と、タバコの煙に映る自分に言ってみる。 だけど煙はぐるぐる回って、『好きにすれば?』とだけ言って、壁のぐるぐる回る羽根に消えて行った。 仕方がないから、友達の女の子にもどうしたもんかね?と聞くと、やっぱり好きにすれば? と言いたそうだったけど、そうは言わずに、考えといてね、とだけ言って、その日のお酒は お開きになった。 何を考えとくんだっけ?そんなことを言っているうちにもう1人の女の子の名前も忘れちゃいそうだ。

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somebody to love

恋愛をしていくのは楽なことじゃない。 『恋愛』って言ったって人間関係の1つなんだけど 普通の関係なら『この人に好かれたい!』とか別に思わないことが多いから あんまり気づかないんだろうけど。 もてる人ってのはいるけど、 それと恋愛を上手くやっていくこととはあんまり関係ない気がしてきた。 って文章に起こしてみるとそうでもないかもしれない…とか思うけど でも、 例えばいろんな女の子に好きだって言われても、 自分が好きなことは上手くいかなかったりとか、 始終恋愛してるんだけど、あんまり長く続かなかったり、 後味悪く、または何も残らずに、終わっちゃうとか、 いろいろあるよね、 まぁそんだけ人がいるんだけどさ、 で、だいたいの人は多かれ少なかれ、 異性に好かれたい、って思って何かしら努力してるんだと思うけど (少なくとも意識してはいると思うんだけど) 街を歩いてるとぜーんぜんそんなじゃなくても 恋人と仲良く歩いてる人ってのはいっぱいいるわけで… (ん?百万遍周辺だけ?) なんかよくわかんないよな。 そんでもって自分だってなーんにも考えなくたって 普通に上手く行くときもあれば、 うー…って悩んじゃうときもあるわけだし、 もうなんか、恋愛相談って本当に成り立ってんのか? って思うくらいわからんね。 だってみんな違うもん。 誰がもててて、 誰がかっこよくても 俺は俺だもんなぁ… それ以上でも以下でもないよ。っていうかなれないし。 他の誰かには。

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