自らの声に酔う

やまもといちろうさんと湯浅誠さんの対談記事が面白かったので。


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今の日本は、保守化、右派の影響力が高まっている。その背景には、韓国、中国への感情悪化だけでなく、リベラル、左派の魅力のなさ、ストーリーのなさがある。今の日本のリベラルに、欠けているものは何か、どうすれば国民の心をつかむことができるのか。社会活動家として最前線で戦ってきた湯浅誠氏が、論客との対談を通じて、「真のリベラル」の姿を探る。3人目の今回は、「純粋なる保守主義者」であり、ネット上の最強の論客として知られる、やまもといちろう氏との異色対談。



読んだ人の持っている考え方によって感じることは色々あるだろうけれど、ネトウヨであれ反原発であれ、自らに不足している部分や不安を補償する形で、情熱を持って政治的な何かに取り組んでいる人は、自らはその意識が低くむしろ真面目にそれこそが正しいと信じて行動しているために、そこから抜け出すことはないというのが全体の主旨。まあそうかな。文中で「尊皇攘夷」が例としてあげられていたけど、そういうのって昔からあることだからねえ。「有権者の2%程度」というのも昔から大体そんなもんなんでしょう。

ネトウヨや反原発に対しては、人によってイデオロギーというか思いや考え方があると思うのでここでは特に何も述べないけれど、文中にあったこの表現に「ですよねー」と思ったのでした。



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結局「放射脳」の人もネトウヨも、基本的にはものごとを中立的に理解するリテラシーを欠いていたり、制御できるかもしれないリスクを過大に評価する人たちの集まりですよ。本当のマジョリティーというのはもっともっと穏便なもんです。



ですよねー。


熱心に活動している人たちが、選挙なり「閣議決定」なりの後に「何で俺らの声が届かないんだ」なんて言ってるのを見るたびに僕も思ってるんです。声が届いてないんじゃなくて、声が小さいんじゃないの?と。意見の正しさについては議論しませんが、結果として、「本当のマジョリティー」つまり周りの殆どの人は、その意見を正しいと思っていないか、積極的に支持する気が無いということであり、民主主義的な手続きに従ってその意見が否定されたと考えるのが正しいのではないのかなと思うのです。

「与党は国民の意見を無視した!」「もはや民主主義ではなくファシズムである!」みたいなのも、共産党を中心に良く見掛ける煽りなんですけど、民主主義であればこそ、「本当のマジョリティー」の決定が支持されているんじゃないんですかね。仮に議員を1人送り込めるかどうかの政治団体の意見が国の方針として採用されたとしたら、その方がよっぽど反民主主義的だと思うんですよ。国の方針が合理的であるかどうかについては、もちろん議論の余地はかなりあると思っていますけれど、そのことと、民主主義的かどうかについてはあまり関係が無いと思うのです。



「何で俺らの声が届かないんだ」って感想を持ってしまうのは、自分の声に酔ってるんだろうなーと思っています。まあ同じ構造は色んなところにあって、「反中・反韓」「反原発」「反食品添加物」「現代医療否定」「クラブの風営法問題」などの社会問題から、「部長の方針が気にくわない」「町内会のゴミ出しルールが合理的じゃない」などに至るまで、僕自身の考えも含めてそういうことはよくあることなんだとは思うのですけど、社会のことを本当に考えるなら、社会のことをもっと現実的に客観的に見ないとダメだよねとは思います。「本当に正しい」のが何かを考えるのは大事ですが、現在多くの人が「それでいい」と思って選択した結果が現実なんだろうなと。

以前、「社会のことを考える」という体で共産党支持のアンケートを作っていた若者を批判したときにも、「俺らは頑張ってるけどお前は何にもしてないだろ」的なテンプレdisがいっぱい飛んできたんですけど、それも同じ。自分の声に酔ってるんでしょうねえ。意見を持ち、問題を考え、行動をしているのは自分たちだけじゃないんですけどね。「俺ら」と同じ方法で頑張ってないやつは「頑張ってない」とみなすってのは、結構怖いと思うんですよね。考え方として。社会のことを考えるときに大事なのは多様性だと僕は思っているんですけど、そういう僕の考えとは違うみたいです。もう少し自分の意見ではなく「本当のマジョリティー」に思いを馳せてみても良いと思うんですが……



基本的にみんな、一生懸命考えて一生懸命運動していると思うので、それについては僕もこうは思うのですけどね……


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ただ彼らが悪意を持ってやっているかというとそうではなくて、善の善たる動機です。ネトウヨも「放射脳」も、真剣に自分や家族や社会のことを考えて行動している。ピュアに、自分の得た情報は正しくて、活動が正義だと思っている。だからそこは、かわいそうというか、もったいない….。