【ドル円】2週間で一気に最大7円高の巻(執筆時点で133円92銭)

なぜだか円高への揺り戻しが起きてます






アメリカの景気後退観測から一時132円台へ

午後5時のドル/円は、前日ニューヨーク市場午後5時時点に比べてドル安/円高の132円後半。米国の景気減速懸念や利上げ観測の後退を背景に、1カ月半ぶり安値となる132円台へ下落した。

東京マーケット・サマリー(29日) | ロイター

米国で前日発表された第2・四半期国内総生産(GDP)が2四半期連続でマイナスとなったことなどを受け、利上げ期待の後退とともに米10年債利回りは2.65%台と3カ月半ぶり水準へ低下。金利低下がドルを広範に押し下げ、ドルは前日の高値136円半ばから、きょう朝方には134円前半へ下落していた。

米金利の急速な低下により、日米金利差も大きく縮小。10年債の利回り格差は現在、4月以来の水準へ縮小した。当時のドルは125円台で、「金利差との相関が再び高まるようなら、理論上ドルは130円台を大きく割り込んでもおかしくない」(外銀)という。

午後3時のドルは急落し132円台、1カ月半ぶり安値 米利上げ観測後退で | ロイター


以前まだ140円を伺うような円安水準だった頃に「年内127円まで円高が進む」とか言ってたアナリストの人がいて、「どうせ逆張りでしょ」「そんな急に潮目かわらんでしょ」と思ってたんですけど、結果的に大きく動くことになって驚いています。強固に見えた円安基調がこんな不安定な状態の上に乗ったものだったとは……2週間でこんなに変わるのであれば確かに状況次第では130円を割り込むことだって(起きるかどうかは別として)あり得ますね。


金利差だけが相場上下の要因ではないという話

昨今の円安を説明するとき、日米の金利差の話をすることが多いです。僕自身がこの辺のことを考え始めたのは、多分この記事を書いた頃。単純に為替相場がなぜ動くのか不思議だったんですよね。


【読書感想文】 安達誠司 / 円高の正体



この頃は1ドルが100円を大きく割り込んでいた(つまり超円高だった)頃で、その理由として「資金はインフレ率の低い方へ動いていくので円が買われて円高になる」という説明だったのですけど、今思うとそれだけだと昨今の円安は説明出来ません。海外のインフレ率に比べると日本のそれは極めて引くので、もっと円高にならないとおかしい。これに無理やり素人考えをこじつけると、政策金利が上がっている(金融引き締め)と言うことは「インフレ率を下げる意向が中央銀行にある」ということ、ゼロ金利を続ける(金融緩和)ということは「インフレ率上昇を許容する意向が中央銀行にある」ということだと市場が判断して、その「未来のインフレ率」を根拠に前者に資金が流れる……ということだったんじゃないかと。

ただまあ実際に起きたことは「政策金利上昇 → 景気後退 → 利上げ余地狭まる → 円安見込み薄まる」という流れで説明されていて、この素人考えが合ってるかどうかはよくわかりません。合ってた所で明日の相場もわかりませんし。ただ相場全体に関して言えば、黒田総裁のこの指摘がすごく納得性が高かったです。


「今の円安というのは、実はドルの独歩高です。ユーロやポンドも大きくドルに対して下落しています。ご承知のように英国は5回金利を既に上げています。それからユーロも今月から金利を上げるということで、そういった通貨も同じぐらい下落しています。確かに円の対ドル下落のきっかけというか、マーケットの考え方には、日米金利格差があったと思いますが、実際のところ、世界的にドルの独歩高で、皆、為替が安くなっています。

(中略)

本当に金利だけで円安を止めようという話であれば、大幅な金利引き上げになって、経済に大きなダメージになると思います。(中略)金利格差が拡大していない英国とか韓国ですら大きく下落しており、おっしゃったような政策が合理的にあり得るとは考えていません」

円安阻止へ日銀は利上げするべきなのか?(Yahoo!ニュース オリジナル THE PAGE)


金利差が関係ないと言っているのではなくて、今現在の市況を見てみるとアメリカ以外の国が金利差で自国通貨の通貨安を解消出来ていないのに日本で出来るといいきれるのか?ということ。そう言われると確かに。景気悪くなって円安のままだったらそれこそ最悪ですもんね。

まあ、本当に日銀と黒田総裁に求められていることは、金利を上げようとしないことの転換というよりはむしろ、まったくやり方を変えずまったく新しいことをしようとしない姿勢を変えることだと思うんですけどね。今やってることに自信があるのかどうか知らんけど、良くない状況にあることを認めてるんだったらそろそろなんかして欲しいんですよね。円安だいぶ長いしそろそろ「仕方ないじゃん」で済ませられないレベルだと思うんですけどねえ。黒田さん、なんか他に言うことないの?



ヨーロッパの情勢は

ユーロ円


ポンド円





対ドルに比べると数字の振れ幅は大きいですが、中期的な視点で見てみるとそんなに大きくは動いていないというか。ヨーロッパはヨーロッパでアメリカとはまた違う様々な影響があるので、また値動きのルールが違うんでしょうね。戦争の影響もありインフレが酷いらしくて先日EUも利上げを発表しましたけど、ドイツやフランスはまだしも対外債務が多いイタリアとかスペインとかギリシャとか、金利が上がったら一発で死ぬ(国債の利子が増えるから)わけで、そうなってくるとみんな道連れになりかねないわけで。

第二次世界大戦の前段である世界恐慌の前みたいな、なんか変な空気感があるのがすごい気持ち悪いです。これでイタリアとか狂ってロシアと手を結んで天然ガスを調達してアメリカが制裁とかになると、あっという間にNATO分裂からのロシア戦争からの世界戦争になっちゃいそうなんですけど大丈夫なんかな。



もしかすると、将来教科書に載るような状況の前に僕らは今いるのかも知れませんね。あんまり大ごとになっては欲しくないですけどねえ。