ウクライナに侵攻したロシアに対するスポーツ界の反応

ロシアがウクライナに侵攻してから早1週間。戦況としては依然としてロシア有利であるのは変わらないようですが、世界の情勢は一部の友好国(主に中国)を除いてほぼ全面的にロシアに批判的です。「国際銀行間通信協会(SWIFT)」からの排除を始めとした経済制裁も次々に発表されているわけですが、スポーツ界でも早くから様々な批判的なリアクションがありました






サッカー

FIFA(国際サッカー連盟)とUEFA(欧州サッカー連盟)は共同でロシアのクラブと代表チームを全大会で出場停止処分にすると発表した。公式サイトで伝えている。

 FIFAはロシアのウクライナ侵略を受け27日に声明を発表。ロシアを強く批判し、初期措置として「ロシアの領土で国際試合は実施されず、ホームマッチは中立の地で無観客で行われる」、「ロシアという名前ではなく、ロシアサッカー連合(RFU)という名前で大会に参加する」、「ロシアサッカー連合のチームが参加する試合ではロシアの国旗や国歌は使用されない」と伝え、追加の措置を検討していることを発表していた。

 FIFAとUEFAは共同で声明を発表。クラブチーム、代表チームの大会参加を停止すると改めて発表し、ウクライナへの連帯を明らかにした。

FIFAとUEFAが共同声明発表…クラブ・代表問わずロシアチームの全大会出場停止 | サッカーキング



現在世界各国でW杯の予選が進行中ですが、代替出場も認められない「出場停止処分」が下ったことでロシアのW杯出場は絶望的になりました。



F1

FIAは3月1日、世界モータースポーツ評議会の臨時会合を実施し、ウクライナへの軍事侵攻を行っているロシアへの対応を検討した結果、ウクライナ自動車連盟の要請および国際オリンピック委員会(IOC)の勧告に反し、ロシアおよび侵攻拠点のひとつとなったベラルーシ出身のドライバーたちの国際モータースポーツイベントへの参加を認めることを決定した。

(中略)

これによりハースF1チームのニキータ・マゼピンの今シーズン参戦は可能になった。ただし、ハースはタイトルパートナーを務めるロシア企業ウラルカリおよび同社と強いつながりを持つマゼピンとの契約について再考すると述べており、マゼピンの将来は依然として不透明だ。

(中略)

 また、FIAとF1は2月25日の段階で、今年のロシアGPは「現在の状況では開催することができない」との発表を行っていたが、3月1日の声明ではより明確に「中止」という言葉が使われた。

「F1コマーシャルライツホルダーの提案により、不可抗力という理由で、2022年F1ロシアGPを中止する」と声明には記されている。

FIA、ロシア人ドライバーの「中立的立場」での国際競技出場を認める。ロシアGPは正式に中止に | F1 | autosport web


多くのF1ドライバーがロシアGPが開催されても参加しないことを表明していたので物理的に不可能になっていましたが、FIAの声明で正式に中止が決定したようです。



テニス

テニス男子で世界ランキング1位の座を獲得したダニル・メドベージェフ(26=ロシア)が、4大大会をはじめ主要な国際大会から追放される見通しとなった。

(中略)

英スポーツ専門ラジオ局「トークスポーツ」は「国際テニス連盟(ITF)がロシアとベラルーシを追放することを求められており、メドベージェフは競技を禁止される可能性がある」と報道。IOCの方針に従ってITFがメドベージェフを筆頭にロシア人選手の追放を検討しているという。

テニス世界1位のメドベージェフを4大大会など主要大会から追放へ ロシア外し鮮明 | 東スポのテニスに関するニュースを掲載


先日ワクチンを拒絶した上虚偽の申請をしたノバク・ジョコビッチが全豪OPから排除されたばかりですが、それによるジョコビッチのランキングダウンでようやく手にした世界1位を祖国が起こした戦争で剥奪されてしまうのはなんとも不運としかいいようがありません。サッカーチームなどロシアの公的な資本が入っている組織の活動が制限されるのはわかりますが、ほぼほぼ個人でしかない、そしてだいたいに於いて祖国にいないテニス選手にその責任を負わせるのが妥当なのか僕にはよくわかりません。

まあ例外を言うとキリがないということなのかも知れませんが……



フィギュアスケート

国際スケート連盟(ISU)は1日、ロシアおよびベラルーシの選手と役員について、世界選手権を含む国際大会への招待や参加を無期限で認めないと発表した。IOCの除外勧告を受けたもので、ウクライナとの連帯を強調した。

フィギュア女子ワリエワなどロシア勢は無期限出場禁止― スポニチ Sponichi Annex スポーツ


こちらもサッカーと同じで選手個人に責任を負わせるのが妥当なのかよくわかりません。ただフィギュアスケートに限って言うとある意味で「国策」的な強化が行われてきた分野でもあり、ロシアという国が色濃く出ている競技でもあるので、排除されてしまうのは致し方ない面もあるかなとは思います。

で、この排除がどういう意味を持つかというと、結構小さくないらしく。


いずれにせよロシア勢は最高峰の舞台から姿を消すこととなったが、痛手はこれだけでは済まない。世界選手権は翌年の大会における自国の「枠取り」という大事なミッションがあるからだ。今回ロシアは出場者ゼロのため、規定通りなら来年は各種目(男女シングル、ペア、アイスダンス)とも「1枠」となる。

 特に女子シングルは北京五輪金メダルのアンナ・シェルバコワ、銀メダルのアレクサンドラ・トルソワ、4位のカミラ・ワリエワの〝最強トリオ〟をはじめ、来年シニアデビューする有望株がめじろ押し。除外措置が解除されていたとしても、たった1人しか出られないことになる。昨年の世界選手権では出場枠は「3」だった。

 ロシアのフィギュア界にとってもウクライナ侵攻の〝代償〟は計り知れないものとなりそうだ。

最強ロシア追放に重鎮タラソワ氏猛反発 来年の世界フィギュア枠は3から「1」に激減 | 東スポのフィギュアに関するニュースを掲載


おおっと、2022-2023シーズンのロシアの出場枠が「1」に減るわけね。それは大変だ……これがもし北京オリンピック前の今シーズンの話だったらものすごい影響があったけれど、オリンピックも終わったところなのでタラソワが怒るほどは影響ないんじゃないのという気もします。知らんけど。



その他のスポーツ

カーリングやスピードスケート

国際オリンピック委員会(IOC)はロシアとベラルーシの選手や役員を国際大会から除外する方針を国際競技連盟(IF)に勧告。これによって各スポーツ団体は続々とロシア選手の参加拒否を表明し、1日には国際スケート連盟(ISU)がフランス・モンペリエで開催するフィギュアスケート世界選手権(23日開幕)にロシア選手の出場を認めない決定を下した。

露カーリング連盟トップが怒りの大暴論「ロシア追放は“ドーピング”だ」 | 東スポのスポーツ総合に関するニュースを掲載

フィギュアスケートだけでなく、カーリングやスピードスケートも排除の対象のようです。


ラグビー

《ロシア23年ラグビーW杯出場可能性消滅》国際統括団体ワールドラグビー(WR)は2月28日、ロシア協会を無期限資格停止とし、ロシアとベラルーシの代表およびクラブチームは国際試合などの対外活動を禁止すると発表した。19年日本大会などW杯に過去2度出場したロシア代表は23年フランス大会の予選を兼ねた欧州選手権から失格となり2大会連続W杯出場の可能性が消滅した。

フィギュア女子ワリエワなどロシア勢は無期限出場禁止― スポニチ Sponichi Annex スポーツ


サッカーなどと同様にラグビーも対外活動禁止になったので、ラグビーロシア代表はW杯出場の可能性が消滅しました。19年も出てたんですけどね。仕方ないね。


バドミントン

世界バドミントン連盟(BWF)は1日、ロシアのウクライナ侵攻を受け、来週からロシアとベラルーシの選手の国際大会への出場を禁止すると公式ホームページで発表した。

世界バドミントン連盟 ロシア&ベラルーシ選手の国際大会出場禁止を発表「IOC呼びかけに応じた」― スポニチ Sponichi Annex スポーツ


バドミントンも出場禁止。


バレーボール

国際バレーボール連盟(FIVB)は1日、男子世界選手権(8月26日~9月11日)について、当初の開催国だったロシアでは行わないと発表した。日本バレーボール協会(JVA)によると、FIVB理事会が「先月末に始まったロシアによるウクライナ侵攻により、ロシアでの大会準備および開催が不可能である」という結論を下したため。

バレー男子世界選手権 開催地をロシアから変更、FIVB発表― スポニチ Sponichi Annex スポーツ


バレーボールは世界選手権の開催国が変更に。


ボクシング

世界ボクシング協会(WBA)は2月28日(3月1日)、理事会を開催し、ウクライナへのロシアの軍事侵攻の停止を支持し、ロシアとベラルーシのボクサーを次回ランキングから除外することをなどを全会一致で承認した。ただし、この措置は一時的なものとし、月ごとに見直されるとし、現在の世界王者、地域王者の地位は維持されるとした。

WBA、ロシア&ベラルーシ選手をランキングから除外など決定 カネロVSビボル開催にも影響か― スポニチ Sponichi Annex 格闘技


ボクシングは王位は維持されるもののランキングからは除外。



個人的な感想

途中でも書いた通り、一国家の政治的な活動の責任を1人のスポーツ選手に負わせることが正しいことなのかどうか僕にはよくわかりません。国を代表する代表チームや多額の強化費が国から拠出されているスポーツであれば国との関係を問題視するのは理解出来ますが、国から離れて1人で活動しているスポーツ選手に対して国籍がロシアであるという理由で排除するのは本当に正しいことなのか?ロシアの政治活動から距離を取っていると見なせる選手がもしいたとして、その選手を排除することが誰かのためになるのか?

ロシアの国旗を付けたロシア人の選手が競技で活躍しメディアに載ることが、被害を受けたウクライナの人々にとって苦痛であるということはもちろん理解出来ます。戦争を肯定するような発言をする選手がいればその選手は当然排除されるべきでしょう。でももし仮に選手が「祖国の戦争に反対する」と表明した場合にそれは許容されるのかどうか?


スポーツ界のほとんど全ての処分に対して賛同しますが、しかし国籍だけを排除の理由とし、選手個々の状況を見ない処分に対しては僕は疑問に感じます。それでいいのか?ロシア人というだけで悪なのか?ヒステリーを起こす心情を理解しつつ、ウクライナに侵攻するロシア軍の向こうにいる「ロシア国民」についても想像する、その想像力を放棄してはいけないのではないでしょうか。

僕はそう思います。