最近よく見掛ける記事の例
韓国紙が社説で、文在寅(ムン・ジェイン)大統領自慢の「K防疫」批判に乗り出しました。コロナの感染者が急激に増え、入院できずに自宅で死亡する患者が相次いでいるからです。
「K防疫のまやかし」から韓国人は目覚めるか 幼いナショナリズムが生む国家の蹉跌 | デイリー新潮
保守系紙、朝鮮日報の社説「文は『1万人に備え』と言うが、感染者が5000人を超え『医療崩壊』の危機に」(12月6日、韓国語版)から引用します。
・専門家は政府のワクチン政策失敗が今の危機状況を作った可能性を提議している。我が国と日本はワクチン接種完了率で大きな差はないが、ファイザーとモデルナ中心に接種した日本は1日の新規陽性者は100人前後に抑制されている。
・半面、我々が初期に主に接種したアストラゼネカ(AZ)製ワクチンは接種して10週以降は感染予防の効果が急速に落ちることが確認されている。初期のワクチン確保競争に出遅れたために陽性者数が急増した可能性があるということだ。
・抜け殻だけ残ったK防疫の実態が明らかになっているというのに、文大統領は機会があれば「K防疫をはじめとする大韓民国の位相がたいそう高まった」と自画自賛を繰り返す。
・そして大統領が大声を出した直後に防疫が苦境に陥ることが繰り返されてきた。口では自信があると言いながら、この状況になるまで何をしていたのか。
要約:あれだけ「K防疫」つって誇ってたけどこの有様やんけ。「K防疫」って失敗だったんちゃうの?
「K防疫」について1行でまとめると
つまり、「K防疫システム」とは、SMSを通じて得られた個人情報を行政機関が積極的に公開し、公開された情報を元に市民自らが積極的な検査を受けられる体制を確立、疫学調査管理をデジタル化し効率化することによって感染拡大の防止を図るもの
成功事例としての「K防疫システム」―アフターコロナを見据えた成長戦略 | アジア事業グループ-コロナ対応から考えるアジアと世界 | 笹川平和財団 – THE SASAKAWA PEACE FOUNDATION
「笹川平和財団」の解説記事が一番まとまってて解りやすいですね。
記事が書かれたのが今年4月なのでタイトルが「成功事例としての「K防疫システム」」となっているのはご愛敬としても、その優劣はともかくとして基本的な姿勢はそれです。「「K防疫システム」とは」段落から重要そうなセンテンスをいくつか引用します。
文在寅政府がCOVID-19政策の基本原則として打ち出した「Test, Trace, Treat」のうち、特に注目すべきは「Test」と「Trace」である。
成功事例としての「K防疫システム」―アフターコロナを見据えた成長戦略 | アジア事業グループ-コロナ対応から考えるアジアと世界 | 笹川平和財団 – THE SASAKAWA PEACE FOUNDATION
次に「Trace」、つまり防疫政策であるが、文在寅政府はIoT、AI技術を利用した疫学調査支援システム(COVID-19 Smart Managing System, SMS)を導入することによって疫学調査を自動化(スマート化)した。
成功事例としての「K防疫システム」―アフターコロナを見据えた成長戦略 | アジア事業グループ-コロナ対応から考えるアジアと世界 | 笹川平和財団 – THE SASAKAWA PEACE FOUNDATION
(中略)
SMSは3月26日から導入され、これによりそれまで疫学調査官が公文書を作成し関係各所へ通達、各部署から電話などを通じて感染者の情報(陽性確定診断を受けた患者のクレジットカード利用履歴、防犯カメラ映像、携帯電話位置情報)を収集、分析していたアナログ的な追跡過程が電算化、自動化された5。
文在寅政府のCOVID-19政策である「K防疫システム」において特筆すべきは、SMSによって入手した個人情報(感染者の行動履歴)を、政府が「個人が特定されない範囲で」一般公開し、一般市民がそれらの情報を行政機関のみならず民間のCOVID-19関連情報アプリを通じて入手できるということにある。「K防疫システム」においては、市民が公開された情報を把握し感染防止へと活用することが期待されている。
成功事例としての「K防疫システム」―アフターコロナを見据えた成長戦略 | アジア事業グループ-コロナ対応から考えるアジアと世界 | 笹川平和財団 – THE SASAKAWA PEACE FOUNDATION
「K防疫」の肝は効率的な情報収集と公開
最後に引用したセンテンスに書かれているとおり、「K防疫」は市民の活動の参考になる情報を効率的に収集・公開するためのシステムであり、それそのものが新型コロナウイルスの感染拡大を直接防ぐものでは無さそうです。感染拡大を防止するためには収集された情報をどうやって活かしていくかというのが重要で、韓国で感染が拡大しているのは「K防疫」がダメだったと言うよりは「K防疫」を上手く使いこなせなかったということなのではないかと感じます。せっかくAIを使って収集・分析をスマート化しているわけですから、その後の政策にもAIを取り入れてロックダウンおよびその解除などを自動的出来るようにまでしたら、今みたいに「全面解除じゃおらあああ」→「新規感染数増えた」みたいな悲しい展開にはならなかったんじゃないかと……良き道具も使う人間次第ってことですかね。まあそう考えると「K防疫」が良くても悪くても文在寅大統領が批判されるのは変わらんわけですが、少なくとも「K防疫」は良いシステムだよねとは思います。結果見てそこ批判したら技術者がかわいそう。
「K防疫」をアップデートしつつ現場のフォローをしてなんとか立て直しを
どの記事を読んでも最終的には、- アストラゼネカ製のワクチンの効果が切れた
- 若者の接種が進んでなくて感染拡大が止まらない
- 病床確保が出来ていないなどの理由で医療崩壊
- ロックダウン時の補償が不十分で個人事業者が厳しい
って感じで結構大変そうなんですが、こういう局面でも「K防疫」にはまだまだ出来ることがあるんじゃないのかなという気はします。要するにどの地域でどんなレベルの感染が起きてるかを素早く分析できるのが「K防疫」なわけですから、「K防疫」の分析結果を上の4つに対する政策に反映させていけばより効率的な対策が打てるんじゃないの?と。「K防疫」を作れた技術チームがいるんだからその先も行けるんじゃないの?
使う人間が無能なせいで技術の価値が貶められるのはエンジニアのはしくれとして納得できません。なんとか、立て直してもらいたいものです。頑張れ。