より負担の大きい人たち
最も負担が掛かっているのは医療従事者の皆さん。ただでさえ負担が大きい職業であるのに、緊急事態が常に続いている現状は本当に大きな負担になっていると思います。特に感染者が増えている東京都や大阪府では限界に近付いているとも言われていて、長期化を念頭に置いた組織再編も考えなくてはならないかも知れません。イタリアでは医学生の医師資格試験を免除して現場に派遣しました。日本で同じことが法律的に可能かどうかわかりませんが、医療従事者の負担という点で他人事ではないですよね。仕事上ストレスを多く抱えていそうなのは薬局などの販売員の方々。マスクやトイレットペーパーの品切れは彼らの責任ではないのに、不安に駆られる多くの人たちから叱責されるのは(心情は理解出来てしまうけれど)本当に理不尽です。在庫状況や販売方法についてクレームを入れる人も後を絶たず、店頭の注意書きは日に日に長くなるばかり。文句を言いたくなる気持ちは痛いほどわかるけれど、あなただけでなくみんな買えないんですよ。その不安な気持ちを販売員にぶつけるのは間違っています。彼らはあなたのカウンセラーではないんですから。
商売の面で言えば、飲食店、理美容業界、トレーニングジム、マッサージ、歯科医など、近い距離での接触を伴う業種の人たちは存続の危機すらあります。3月上旬に予約していた歯科、大丈夫かなという思いはありつつ先日行ってきたところ、待合室は閑散。新型コロナウイルス対策として待合室が混み合わないように予約を制限しているそうで、「予約が取りづらくなるかも知れません」と張り紙に書かれていましたが、次の予約を取ろうとして提案されたのは4日後でした。マジか。普段は予約全く取れない人気の歯科が。さすがに怖いので、次の予約は5月下旬にしてもらいましたが。予約で言えばあと何週間かしたら髪を切ることになるんですが、ヘアカットも完全に濃厚接触ですよねえ。どうしたもんか。
国民からはっきりは視認できませんが、政府の人たち、官公庁で毎日対応に追われている多くの官僚・職員の方々、地方自治体で刻々と変わる状況に合わせて判断を迫られている担当者の方々、そうした人たちも大きな負担を強いられている人たちでしょう。出てくる方策が的外れに見えても、的に当たる方策を練っていないわけではないですし、あくまで「リソースが限られている中で、出来ることからやる」ということだと思うのです。公務員というのはとかく叩かれがちな存在ではあるのですが、我々の生活のために寝る間を惜しんで働いてくれていることを忘れてはいけない。彼らだって人間ですから新型コロナウイルスに感染する、でも我々のために毎日出勤し検討を重ねてくれているんです。その意味がわからない人はいないでしょう。
負担を少しでも共有してあげられるような社会であってほしい
ものが無くなったり通勤が不安だったり子供に不便な生活を強いていたり、今の日本でストレスを感じていない人はいないと思います。感染した場合の周囲への影響を考えると、「感染したら」ということ自体が大きな不安になりますし、うつを発症する人が増えているのも理解出来ます。でもこういうときに誰か「文句を言ってもいい人」に文句を集中させるのは、間違っていると思うのです。ついクレームを付けたくなる自分を諫めつつ、全体で少しずつ負担を軽減してあげられるような、そんな社会だと良いと思いませんか。特別なことは必要なくて、不要不急な外出を控えたり、薬局で理性的に行動したりするだけでその一端を担えます。大きな災害が起きるたびに不安に駆られて声が大きくなる人を、街角やネットで見掛けてきました。特に2011年の東日本大震災の時は酷かった。僕自身も主語が大きくなったり主張が強くなったりしたこともあると思います。でもね、それで何かが変わったりしないんですよ。誰かのストレスを無駄に増やしているだけで、自分のストレスが減るわけでもない。1人が抱えるには大きすぎるストレスを、彼・彼女よりも少し余裕のある人たちが少しずつ負担してあげたらきっと助けになると思うんですよね。
事態の長期化は決定的で誰しもが大変で余裕はないとは思います。でもこうした中でもそんなことを考えられるような、そんな社会であったら良いなとも思っています。共生する意味ってそういうことだと思うんですよね。