【レビュー】自分はこんなに箱根駅伝が好きだったっけ?と錯覚したNumber992号

Number992号は箱根駅伝特集号。自分は関東在住でないということもあってそれほど熱心な箱根駅伝ファンということではなく、近年は家にテレビもなければテレビを見る習慣もないので、すっかり優勝大学をニュース記事で見かけるぐらいしか接点を持っていなかったのだけど、特集をすべて読んだあと自分が箱根駅伝に思い入れがあったことを発見した。そんな思い出全く覚えていなかったんだけど、そうだ、昔は……恐らく2000年頃までは毎年正月2日3日といえば、今のテレビでずっと箱根駅伝が流れていたんだった。



僕の記憶に刻まれた「柏原竜二」という名前。

社会人となってからはテレビをあまり見なくなって、箱根駅伝も疎遠になった……と思い込んでいたのだけど、もうひとつ思い出した、僕は「柏原竜二」というランナーが大好きだった。一般的には「2代目山の神」として知られていて、東洋大学の選手として箱根駅伝には4年連続出場、そして4年連続で山上りの5区を走って4年連続区間賞(区間1位)、うち区間新記録3回。ただ走るだけでもきつい箱根の山を、鍛え上げられた多くのランナーを圧倒的に凌駕するスピードで駆け上がる姿は本当に格好良かった。人間ってすげえなって思ったもん。

大学卒業後は怪我がちだったこともあってランナーとしては2017年に28歳で引退し、今は「柏原竜二さん」になっているけれど、それでもやっぱりなー。あのときの衝撃は変わらないし、可能なら今でも見返してみたい。1年の時の8人抜き、2年の時の6人抜きもすごいけど、4年の時の首位でたすきを受けてからの超絶独走もすごい。



そんな柏原さん始め3人の山の神が集まった鼎談があります

特集冒頭がそれ。3人の山の神つまり、元順天堂大学の今井正人選手、元東洋大学の柏原竜二さん、元青山学院大学の神野大地選手。3人は年代が離れているので箱根で直接対決したことは無いけれど、他大学のランナーを5区で圧倒したという意味では共通していて、その3人の鼎談は読み応えがあります。同じ福島県出身の今井選手に憧れて箱根の山を登るために東洋大学に進学した柏原さん、距離の変更があって頻繁に区間新記録が出る中、距離が近くなった今井さんの記録を意識していた神野選手。同じコースを走ったという思いは、年代が被っていなくても共通した何かを残すんだなあと思いました。



箱根駅伝からマラソンへ

かつては「大学の箱根駅伝偏重がマラソン選手の育成を阻害している」なんていわれた時代もありました。箱根駅伝は長くても1区24kmぐらいなので、そこに合わせたトレーニングをするあまりマラソンのトレーニングが出来ない的な。でも今やマラソンのトップランナーは大学駅伝出身ばかり。先日行われたMGCで優勝してオリンピック出場を決めた中村匠吾選手は駒澤大学出身、服部勇馬選手は東洋大学出身。日本最高記録保持者で3位に入って3人目の代表に一番近いところにいる大迫傑選手は早稲田大学出身。

スピードが重要になっているからかもしれないし、トレーニング方法が確立されたからかも知れないけれど、ともあれ、今や「大学駅伝ではマラソンランナーを育成できない」なんていわなくなりました。もちろんまだまだ世界との差は大きいのだけれど、一時の圧倒的な差に比べれば少しずつ近付いてはいるんじゃないかと個人的には思っています。それも傑出した個の力ではなくて、全体的に底上げされているイメージ。設楽悠太選手が日本最高を打ち立て、大迫選手がそれを更新し、MGCに優勝したのはその2人ではなく中村選手と服部選手。すごい。


来年の箱根駅伝までもう2週間を切りました。今回はどんな戦いになるんだろうなあ。ランナーの皆さん、インフルエンザにだけは気をつけて。。