a word
ある、あきれたというか、……な、一言。 -———————————————————— 高校1年の時、僕はある女の子に好かれていた。 僕には彼女はいなかったし、悪い気はしなかったが、 でも直接告白されたわけでもなく、 とりたてて付き合いたかったわけでもなく、 むしろ、中学の時からずっと好きだった子の方が気になっていたから、 結局、そのまま、仲がいいだけ、だった。 クラスに1人、その女の子のことを好きだった男がいた(本当はもっといたかも知れないが俺は知らない) ぼくのほうはそんなかんじだったから、彼女が誰と付き合おうが別にどうでも良かったわけだが、 その男の方は(というよりもむしろクラスの人々は)そうでもなかったらしい。 クラス替えをして2年になって、その女の子とも男とも違うクラスになって、 ちょうど仮装(学祭)のころになってようやく、その2人が付き合っているという話が耳に届いた。 (学祭はプライドを掛けたクラス全員による共同作業であり、その盛り上がりの中くっつく男女は多い。 当然その最中にある1学期中間テストは平均点が下がる(笑)→秀才だってよほど人嫌いな変人じゃない限り、 そういう行事には積極的に関わるものだ。中途半端な奴ほど避けて塾に行ったりする) まぁ、好かれていた女の子がいなくなったから寂しいとも思ったが、それ以上には別に思わず、 たまに会えば普通に挨拶していた。どうでもよかったし、他に好きな子もいたからだ。 1年のそのクラスは、 春、夏、秋、冬、そしてクラスが変わる春、と、節目にクラスのほとんどが参加して 1人の家の別棟の部屋で飲み会をする、 そんな変わったクラスだった(註:高校生です(笑)) 2年生になってもそれは続いていて、確か、夏と、忘年会・新年会に飲み会をしていた。 つきあったという話を聞いて半年以上たった、忘年会で、彼は一言、 『いっぺいくん、ごめんな』 と、いったのだった。 別れたのだ。 場はちょうど盛り上がっていくところだったので、他に聞いてる人はいなかったが、 別に何も思うことがなかった僕は逆に言葉に詰まり、なんて言っていいかわからなかった。 もともとは、口数の少なく、無表情気味な僕が悪いのだけど、 そんなことを思われてるとは思わなかったし、別れてるのを知っている上で大仰に言うのも変だし、 かといって説明するのもできないし(その場にはその女の子もいた) そして、なにより、それを言った彼が、すごく情けなくて、なんかもう…やるせなかった。 数年前、その女の子が大阪に就職して(今は東京に転勤になったけど)、 1回飲みに行った。 いまは、かなり年上の人と付き合っているらしく、その愚痴なんかも聞いていた。 もう時効かな、とは思ったけど、 やはり言えなかった。どう考えても、彼を悪く言うだけだからだ。 特に深い意味もなく、衝撃もない、のに、 覚えてる一言がある。 高校のことを思い出すとき、 ごくたまに、だけど鮮明に、あの一言を、なぜか、思い出してしまう。