基本的な情報
- チャンピオン・フルトンの方が身長が高いし手の長さ(リード)も8cm長い
- フルトンの得意技はクリンチ
- フルトンの勝ち方はポイントを奪ってクリンチでしのいで判定で勝つ
僕が見た感じの印象
- 1Rから4Rまでは井上が圧倒してフルトンにボクシングをさせない展開。
- 5Rぐらいからフルトンが状況になれて徐々に力を出し始めて7Rではクリーンヒットもあり互角に持ち込んだ感じ。
- しかし8Rに井上の見事なコンビネーションがヒットして勝負あり
井上尚弥選手からの印象
4ラウンドからは、わざとペースダウンした。 「若干ブレーキをかけつつ前に行った。ぐいぐい行っていたら(ステップワークを使われ)フルトンのペースになる」 ポイントを取られていると焦るフルトンは、その“誘い”に乗って前へ出始めた。 真吾トレーナーは、5ラウンドを終えたインターバルで、戦前に用意していた作戦とは、正反対の指示を出した。 「ポイントを取っていたことはわかった。じゃあフルトンのホールディング(クリンチ)につきあえばいい。ポイントを取られている展開でのホールディングは取り返せなくなるのが怖いが、あえてくっついていけばいい
新チャンプ井上尚弥が明かす劇的TKO秘話…「フルトンには最後まで“シカト”された」 – 本格スポーツ議論ニュースサイト「RONSPO」
- 1Rから3Rまでは圧倒
- 4Rからペースダウンしてわざとフルトンを前に出させた。7Rのフルトン攻勢は撒いた餌に乗ってきただけ
- 十分に餌に食いついたのを確認して8Rで仕留める
井上尚弥……なんておそろしい子!
飯田覚士さんの解説
色んな解説を読みましたが、NumberWebに投稿された飯田覚士さんの解説が一番技術的・戦略的にわかりやすくかつ納得度が高くて素晴らしかったです。「フルトン選手がどうしたかっていうと、これまでの試合と比べて足のスタンスを明らかに広げてきた。その前足で尚弥選手の踏み込みを邪魔して、懐の深さをつくっていたんです。だから同じオーソドックス(右構え)なのに、前足がぶつかるシーンがよくありましたよね。尚弥選手が出す左足の前に、自分の左足を置くってことは体を横向きにしなきゃいけないため右ストレートを打つにしても、腰が入らない。それでも踏み込みを止める、邪魔するっていうことを優先した。その目論見はまずまずうまくいったとは思います。僕もこれまでボクシングを見てきたなかで足の長いリーチをこのように使うのかって、新たな発見ではありましたね」
「かなりショックだったのでは…」井上尚弥はフルトンの“奇策”をどう打ち破った? 元世界王者・飯田覚士が分析「一番驚いたのは本人のはず」 – ボクシング – Number Web – ナンバー
「7ラウンドに入ってからいつものスタンスに戻してきたんです。彼も踏み込んでのパンチを打ち込んでいくためにスタンスを狭めて、グッと行くつもりなのかと思いました。でも後で考えてみると、むしろ(体力的に)きつくなって緩めてしまったというほうが正しいように感じました」
「かなりショックだったのでは…」井上尚弥はフルトンの“奇策”をどう打ち破った? 元世界王者・飯田覚士が分析「一番驚いたのは本人のはず」 – ボクシング – Number Web – ナンバー
つまり、
- 6Rまでは井上に強打を打たせづらいスタンスを取っていたから耐えられた
- ポイントを挽回するために7Rからスタンスを本来のスタイルに戻し攻勢に出た。
- 攻勢に出ることによってポイントは取りやすくなったが、強打を打たせる形になってしまった
ということで、井上陣営の戦略とフルトンの「このスタンスで耐えるのもう無理」がばっちり噛み合ってしまったことによる8R TKOということになりそうです。
印象深かったのは:クリンチのさばき
7Rまでは比較的クリンチにも付き合っていた感じはあったんですよね。井上尚弥からクリンチに行く場面もありました。しかし8R、最後の詰めは違いました。1回ダウンしクリンチでしのぐべく必死で食らいついてくるフルトンに対し、井上尚弥の対応は非常に素晴らしかったです。何がってクリンチさせないんですよ。クリンチでチャンピオンになったフルトンにその技術を発揮させない。入り込もうとするタイミングを全てボディブローでシャットアウトし、突き放し、有効打を叩き込む。飯田さんもこう語っています。
「フルトン選手と言えばクリンチ。腕で巻き込む力が絶対的に強くて、戦った相手はみんな逃げきれずに巻き込まれてきました。コーナーで彼は、何度もクリンチにいこうとしているんです。でも尚弥選手が体のパワーでそれを許さない。足腰の強さ、体幹の強さでそれを弾き飛ばしていました。実際、体も大きくなってスーパーバンタム級の肉体でした。
「かなりショックだったのでは…」井上尚弥はフルトンの“奇策”をどう打ち破った? 元世界王者・飯田覚士が分析「一番驚いたのは本人のはず」 – ボクシング – Number Web – ナンバー
死にもの狂いでやってきたクリンチに巻き込んでしまえば、あのラウンドは逃げ切られたかもしれない。どうしてクリンチできないんだって一番驚いたのはフルトン選手だったはずです」
でもそれをさせずに、逆にパンチをまとめてTKO。
フルトンの技術もかなり高かったと思いますが(実際ディフェンスはめちゃくちゃ上手かったです)、彼にとって不運だったのは井上尚弥が強すぎたってことかな……このまま行くと年内に4団体統一戦ということになりそうですが、、さてどうなるかなあ。このまま行くとマジでパッキャオ級の歴史的英雄になってしまうな。いやー見てみたいです。
引退を宣言している2028年まであと5年。どこまで行ってくれるかな……