人手不足でサービスが低下している飲食店が今考えるべきこと

居酒屋・飲食店の店員のイラスト「ビールを運ぶ店員さん」
新型コロナウイルスの感染拡大がどうやら終息に向かいつつある今日この頃、これまでなかなか行けなかった「外食」をちょいちょいするようになってきているのですけど、どの店に行っても「共通する事態」が起きていて心配です






接客のレベルが下がってる

多くの店で共通して起きていること、それは接客のレベルが下がっていることです。呼んでも来ない、料理が遅い、会計を待たされる……など。改善を要求するようなことではないんですけど、そういう店の状況を眺めてると「回ってねーなー」と思って落ち着かなくなります(飲食あるある)。


そうなっている理由はシンプルで、人手が足りていません。


少数の社員と多数のアルバイト

飲食店では、少数の社員と多数のアルバイトという人員構成で運営されるのが一般的です。10人で営業するとしたら、社員3人+アルバイト7人みたいな感じ。この比率が社員の方が多い店の場合には、休業中・短縮営業中は人件費が重くて大変だったでしょうけど今現在は営業にそれほど支障がないと思います。一方でアルバイトの比率が多い店の場合には、休業中は最低限のコストに抑えられて安心だったでしょうけど今現在はアルバイト無し、全社員が現場に出ずっぱりになって必死で回している印象。

社員てのが誰より仕事出来るって言うなら良いんですけどなかなかそうでもないんですよね。そもそもどんなに仕事が出来る社員であっても足は2本、手も2本しかないので、同時に3卓のオーダーを聞くとか、水を補充しながら料理を運びながら会計も受け取るとか、そういう物理的に不可能なことは出来ません。どうしたってクオリティは下がる。接客というのは難しくて、知識と経験がある40代の男性よりもお客様に近い感じの20代の女性の方が上手く行くことも多いです。店の雰囲気も大きく変わってしまいますしね。



そしてみなさん口を揃えて仰るのは、アルバイトを募集しても来ないという現実。


人手が足りていない理由

  • 今後売り上げが安定するかどうかわからないのでアルバイト・パートの採用を絞っている
  • コロナ禍でアルバイト・パートを一斉に雇い止めしたことで、再募集しても戻ってこない
  • 外国人労働者の減少で社会全体人手不足の中、コロナ前と変わらぬ時給でしか募集できない


雇い止めは経営上仕方のないことだったと思いますし同情する余地もなくはないんですけど、雇い止めした店側がアルバイトやパートの生活事情を勘案していないのと同様に、雇い止めされたアルバイトやパートも店の事情のことなんて考えてはくれません。生活に不安を抱えているところであっさり「しばらく来なくていい」と言ってきた店に、営業再開で戻ってあげる義理はないんですよね。「飲食店でのアルバイトはもうこりごり」という話も聞きました。気持ちが離れてる。

もちろん一定数、飲食店での接客や厨房の仕事が好きだという人はいるでしょう。そういう人の中には戻ってきてくれる人もいると思いますけど、そういう人のうちの1人である僕自身がいまだに戻る気になれていないことを考えると、全員が全員そうではない。今戻ってもコロナ前の半分以下、例えば週末の夜だけ来てくれとか、ランチタイムの3時間だけ来て欲しいとか、そういう使われ方するのは目に見えているので(実際そうだった)、それじゃあね、気持ちもお財布も満たされません。無理っすわ。



時間が経過するにつれて解消されていくだろうとは思います

アルバイト(例えば高校生、大学生)は時間が経過するごとに入れ替わっていきますし、このまま感染拡大が収束すれば近い将来外国人労働者の受け入れも再開されるでしょうから、飲食店の人手不足も時間が経過するごとに解消されていくんだろうなとは思います。ただそれが「いつか」という問題になると店や会社によって差がある話でしょう。多くのアルバイトを使い回して人件費を効率化していた会社ほど、戻すのは大変でしょうね。


サービスを落としていない店もある

ここ3ヶ月ぐらいで訪れた店の中で、昔と変わらない活気とサービスを提供してくれてる店って言うのは、メンツも人数も変わっていないような店が多い印象です。ある意味で「正社員だけで回せる小さい規模の店」と言えるのかも知れないし、「身の丈に合ったサイズの経営をしている店」とも言えるのかも知れませんけど、少しサイズが大きな店であっても手当が行き届いてスタッフのモチベーションが高いところはサービスを落としていない印象でした。


ビジネスのロジックを考え直す

飲食店としてはなんとなくの「地域相場」を把握した上で、経営コストの中で人件費に割く予算を決めそれを元にビジネスを組み立てるような、そんな雇用の仕方をしていると思うんですけど、色んな店を見ていて思うのはそのロジックも店ごとに違うんだなということ。上手く経営が回っていなくて愚痴を言っている店は多いですけど、じゃあ、このご時世に多くのスタッフが生き生き働いている店は何が違うのか?客単価が高くて収益性が高い?いやー僕そんな高級飲食店行きませんから、そういうわけじゃないです。

そうではなくて、そこに、新型コロナウイルスによって光が当たることになったけれど実際にはその前から大きな問題として存在していた、ビジネス上の課題とその突破方法があるんじゃないのかなあと思っています。低いサービスを提供し続けることは、人々の新型コロナウイルスの記憶が鮮明なうちは「仕方がないよね」で済ましてもらえるけれど、記憶が薄れていくのに従って低評価に繋がっていくと思うし、長い目で見れば今すぐ改善を始めるべき点だと思うんですよね。ただ「今日が忙しすぎる」だけではない問題。


こういうときこそ考える

そういう意味で最近の飲食店は勉強になることが多いです。こういうときに何かを考えられること。バカみたいにたくさん飲食店がある日本において、それがある種の分岐点になるんじゃないのかなあとそんなことを考えています。