キッチンあるある:仕事が出来ない人に対して冷淡

料理をするシェフ・コックさんのイラスト
その昔、「レストランの「マウンティング気質」が合わない」というテキストを書いたことがあって、9割方書き上げたんだけどなぜか公開せずに下書きに入れっぱなしになっています(なんか問題があったのかな)。そっちのテキストはいずれ確認して公開しようと思いますが、それと関連したキッチンあるあるとして、「仕事が出来ない人に対して冷淡」というのがあると思うんですよね。

仕事が出来る人に対してリスペクトがある一方で仕事が出来ない人は信頼されないとかバカにされるとかって、もちろんどんな業界、どんな職種にでもあるとは思うんですけど、キッチンの世界って割と経験が必要な世界じゃないですか。事務職が楽とは言わないけど、なんだろうな、一般的な仕事とは違う仕事の勘所ってのがあると思うんです。



ちゃんと仕事できて当たり前の世界で

飲食というのは効率的に仕事してようやく及第点(少しでももたつくとクオリティが下がる)みたいな部分があり、かつ、複数の人が工程に絡むことが多いので自分の手を見ながら同時に周りも見て動いていかないといけない。人の仕事について何でもかんでも手伝えば良いってわけではないけれど、ここで手があると助かるという部分で手伝わないのはもっと悪い。慣れている人にとっては当然のことが、不慣れな人にはまるで出来ないという状況が起きがちなんだけど、キッチンの人の悪いところはその状況に対して、

  • 経験がないから仕方がない
  • こういうところに着目して動いて欲しい
  • キッチンでの基本的な考え方

といった指摘にならずに、「こんなことなんで出来ないの?」に収束してしまいがちなところですかね。勘所を教える、勘所をつかみやすくなるよう誘導すると言ったことをしていかないといつまで経ってもミスを怒ることしか出来ないんですが。。



キッチンの文化

最初は個人の性格によるものなのかなと思っていたんですけど、色んな店舗で様々な人を見てきた結果、基本的にそういうひとたちなんだなというのがわかってきました。みんな仕事が出来る人同士で働きたい、仕事が出来な人が入ってきて効率が下がったりフォローの手間が増えたりするとそれを責めがち、悪い人ではなく悪気もないけど陰口を叩く。

なーんかそういう文化なんですよね。キッチンの世界って。「そんなんわかるやろ」っていってるけどわかってないのは教えてる人間のせいだと思うんです。



不向きな人を導くのがあなた方の仕事では?

僕自身は割とそういうとこ器用な人間だったみたいで、最初のスペインレストランに入って最初の3ヶ月ぐらいはキッチンおよび飲食の勘所がわからず「距離感」がつかめなくて色んなことを言われたけど、後半はきちんと働けるようになったし、その後働いた居酒屋、フードコート、イタリアンレストラン、ビアパブでは、(技術的な意味で「仕事できる」状態になるのには一定の時間が掛かったけど)「飲食の人間」としては概ね即戦力として働くことが出来ています。

だから「考えて動けばすぐに出来るようになるだろう」と思ってしまう反面、「そもそもキッチン的な考え方がわかってないから適切に考えられない」という人がたくさんいるんだなということもよくわかります。とんちんかんな働き方してる人は大概それ。今何が最優先で何が必要かをわかってないんですよね。


周りがすべきは手先の仕事を教えると同時に、その人の中に飲食の人間としての考え方を作って、思考が自動的に発生するようにしてあげることだと思うんだけど……それが出来ない人、ほんと多いです。仕事が出来る・出来ないを、あたかも個々人の属性のように捉えて、「あいつは仕事できない」「あの人は仕事できる」で思考停止してる感じがすごいある。50過ぎのおっさんで変化の余地が乏しく本人も自覚がないっていうんだったらまあそれで仕方ないけど、一般的には違うし(注:若いけど反省も学習もまったくしない例もまれによくある)、ましてや大学生とか脱サラ組とかだったらその辺から教えないと意味ないと思うんですけどねえ。



自分の仕事をしましょう

飲食の仕事はとても好きなんですけど、そういう仕事できない人間をシンプルに悪くいうだけみたいな文化は、ちょっと嫌いです。陰口叩いて溜飲下げてないで、お前もお前の仕事しろや。そう思います。部下や新人に仕事させられないヤツは、その時点で自分も仕事ができてないってことじゃないんですかねえ。