お前、「国菌」だったのか

先日、伊勢角屋麦酒(有限会社二軒茶屋餅角屋本店)社長、鈴木成宗さんの書籍「発酵野郎!」を読んでたんですが(いずれレビュー書こうと思いますが、めちゃめちゃ面白いです。クラフトビール好きは絶対読むべき)、その中でこんな記述が出てきました。



現代に話を移すと、2005(平成17)年に日本の研究チームが世界で初めて麹カビのすべての遺伝子情報を明らかにした。麹カビは「酵素の宝庫」とも呼ばれ、100種類以上の酵素を生み出すとも考えられており、研究が進めば、人類の暮らしを変える有意義な使い道が発見されるかもしれない。ちなみに、06年に日本醸造学会は麹カビを「国菌」と定めている。

「鈴木成宗 / 発酵野郎!」 P.124






オリゼーと言えばもやしもん

麹カビ(黄麹菌)といえば、学名はアスペルギウス・オリゼー、言わずと知れたマンガ「もやしもん」のメインヒロインであります。ちなみにもう1人のヒロインはサッカロマイセス・セレビシエ(出芽酵母)。日本酒醸造の際の役割は「米のデンプンを分解してブドウ糖にする」。オリゼーによって生成されたブドウ糖はその後、セレビシエが食べてアルコールを出すための餌になります。菌の連携による発酵の流れってほんとすごい。特に日本酒は「並行複発酵」といって全部一緒に進行するんで、余計にダイナミック。

麹カビは日本酒だけでなく味噌や醤油の発酵にも関与していて、味噌の場合だと大豆のタンパク質を分解してアミノ酸を出します。米麹として大豆と合わせる(米味噌)んですけど、それって日本酒的な特徴ではアルコール発酵になっちゃうんじゃないの?と思うんだけど、恐らくデンプン化されてない米をブドウ糖に醸すことはせず、大豆のタンパク質を優先的に食べるみたい。ほんと良く出来てるなあ……肉を塩麹に漬けておくと柔らかくなるのもこのタンパク質分解能力によるものなんでしょうね。オリゼーってほんと万能。


沢木と違って目には見えないし話すことも出来ないけど、でも発酵食品を作っていると存在は確かに感じます。ほんと可愛い。


というわけで「国菌」である麹カビ、黄麹菌、アスペルギウス・オリゼーをみんなで愛でましょう。