そうなんですが、でもそうじゃねえんだよなあ。
観光産業が厳しいってことはもちろんよくわかってます。その最たる場所、京都市に住んでる自分から見ても、観光産業およびその周囲の人たちの苦境ったらない。言ってみれば僕が飲食店の仕事に戻れないのも、観光産業が壊滅的ダメージを受けているせいだからであります。店の売り上げの大部分を観光客が占めていた(数字は見てないのであくまで現場から見た印象ですが)ので。そういう意味でも、観光産業が少しでも持ち直して京都市内の経済が少しでも回るのであれば、それは市民全体に利益のあることです。そうなんですが、でもそうじゃねえんだよなあ。
毎日10人前後の新規感染者が発生している京都において、今、東京を中心とした関東からの観光客を受け入れることはもう恐怖でしかない。「Go To トラベル」キャンペーンの実施延期は国民の不安を煽ると、経済同友会の桜田謙悟代表幹事は言い放ちましたが、残念、前倒しを発表した時点で既に国民は不安になってます。
経済同友会の桜田謙悟代表幹事は14日の記者会見で、政府が22日に始める国内旅行の需要喚起策「Go To トラベル」キャンペーンについて、開始時期を遅らせた場合は「不安をあおることになる」と述べた。その上で延期は「すべきではない」と強調した。
「Go To」延期は不安あおる 桜田同友会代表幹事(時事通信) – Yahoo!ニュース
真意は「観光産業を今何とかしないと取り返しの付かないことになる」であったとしても、理由付けとして不安を煽るはねーよ。不安つったら3月からこっちみんな不安で、その中でみんな必死に前向いてるんじゃないか。今さら何言ってんだっていう話であります。
じゃあお前、完全に反対なの?といわれると
こういうときにピュアな気持ちで「はんたーい」ってやれる人というのはなんて幸せなのだろうと思うわけです。いやさ、なんとかせなっていうのもわかるんですよ。「じゃあお前、賛成だって言うの?」いやいや、だからそういう二元論で収まるような話じゃないんだってば。中田大悟さんのこの記事が事情と苦悩を本当によく表しているので是非読んで欲しい。今がいかにヤバい状況なのか。観光業を政府だけで支えるのが可能なのか。
私は、特に「Go Toトラベル、バンザーイ」と言いたいわけでありません。むしろ、首都圏などからの感染拡大が地方へ広がってしまうことを、強く危惧しています。しかし、同時に、観光産業が直面している危機的状況についても強く危惧しています。なんとかして、両面からの解決策を見いださねばならないでしょう。
しかし、このままだと観光産業は死ぬ ~Go Toトラベルをどう考えればいいのか~(中田大悟) – 個人 – Yahoo!ニュース
中田さんの最終的な案は、
- 「Go To トラベル」キャンペーンから首都圏と大阪圏は外しましょう
というもの。京都は大阪圏に含まれるので、これが採用された場合は京都の観光客増は低く抑えられることになり、京都の観光業は引き続き大変です。でも、徐々に感染者が増えている現状では、そうせざるを得ないんじゃないでしょうか。
一方で京都がそうだからと言って、感染者が少ない地域同士の人の行き交いも制限するのはおかしな話ですし、せめてそこで少しでも観光業にお金を落として欲しい。延命措置かもしれないけれど、今死んでしまうよりはまだ希望がある。
京都市長は「反対しない」という立場
京都市の門川大作市長は15日午後、政府が22日に始める観光支援事業「Go To トラベル」に関し、「府県を越えて来ないでいただきたいという段階ではない」「健康に心配のない方に限って来ていただきたい」と述べ、感染防止対策を徹底しながら観光客を受け入れる考えを示した。
「Go To」京都市長は反対せず 「感染防止と社会経済活動を両立」|政治|地域のニュース|京都新聞
門川市長は、「感染拡大防止と社会経済活動の両立が大事」と強調した。キャンペーンに対しては明確な反対はせず、「感染拡大の契機になってはいけない」とし、旅行者に対しては「健康管理を徹底し、体調が少しでも優れない場合は旅行を中止して」と呼びかけた。
これもねえ、一口に「経済優先かよ」とは言えないことだと思うんですよ。感染拡大の状況はわかった上ででも、今まさに死のうとしている産業があって京都市には余分なお金は全くなくてどうするかってのは市長として決断を迫られる話だと思うんですよね。市民としては市長のこの発言には賛成しないけれど、でも、気持ちはわかる。しかし気持ちはわかるけれど、たかだか食事会でクラスターになってしまうような現状で、観光客に対して感染防止対策の徹底なんて出来るのか?という気持ちもある。
そういったことを色々考えると、「バカなこと言うなよこの野郎!」とはとてもじゃないけど言えない。わかりました、市長としての決断はそうなのですね、でも市民としては受け入れがたいですと表明するしかないんです。「Go To トラベル」キャンペーンをトロッコ問題だといった人がいたけれど、ほんとそんな感じ。正解はない。
現時点での個人的な意見は
「Go To トラベル」キャンペーンの旅行先として京都市が含まれるのには反対です。中田さんの案の通りですね。ただそれだと京都市の観光産業は死にます。実際、ニュースになっていないだけで「テナント募集」になっている小規模な旅行代理店や、廃業している(と思われる)ホテルは既にいくつか散見されます。ゲストハウスや民泊もだいぶ減りました。彼らを救ってあげたい気持ちはありますが、僕の選択は「トロッコを切り替えて1人を殺す」ということになりそうです。自分自身もその「1人側」に片足突っ込んでいるにもかかわらず。もはや、冗談ではなく、京都市民が京都のホテルに泊まって京都旅行を楽しむぐらいしないと、京都市はもうダメかも知れない。そんな状況でも次々ホテル建設が着工しているんですが、どんな気持ちでホテル建設してるのかなあ。だいぶ金突っ込んでるし今さらもう引き返せないってことなのかな。そうなんだろうなあ。