「逃亡犯条例」の撤回に向けた発表があってこれで収まるのかなと思ってから2ヶ月。事態はますます最悪な方向へ向かっています。そしてついに警察官の発砲とデモ参加者の負傷(現時点では重体)が起きてしまいました。拳銃の暴発などではなく、明確にデモ参加者への3発の発砲で、明らかな暴力の行使です。
民主化を求める抗議活動が続く香港で11日午前、警察官が少なくともデモ参加者1人に向け実弾を発砲した。
現場は、香港北東部・西湾河(サイワンホー)の交差点。デモ参加者たちはこの朝、交差点を封鎖しようとしていた。
フェイスブックに投稿された動画では、交差点付近で、銃を手にした警察官が男性ともみ合っている。
そこに、黒いフェイスマスクを着けた別の男性が近づくと、警察官はこの男性に向け至近距離から発砲。弾は胸部か胴体に命中したとみられる。
警官が発砲、デモ参加者が上半身撃たれ重体 香港 – BBCニュース
映像が完全な形で残っていて、それを見る限り近寄ってきたデモ参加者は確かに反抗的な姿勢ではあるものの明らかに武器を携帯していない丸腰の状態であり、普通の速度で歩み寄ってきたようにしか見えません。そのデモ参加者に対してこの発砲。そしてそれを止めようとしていた参加者に対しても2発。道路封鎖を巡るそこまでの争いがいかに激しいものであったとしても、銃の発砲は明らかにそれを超えるレベルです。しかも威嚇射撃ならまだしも、人を対象にして明確に発砲するなど常軌を逸している。
3日前にも催涙弾を避けようとした男子学生が駐車場から転落して亡くなっているというのに……
香港の民主化デモに参加していた男子大学生が駐車場から転落し、8日死亡した。入院先の病院関係者が明らかにした。これを受け、香港各地で抗議行動と追悼集会が開かれた。 香港科技大学の学生アレックス・チョウ氏(22)は4日午前、立体駐車場の建物のへりにいたところ転落し、意識不明の重体になった。当時、警官隊が周辺でデモ参加者の強制排除を進めていた。 転落の詳しい状況は不明。ただ、チョウ氏は催涙弾をよけようとして転落したとの報道が出ている。
香港デモ、男子学生が転落死 催涙弾避けてか – BBCニュース
「六四天安門事件」
1989年6月4日に起きた中国天安門での武力行使(いわゆる「六四天安門事件」)では民衆側からの反撃もあり、最終的に数百人から3,000人の一般人が殺害されたといわれています(確実な数字は不明)。香港情勢はまだあくまで「香港警察」とデモ参加者の争いですが、大陸側の境界付近に中国人民軍が集まったという噂が少し前にネット上にあるなど、依然として予断を許さぬ状態です。中国政府は他に飛び火しないようにしっかり香港の民主化問題を収めたい、かといってウイグル自治区でしているような非人道的暴力的行為を漢民族相手にはしづらいし、六四天安門事件当時とは違って世界との関係も増えて気軽に軍隊を投入することも出来ないし、という中で対応を案じているところだろうとは思うんですが、一方で現場警察はどんどんナーバスに、対抗するデモ参加者もヒートアップしているように見えます。
なんとか暴力に頼らない解決が出来ないものか
デモ参加者の要求レベルが高く「中華人民共和国」と根本的に相容れない、つまり中国が香港を中国の一部とする方針と相容れないという点で、この問題の落とし所がどこになるのか僕には全くわかりません。あの中国が妥協し譲歩するようには思えないし、デモ参加者も譲り黙るようにも見えないし、一体これどうなってしまうんだろうと。いまや中国にとって香港が経済的な意味で重要というわけでもないというのもまた、中国の強気を助長し話をややこしくしているわけで……僕としてはただ、これ以上の暴力が広がることなく、争うにしても双方が命を落とすことのないルールの範囲でと思うんですが……来年以降の世界報道写真展でその様子を見ることにならないよう願うばかりです。