「感情論」に乗って政策批判をする人たち

株のイラスト「喜ぶトレーダー」
下書きに入ったままだったものをサルベージしてみるシリーズ。こちらは2016年4月7日に書かれた記事なんですが、なぜかお蔵入りになってました。読み返してみて特に問題があるようには思えなかったし、今のタイミングでも読める記事だなと思ったので、若干の編集を加えた上で公開します。4年前なのできっかけになった話題は古いですがテーマの方を汲んでもらえれば。



この記事を読んで。


「アベノミクスは失敗した」と野党が攻勢を強めています。それに対して、安倍晋三首相は「雇用は改善している」と反論しています。雇用は実際に改善したといえるのでしょうか。現状に課題はないのでしょうか。岡山大学経済学部教授の釣雅雄氏に寄稿してもらいました。

「アベノミクスは失敗」に首相が反論 雇用は本当に改善しているのか?(THE PAGE) – Yahoo!ニュース


簡単に言うと、数字を見る限りアベノミクス開始前から雇用は改善し始めており、アベノミクス開始後もその流れは継続し、さらに女性就業者数が増えたことで少子高齢化で労働人口が減っていく社会をカバーする形になっているって感じでしょうか。もっと乱暴に簡単にまとめると、「雇用は改善している」となるでしょうね。特に僕は今「非正規雇用」という立場にいるので、今の仕事がなくなっても次の仕事がすぐに見つかりそうだというのは、実感として強く得ており、雇用は改善しているなあと思っています。



ただ、こういう実感を国民全員が得ているか?といわれれば、まあ得ていないでしょうね。


消費税や社会保障費増などで実質賃金は減っていて、暮らしが楽になっているということとは違うわけで、アベノミクスへの期待が高かった分その期待を満たしていないことに対する感情的な思いというのは確かにあると思うんです。給料が増えるとか、お小遣いが増えるとか、売上が伸びるとかそういうわかりやすいことを僕らは求めがちなので。でも現実的に考えて、日本経済が世界を席巻している時代ではないわけですし、外的要因だけで売上が勝手に伸びたりはしません。僕の会社の売上が伸びるということは、誰かの売上が減るという意味でしかなく、みんなが一斉に豊かになるような社会じゃもうないわけです。パイの大きさは決まっていて、かつ、これ以上大きくならないので。



語るべき言葉を持つはずの人が二元論で語るべきなのか

そういうことを考え合わすと、国民感情としては「豊かにならないじゃないか!」という不満はあるでしょう。そのことでアベノミクスを批判する気持ちも解ります。

でも政治に携わる人間が、その感情に乗って「アベノミクスは失敗である!」というような、ざっくりしたことを言って煽るのにはものすごく違和感があります。煽ってる人達というのは、ある程度勉強していていろいろ知っているはずなんです。知っている人たちがするべきことは、今やっていることは、縮小していく日本経済をなんとか現状維持の路線に乗せることであって、この部分では成果が出ているがこの部分では取り組みは不十分……というような説明を繰り返し行っていくことだと思うんですよね。



豊かな人をより豊かにすることはもう出来ない

だって、「豊かにならないじゃないか!」という国民の声を豊かにすることで納得させることは、出来ないんですから。貧しい人たちを助けることは出来ても、もう既に十分豊かな人たち(国民の大多数であり、最も声がデカい人たち)をより豊かにすることは出来ません。無理っす。出来たとして、「自分で頑張って豊かになって下さい」という仕組みを整えることくらい。起業や投資のルール作りとかね。1回国民全員が貧しくなれば、また国民全員を豊かにすることは出来るかも知れませんけれども。

そういうことに言及しないまま、豊かな未来を夢見て現状を批判する姿勢には、誠実さがないなあと僕は思っています。アベノミクスが大成功だとは僕も思っていないけれど、失敗だとか成功だとか、そういう解りやすいことじゃないと思うんですよね。



追記(2020/07/17)

4年経った今、アベノミクスが成功だったか失敗だったかということを考えると、外的要因もあって一定以上の成果は出したと言えるけれど、実施前に喧伝していたような効果はなくデフレの改善やGDPの成長も達成出来ず、増えた負担を何とかカバー出来る程度の緩やかな成長にとどまったという感じなのかなと思っています。実際問題、どこからどこまでがアベノミクスでどこからどこまでが外的要因かってわかんないので、安倍さんが嫌いな人は「全部アメリカと中国のおかげであってアベノミクス自体は失敗」というだろうし、安倍さんを支持する人は「外的要因を生かすだけの素地をアベノミクスが作った。だから成功」というでしょう。わかんないんですよね。個人的には結果さほど悪くなってないからまあ良かったんじゃないかと考えています。


ただ本文でも書いているけれど、国民に対する痛みの説明が不十分なんじゃないかなとは思います。新型コロナウイルスに対する対策でもそうですけど、痛みの部分はなるべく国民から隠しておいて、上手く誘導して気付かせないまま解決するみたいなこと、あるじゃないですか。説明せずに「必要なんです」「仕方がないんです」だけで押し切ろうとするとかね。国には国なりの気遣いがあるんだろうとは思うんですけど、でもそろそろ難しいことを考えずに生きている人たちに対しても、「日本は今大変な状況なんです」ということを説明する頃合いなんじゃないかなと。それでポピュリズムやワンイシューが台頭し、国民がそれを選択するほど愚かなのであれば、それが日本という国の行く末なんじゃないかな。


でも、大多数の日本国民は、良識ある人間であると僕は信じています。
正しい未来をきっと選択出来るはずだと。