「中国」が少し変わってきたような気がする(「財新」の記事から)

唐船のイラスト
香港やウイグル自治区に対する中国政府の非道な活動は本当に許せないし、お前ら人間の血が通ってるのかと思うぐらいなのですが、それは踏まえつつ、最近読んだいくつかの記事を通して中国の人達が着実に地歩を固め、個々人のレベルで先進国になりつつあるように感じました。なんか変わってきたのかな。



例えばこの記事。

中国は公海での遠洋イカ漁の自主休漁を初めて実施する。イカ資源の保護と遠洋漁業の持続可能な発展を促すため、中国農業農村省が2020年6月1日付で全国の地方政府や水産事業者に通達した。

イカは中国の遠洋漁業の主要な対象魚の1つだが、近年は気候変動などさまざまな要因から資源量や漁場の分布に大きな変化が生じていた。今回の自主休漁では、大西洋西南部のアルゼンチン沖および太平洋東部のペルー沖の公海上で操業するすべての中国籍漁船が漁労を一斉に停止する。

中国、公海での「遠洋イカ漁」初の自主休漁の訳 | 「財新」中国Biz&Tech | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準


先進国にとって漁獲量の管理は普通のことですよね。日本の鰻に対する活動を見るとむしろ日本は先進国ではないのではないかと思ってしまうぐらいですが、まあでも多くの海産資源において禁漁期間を設けたり、漁獲量の上限を設けたりして対して管理を行っています。当然、水産事業者のその年の儲けは制限されますが、今後長年にわたって漁業を続けるという目的の下、全員が納得して取り組んでいるわけですね。誰もが自らの利益を最優先にして生活する中、なかなか出来ることではありません。

一方で中国といえば世界中のあらゆる海に出没し根こそぎ資源を取っていく、そういう印象でした。あれ、どこかで見たことあるな……という既視感は当然で、日本がかつて世界中の海でマグロを捕りまくっていた、それのもっと規模のデカい版です。公害や環境汚染などと合わせて発展途上国あるあるなんだろうなと、批判しながらある意味で諦めてもいたんですが、それ、自分で休漁するってさ。マジで。しかも水産業界から中央政府に要請して実現したって。


浙江省舟山市は、全国の水揚げ量の6割以上が集中する遠洋イカ漁の最大の母港だ。舟山市遠洋漁業協会の関係者によれば、2007年から2011年ごろにかけては大西洋西南部で操業する漁船の1艘当たり漁獲高が2000トンを超えていた。しかし最近はそれが200~400トンに減り、2019年にはわずか50トンの漁船も出てきたという。舟山市の水産業界はイカ資源の激減に危機感を強め、中央政府に公海での一斉休漁を陳情していた。

中国、公海での「遠洋イカ漁」初の自主休漁の訳 | 「財新」中国Biz&Tech | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準


いやー。国がどうこうとか民度がどうこうとかっていうシンプルな話じゃないと思うんです。正直、生活に余裕がなかったらそんなこと見向きもしないでしょう。それだけ末端の市民の生活レベルが上がってきたってことだと思うんですよ。そうじゃなければ取り尽くして次の魚ってなるだけなんで。中国がこうなってきちゃうと、ノリノリで札束ぶん投げてるのよりよほど脅威だなあと思います。



記事もうひとつ。

中国の製造業の回復が徐々に加速してきた。7月1日に発表された6月の財新中国製造業購買担当者指数(製造業PMI)は51.2と、5月の50.7から0.5ポイント上昇。好不況の判断の目安とされる50を2カ月連続で上回るとともに、1月の51.1をわずかに超えて今年の最高値を記録した。

製造業の新規受注指数は内需の復調に牽引され、2月以降で初めて拡大トレンドに転換した。新規輸出受注指数は6カ月連続の縮小トレンドとなったが、海外でも経済活動の再開が始まったことを受けて5月よりも改善した。原材料在庫指数、原材料購買価格指数、工場出荷価格指数も上昇した。

前月の5月の主要経済指標は改善傾向を示したものの、ほとんどがエコノミストの予想値に届かず、中国経済の回復の足踏みを浮き彫りにした。しかし6月以降は、新型コロナウイルス対策の防疫物資の輸出増加や、中国政府が5月下旬の全国人民代表大会(全人代=国会に相当)で打ち出した景気対策の効果が表れ始めたようだ。

中国「製造業」回復加速でも楽観できない理由 | 「財新」中国Biz&Tech | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準


中国の直近の経済状況を知らせる記事です。中国政府が発表する数字はだいぶ眉つばものだと言われていて、長らく実態と合っているか怪しい快進撃が伝えられていたわけですけど(大本営発表かよ)、財新(中国の独立系経済メディア。日経みたいな感じ?)の直近の発表では回復してきた点については回復してきたと書く一方で、今後不安があるという点もきちんと併記してます。昔からそんなでしたっけ?財新だからなのかな。


「6月は一部の地域で新型コロナの集団感染が発生したが、国内経済全体への影響は限定的だった。製造業は経済活動のさらなる正常化に自信を深めている。一方で雇用の悪化は軽視できず、いかに雇用を維持・拡大するかが重い課題になる」。財新グループのシンクタンクCEBMのシニアエコノミストを務める王喆氏は、そうコメントした。

中国「製造業」回復加速でも楽観できない理由 | 「財新」中国Biz&Tech | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準


ここでも中国政府のというよりは、中国国民全体のレベル向上を感じます。紹介した記事は二つとも「財新」から東洋経済に提供された記事なんですが、ただ明るい未来を追うのではなく、現実を見つめて確実な成長を目指そうという姿勢。成功をアピールする中国政府より、そっちの方がよほど脅威。



かつての中国に戻るのかな

僕らが生きている時代では中国って大したことないけど、歴史で学ぶ中国はいつでも東アジアで圧倒的な存在でした。軍事的にも経済的にも文化的にも。日本にとっては戦後のアメリカがそんな感じですが、それと同じヤツに中国がなりつつあるとすると、単に商売で負けるとか言うレベルじゃなく影響があるんじゃないかなあ。日本文化に対するかつての中国の影響は本当に大きいし。

ただ……茫洋とした印象でしかないけれど、活発に活動する中国の人達に対して中央集権的な中国共産党ってなんか似合わない気がするんですよね。そのところで反政府活動や、内戦が起こらなければという注釈はつくかな。それもまた中国という国の歴史だからなあ。内戦が起きたところで中国という国の勢いは変わらない気もするけれど(下手に外国が介入して戦渦が全土に広がるとかしない限り)。