「小覇王」——中国でニセファミコンを作り続けたメーカー(山谷剛史) – Engadget 日本版
中国で『ニセファミコン』を作り続けて28年というゲーム機メーカー「小覇王」がある。小覇王は、ファミコン互換機を作り続け 、今では30〜40代の中国人ならだれもが知っているメーカーとなっている。
小覇王は、米国版の「NES」ではなく日本の「ファミコン」の互換機を作り続けた。またそのついてくるソフトも日本の海賊版ソフトの詰め合わせだった。現在30〜40代の中国人の多くが子どものころに小覇王のファミコン互換機を遊び、日本を体感した。ファミコンのソフトでは特に「魂斗羅」「沙羅曼蛇」「高橋名人の冒険島」「バトルシティー」などが人気となっている。
小覇王は2018年3月に、「新型ゲーム機を普及させ、正規版を推進し、ファミコン互換機を販売するのをやめる」という企業戦略を発表している。だが結局、ニセモノは売らないとしている「天猫(Tmall)」の小覇王のオフィシャルショップでは、ファミコンが遊べるゲームがまだ販売されている。
中国の電子機器に詳しい山谷さんの興味深いレポート。
中国では昔から「ファミコン互換機」(通称・ニセファミコン)が愛され、作られ続けてきたけれど、それが今でも作られているらしいと聞いて驚きました。日本にはあんまり偽ものの本体というのは無かったので僕は触ったことはないけれど、「100 in 1」みたいな海賊版ソフトは時々目にしていたので(お土産ものにもなっていたように思う)、その情熱は理解出来ます。まだまだゲーム機自体、シンプルな作りの時代だったんでしょうね。
で、今でも作ってるっていうその「最新機種」を見て驚くのは、インターフェイスが進化してるってこと。Android搭載のセットトップボックスで、中国のショッピングサイト「タオパオ」の代行サイト(怪しいんで敢えてリンクは貼らない)にあった情報も合わせると、
- ファミコンのカセットを刺してゲームが出来る
- 有線LAN、無線LANに対応
- SDカード、USBメモリ、外部HDDに対応
- HDMI接続で外部モニタに接続
- 内部ストレージは32GB
- 値段は300元ぐらい(5,000円弱)
といった具合。
LAN経由でダウンロードした動画をディスプレイに出力して鑑賞するみたいなことも出来るみたい。Android搭載ってことは例えばYouTubeの動画をディスプレイに出力みたいなことも出来るのかな。
任天堂が販売している「ニンテンドークラシックミニ」もUSB電源、HDMI出力と現代的なスペックになってはいるけれど、アレはあくまでミニ。収録タイトルは決まっていて、カセットを差し替えて遊ぶような仕様にはなってません。あくまでファミコンを体験できる機械であって互換機ではない。せめてネットに接続して公式サイトからゲームを購入出来るようにすればいいのにと思うけど(せめてデータ的な意味でのファミコン資産を残したらいいのに)、でもそれなら別にクラシックミニでやらなくても良いか。そうか。
任天堂自体は過去のものは過去のものとして未来に進んでいる中で、少しずつ仕様を改良しながら「ファミコン互換機」を開発し続ける情熱に、エミュレータ開発者とかそういう人たちと似たような情熱を感じて素直にスゲえなあと思ったのでした。エミュレータはデータとしてのファミコン資産を残しているけれど、互換機はフィジカルな意味でのファミコン資産を活用出来る。そういうとこからOPPO(中国の大手スマホメーカー)に繋がっていることを考えると、物作りの情熱ってそうやって培われるものかも知れないですね。中国人も日本人に負けず劣らずマニアックだよなあ。そういうとこ似てる。
形は少し歪かも知れないけれど、中国で変わらず愛され続けるファミコン。任天堂的にはアレかも知れないけど、なんかちょっといいなと思いました。