“Spring is Gone.”
2回生になるとき、クラブジャンパーを自分たちで作るのが伝統だった。 すべてのデザインは2回生の自由で、 一部の例外を除いて、学年ごとに『自分たちのカラー』を揃え、 (僕らの代は『ワイン・レッド』。でも実はピンクで僕は気に入らなかったのでほとんど着ていない) 左腕にネームを入れるのが通例だった。 と言っても自分の名前をそのまま入れても面白くないから、 自分のニックネームや、思い入れのある言葉・単語を入れるというのが流行りだった。 僕の入れた言葉は“Spring is Gone” 誰にも説明したことがなかったが、それは別に隠していたわけではなくて 面と向かって説明するのは気恥ずかしいし、めんどうだし、 ここに書かなかったのは忘れていたからだ。 そのころ既に自分の書いたモノに『is』と署名していた僕は、 『is』の入った言葉を選びたかった。 Springとは、そのまま春。うがって温泉…ていうほどひねくれてもないし、意味もない。 『春は、過ぎ去ってしまった』 春は恋、 つまり、失恋したんだ、ということ。 そのときに失恋していたかどうかは、いまいち曖昧だけど、 後日そのジャンパーは着ることが出来なくなって(それでなくても着なかったけど) ロッカーの奥にしまい込まれた。 あれ、今でも誰かが着てるんだろうか? 後輩は先輩の服を継承したがるもので、僕も事実、好きな先輩のジャンパーを着ていた。 僕はジャンパーを5枚持っていたから、少なくとも誰かは僕のモノだったジャンパーを着ているだろう。 あの頃が、懐かしい