例えばこんな場面
キッチンについて説明をするとき。
営業の方は絶対に女性に向かって話をし始めます。こういうところが使いやすくなってるんですよ、こういう収納あると便利でしょう、リクエストに沿って高さを変えることも出来ます、これだけの広さがあれば余裕でしょう……など。一般的な日本人家庭においては、料理をするのはほとんど女性なんでしょうね。でもうちの場合、僕と奥さんの料理割合って少なくとも「3:7」ぐらいはあると思うんですよね。奥さんが忙しい時期だと「5:5」ぐらいになる時もある。しかも調理する環境にうるさいのって多分僕の方なんですよね。使い勝手とか(掃除しやすさとかは奥さんの方がうるさい)。なので実は両方に訴えてもらう方がより良いリアクションが返ってくると思うんですけど、そこまで気付いて話が出来る人ってなかなかいないですね。
住居周辺のスーパーなど
一般的な家庭では食材の買い出しを行うのは圧倒的に女性が多いです。男性は女性に頼まれたものをスーパーに買いに行く。「帰りに買って帰るよ」的なスタイルが多いでしょう。わかる。なのでこれもまあ大体奥さんに向かって話をする人が多いです。でもうちの場合、僕と奥さんの買い出し割合って回数、金額ベースで「6:4」ぐらいなんですよ。僕が在宅勤務で昼休みなどに買い出しに出やすいからそういう役割分担になってます。依頼を受けることもありますけど常に買っておきたいものや日用品に関しては基本的に僕がチェックして僕の判断で買います。しかも奥さんは仕事の帰りに寄ってくることが多いので、実は住居周辺のスーパーの影響を受けるのは圧倒的に僕なんですね。だからこだわってるのも実は僕。話の途中で僕が介入すると割と驚いた顔で見られます。お前かよ。ええそうなんですよ。
優秀な人ほど「男女観」を固定させがち
別にそういうのを「古い」って言いたいんじゃありません。不動産業界がどうだとかそういうことじゃなくて。営業成績が優秀なのであろう人ほど、ポイントを絞り確認を省略する傾向があります。そりゃあターゲットであろう人に前置きなしで話をし始める方がインパクトがありますし、効率が良いでしょう。時間も限られてますしね。そう考えると多分不動産業界に限らず、営業というのはそういうもんなんだろうなと思うわけです。僕らだって一般的な日本人家庭と変わらない部分がほとんどなので、そういう営業をまったく気付かずに受け入れているとは思うんですよね。
そういえばベビーフード業界も
思い出してみれば、今年の夏まで参画していた「ベビーフード」の会社のビジネス部門なんてまさにそれに特化したような存在でした。対象を絞り込んでマーケティングしていくわけですけど、「初手:女性」は当然デフォルト。そこから年齢だったり、世帯収入だったり、健康に対する志向であったりによって対象を選り分けて広告を打ったり、キャンペーンを張ったりするわけです。そりゃあもう見事なもんでした。あんなに洗練されたマーケティング部門、今まで関わった会社で見たことないです。でもまあ、そのマーケティングというのは「お父さんが子供の食にこだわって主導権を持っている家庭」は始めから諦めてるんですよ。当然です。ビジネス資源は限られてますから。極少数の、実在するかどうかもはっきりしない対象に向かって広告を打っても効果は期待出来ないでしょう。でも逆に言えばそういう姿勢が、育児の主体を女性とする「社会的な雰囲気」を醸成しているとも言えると思うんですよね。価値観を固定する方がビジネスは楽ですからね。
いくら行政が旗を振っても、なかなかそういうビジネス習慣も含めた価値観というのは変わっていかないんだろうなと、不動産業界の営業の方たちと話をしながら、そんなことを思ってました。仕方ないんでしょうけどね。社会ってのはそういうもんなんでしょう。