どうして農業の世界では種を自分で増やして儲けることが許されているんだろうか

5月15日、種苗法により自家増殖原則禁止というニュースが報じられ農家、特に自家採種を行っている農家や、種関係の活動をしている人々の間に衝撃が走った。内容は自分たちで野菜、果物、花などから種を取ることを原則禁止するというもので今日までSNSや各専門メディアなどで話題になっている。
 特に、聞かれる声としては今回の改変により、自家採種ができなくなり在来種や固定種などが失われ、F1種のみが蔓延してしまうという声である。そこには記事のタイトルが先行し、一部誤解されている部分もある。そこで本記事では今回報じられた「種苗法による自家増殖原則禁止」についての事実と誤解を説明する。

種苗法による自家増殖原則禁止の理解と誤解 | 農ledge

正確な情報は全て上記記事に記載されています。とても良い記事です。SNSなどで回覧された記事を読んで、農家の権利が侵害される!と心がざわついた方は、上記記事を熟読され、問題の切り分けと整理を行うと良いと思います。制度改革への反射的な反対を煽る記事に安易に乗りませんように。



個人的な解釈

上記記事を前提として、個人的な解釈も記述したいと思います。


種苗法の改正で登録品種の自家採種が出来なくなるって言うんで話題になってました。農業において「今年の作物の一部を残して種を採取し来年それを植えて継続する」というのはとても自然なことであり、遥か昔から行われてきたことです。現代においても同じことが行われていて、それをいきなり法律で規制するのは横暴なのではないかと。とてもよくわかります。

ただしかし一方で、現在の登録品種は企業もしくは個人が長い年月を掛けて開発をし、費用を掛けて品種登録したものであるというのも事実です(一節によると登録するだけで100万ぐらいかかるらしいです)。開発者にとってはお金を掛けて作りだした商品であり、それを売って営利活動とするのが開発・品種登録の目的です。そう考えて見れば、著作権や商標などと同様に、その権利を主張し守ろうとするのは至極当然であり、1回買ったらあとは自分で増やして使いたい放題では商売になりません。

一昔前のオフィスでは、例えばMicrosoft Officeを一つ買って使い回していたり、複数の端末にアドビ製品をインストールしたりといったことが横行していましたが(ネットでシリアルナンバー付きでダウンロードしてインストールなんてのもあった)、ライセンスの厳格化とインターネットの普及で今ではそうしたことは無くなりました。ネットに接続してアクティベーションしないと使用出来ませんし、営利・非営利問わず、使用するなら使用する分だけのライセンス料を払わなければなりません。

農業の慣習と、人間の経済活動のルール、どちらを優先させるのか?というのは難しい問題ですが、農業が経済活動を基盤にしたものである以上は、少なくとも営利活動に関する部分については経済活動のルールを守らざるを得ないんじゃないでしょうか。なんでもかんでも自家採種禁止だと話は違いますが、開発者が品種登録することで権利を主張しているものに関しては、その権利を尊重するべきでしょう。



その上で柔軟なライセンスを設計できればベター

ただ他の業界のライセンス事業に合わせていくことを考えると、自家採種を法律で一方的に禁止するのではなく、それを認めるライセンスを開発者が設定できる方が、制度として健全なんじゃないかという気もします。それぞれの農家の都合に従って、登録品種を毎年買う、登録品種は使わないだけではなく、5年分の自家採種と栽培・販売をライセンスする、増殖した上での苗販売をライセンスするといった様々な契約が可能になる方がいいのでは?

そういう意味で言うと、この種苗法改正の意義はよくわかるけどやり方が微妙だなあと思うわけです。もうちょっと上手く出来なかったのか。この辺、農業行政というシステムに上意下達の精神が残ってるってことなのかも知れないですね。もう一段の法改正が行われて、農業がモダンな経済活動と同じプラットフォームで行われるようになると、企業が参入しやすくなるんじゃないかなと思うんですが。