【ニュースから】津軽海峡の真ん中は日本じゃない?

領海・排他的経済水域等模式図

防衛省は11日、ロシア海軍の軍艦10隻が津軽海峡を通過したと発表した。

(中略)

 防衛省によると、10日午前2時ごろ、北海道襟裳岬の東北東約180キロの太平洋上を進むロシア海軍のウダロイI級駆逐艦など10隻を海上自衛隊の哨戒機が発見。10隻は10日夜から11日未明にかけ津軽海峡を通過し、日本海に向かった。領海侵入はなかったという。

ロシア海軍10隻、津軽海峡通過 ウクライナ侵攻と呼応か 防衛省(時事通信) – Yahoo!ニュース


「領海侵入はなかったという。」


ん?






津軽海峡の真ん中は日本じゃないらしいです

昭和52年に制定された「領海法」により領海は基線からその外側12海里までとされましたが、 国際航行に使用されるいわゆる国際海峡である 宗谷海峡、津軽海峡、対馬海峡西・東水道、大隅海峡 の五海峡は特定海域として、同海域に係る領海は基線からその外側3海里の線及びこれと接続して引かれる線までの海域とされました。

特定海域


国際的に重要な通過地点にあたる海峡を「国際海峡」とよびそのうちの特に重要なばしょは特定海域として領海が制限されているようです。海上保安庁によると津軽海峡における了解はこんな感じ。


対馬海峡

津軽海峡



おおすごい。濃青色が内水、青色が領海ということらしいので、絶妙に真ん中通過できるようになってるってことなんですのね。戦争が起きたときにこれがどうなるかはわかりませんが、平時であればどの国のどの船も通過可能だっていうことみたいです。ロシアの軍艦10隻が通過できたのはこういうことだったのか。



他に意外なのは対馬海峡と大隅海峡

対馬海峡

対馬海峡

大隅海峡

大隅海峡



どちらもルートを正確に選べば通過が可能です。検索してみたらこんな記事も出てきました。なるほどなあ。



(「中露艦隊の日本周回 海自の台湾海峡通過や海峡の領海化で対抗論 – SankeiBiz(サンケイビズ):自分を磨く経済情報サイト」より引用)



国際海峡の根拠は「海洋法に関する国際連合条約(国際海洋法条約)」

国際航行に使用されている海峡[編集]
第3部(第34条〜第45条)では「国際航行に使用されている海峡」として国際海峡に関する制度を規律する[15]。本部ではこれに該当する水域としてまず「公海又は排他的経済水域の一部分と公海又は排他的経済水域の他の部分との間にある国際航行に使用されている海峡」(第37条)を挙げ、この水域を航行する船舶は、その水域が他の国の領海内であったとしても通過通航権を享受することができる(第38条)[15]。この通過通航権は沿岸国にとっての無害性が条件とされていないという点で、領海における無害通航権よりも船舶の旗国(英語版)にとって強力な権利と言える[15][16]。同部ではさらに「公海又は一の国の排他的経済水域の一部と他の国の領海との間にある海峡」を挙げ、ここにおいては沿岸国は他国船舶の無害通航権を認めなければならない(第45条第1項)[15]。ただしこの無害通航権は、沿岸国が航行を「停止してはならない」(第45条第2項)とされるなど領海における無害通航権と異なる点があるため、「強化された無害通航権」とも呼ばれる[15]。

海洋法に関する国際連合条約 – Wikipedia

1994年に発効した国連海洋法条約によって、条約発効前は3海里だった沿岸国の領海が12海里に拡大されることになった(一部国家ではすでに12海里であった)。そのため、今まで公海上であったため自由通航可能だった海峡の多くが領海に包摂されることとなり、通航する船舶が無害通航を義務付けられるばかりでなく、航空機の上空通過も不可能となるなど、大きな障害となることが予想された。従来適用されてきた「強化された無害通航権」は、領海が3海里であることを前提に、ごく一部の海峡に適用されることを想定した制度であり、対象となる海峡の大幅な増加を受けて、より緩やかな制度に改める必要性が生じた。そのため、同条約では新たに「通過通航権」として、重要海峡における外国船舶および航空機の領海および領空内通航の権利が、より自由度の高い形で盛り込まれた。

国際海峡 – Wikipedia


根拠になっているのが「海洋法に関する国際連合条約(国際海洋法条約)」で、この条約は日本やロシアを始めとして168の国・地域と欧州連合が批准しています。その限りにおいてはお互いにこのルールを守って航行するということになります(ただしアメリカは批准していない)。ただ……なんか裏技みたいな話ですけど、どの海峡を国際海峡とするかは「慣習的に国際航路として利用されている実態があれば、国際海峡とされるが、その具体的な基準は無い」とのことなので、なんらかの有事の際に「この海峡は国際海峡として認めない」と強硬に主張して領海を設定し直し結果的に通過を禁止するということは起きえそうではあります(日本に限らず)。


船の世界は歴史的な事情からかそれともその性質からか、慣習的な出来事が多いような気がするんですけど、なんらかのサブ機関で「現在国際海峡と認められる海峡」みたいなのを逐次規定するような仕組みがあってもいいんじゃないんですかねーと思います。今から条約に盛り込むのは超大変でしょうけど。


いやー、調べてみると面白いですね。