フリーランスに求められるロイヤルティについて悩む

円陣を組む人たちのイラスト(会社員)
フリーランス(という名の準委任契約)の生活を始めてはや1年が経とうとしています。この間にいくつかのプロジェクトに参加し、いくつかの企業と仕事をさせていただいてきましたが、やはり環境によってアプローチの仕方やエンジニアに求めるものが少しずつ違い、その中で葛藤を感じる場面もあります。ロイヤルティ(忠誠心)はそんな葛藤のうちの1つです。






はじめに

ロイヤルティとは

日本語で「ロイヤリティ」といった場合には「著作権などの使用許諾料」という意味で使われることが多いですが、それは「royalty」。ここで話題にしたいのは「loyalty」の方で単語としては忠誠心とか義理とかいった意味になります。


loyaltyとは
忠実、忠誠、忠節、忠義、勤王、(しばしば相反する)忠誠、「義理」

loyaltyの意味・使い方・読み方 | Weblio英和辞書


「ロイヤリティ」と「ロイヤルティ」は音感が似ていることもあり全て「ロイヤリティ」としている場合も多いですが、ここでは便宜上「著作権などの使用許諾料」の方を「ロイヤリティ」「royalty」、「忠誠心」を「ロイヤルティ」「loyalty」と区別することにします。


従業員に対してる使われるときの「ロイヤルティ」

そんな「ロイヤルティ」ですが、従業員に対して使われるときの定義はおおむねこんな感じになります。


従業員ロイヤルティ:
従業員が勤める企業に対して抱く、「信頼」や「愛着」「帰属意識」のこと

ロイヤリティとは(Loyalty)?ビジネスにおける意味やロイヤリティを高めるメリットについて|組織改善ならモチベーションクラウド | 株式会社リンクアンドモチベーション


「飲みニケーション」などというと揶揄されたりもする時代ですが(もう死語でいいと思う)、誕生日や年末年始などのパーティやミーティングなどもこのロイヤルティを上げるためのイベントごとであり、従業員のモチベーションを高め生産性を向上させたり、離職率を下げたりすることを目的としています。


人事分野では、先述の通り、自社に対して帰属意識が強く、忠誠心の高い従業員を「従業員ロイヤルティが高い」と表現することがあります。この従業員ロイヤルティを高めることに成功した企業は、生産性の向上や、離職率の低下が見込め、会社が困難な状況に陥っても、粘り強く立ち向かう従業員も多いでしょう。

従業員にとっても、その企業で働く事を誇りに思い、やりがいも感じられ、モチベーションを維持しやすいなどさまざまなメリットがあります。

そのため、企業は従業員ロイヤルティを高める工夫が大切となります。たとえば、社内の風通しを良くするため、上下左右関係なく、活発にコミュニケーションがはかれる環境整備をすることで、従業員同士の絆が強くなり、組織に対しても愛着を持ちやすくなります。

ロイヤリティとは(Loyalty)?ビジネスにおける意味やロイヤリティを高めるメリットについて|組織改善ならモチベーションクラウド | 株式会社リンクアンドモチベーション


組織のトップがそういうことに目端の利く人である場合もありますし、コンサルタントなどを通じて経営ノウハウを得て意識的に実行している場合もありますよね。改めて書くまでもなく色んな会社で実践されていることだろうと思います。



本題

ここまでがロイヤルティに関する説明で、ここからが本題です。

エンジニア側の意識(※個人の感想です)

フリーランスのエンジニアとしてプロジェクトにジョインしている場合、業務を行う上で最も大事なことはプロジェクトやタスクの要件や仕様です。業務のバックグラウンドや業界の現況、組織内の関係などが必要な場合もなくはないですが、そうした情報を直接取りに行く必要はほとんどなく、必要だったとしても必要な部分だけを要件定義に記載していただければ十分です。

求められる業務をこなすことが結果的にクライアントの助けになればいいとは思っていますが、(ちょっと醒めた見方かも知れませんが)能動的にクライアントを助けたいと思って仕事をしているわけではありません。契約には業務範囲というものがありますし(例えば「ECサイトのバックエンド開発業務」とか)、稼働時間内にそれを越えた業務を行うことはむしろ契約に反することです。そんなことしてる時間があるならやるべきことの方に時間を使え、と。


クライアント側の意識

一方でクライアント側がどう考えているかというと、どうやら2通りのパターンがあります。

  1. フリーランスで契約しているエンジニアは「外部委託」と割り切って本社から切り離す
  2. フリーランスで契約しているエンジニアを「従業員」の1人と考えて、組織の価値観を共有しようとする

1. フリーランスは「外部委託」
1のパターンの場合は、経営方針や戦略、企画についてのミーティングは全て役員および正社員で行われます。エンジニアに投げられるのはそこで決定した内容から切り出された開発案件であり、細かい事業背景などは語られません。エンジニアとしては開発に専念できる一方で、技術的に見てあまり筋が良くないと思う要件定義であってもなかなか提言が通らずストレスを感じることがあります。

まあ、割り切り方次第なんですけど。

2. フリーランスは「従業員」
2のパターンの場合は、ミーティング内で技術担当としての役割をエンジニアに求めます。戦略など事業背景を把握した上で必要な部分に必要な提言をしてもらいたいという感じでしょうか。開発しているものの意義がわかることでモチベーションが上がったり要件定義の隙間を埋めることが可能になる一方で、求められるままにミーティングに参加し続けると本業とは関係のない時間が増えて開発が進まないという難点があります。


どちらのパターンにも一長一短あるわけですが、今回の主題である「ロイヤルティ」を求めてくるのは2のパターンです。


エンジニアとしての葛藤

クリエイティブな活動においてバックグラウンドを知ることは業務の「のりしろ」を増やすことになります。各人のタスクがのりしろを通じて連携することでプロダクトはより洗練されたものになりますし、そののりしろを維持するのは契約ではなく組織へのロイヤルティです。そうした意味でロイヤルティが業務に与える好影響を理解してはいるのですが、その獲得のために正社員や非エンジニアと同様の行動をフリーランスとして求められることにはなかなか同意できません。開発に直接は関係がないミーティング(営業主体の朝会や業務のキックオフミーティングや社長の経営戦略説明など)への参加とか。

エンジニア系の役員・正社員は参加不要と考えている節はあるものの、会社上層部や非エンジニア系部署の正社員は「チーム全体で意識を共有する」「全員が同じ価値観でプロジェクトを推進する」といったような言葉を掲げつつ無邪気に参加を求めてくることがあり、それを断るのはなかなか難しい。もっともらしい理由を付けて回避はするんですが「プロジェクトのゴールの認識をそろえインセプションデッキを作成するために」といわれると、参加しないとダメな気がしてきます。

インセプションデッキってなんですか?


インセプションデッキとは、プロジェクトの全体像(目的、背景、優先順位、方向性等)を端的に伝えるためのドキュメントです。

(中略)

インセプションデッキ(Inception Deck)を直訳すると「最初のデッキ(カードの束)」という意味となり、アジャイルプロジェクトにおける「プロジェクト憲章」に近い意味合いを持ちます。

(中略)

PMBOKにおけるプロジェクト憲章(Project Charter)は、プロジェクトに関する基本的な取り決めを記述する正式文書です。(中略)この段階ではプロジェクトマネージャが決まっていないため、より上級の管理者によって作成されます。

インセプションデッキ – NEXTSCAPE blog


あー……なんとなくわかりましたけど、それ、決まったら教えてくださいっていう案件では。作るために現場のエンジニアは必要ないし、ましてや傭兵部隊たるフリーランスを同席させる必要は余計にないはず。結局、話す機会を増やしてロイヤルティを上げることが目的なんですよね。対話を繰り返すことで結束を固めるみたいなの。対話が大事であることは否定しないけれど、リモートで働くフリーランスとして仕事のそういう部分まで踏み込むことは求めてないんだよなあ。



まとめ:個人的に求めているものは

「外部委託」と割り切られてしまうことも「従業員」として正社員と同等の負担を求められることも両方違うんじゃないかと感じています。前者はタスクへの理解度が低いままになる、後者は手を動かす時間が削られるという意味でどちらも仕事が円滑に進むとは言いがたい。

「社内で高め合ったロイヤルティをもってタスクの背景をエンジニアに熱く語る」といった程度が一番良い湯加減かなあと感じているんですけど、中に入るとなかなかわからないもんなんでしょうね。組織にいたら組織のやり方が正解だと思ってしまうもんなあ。

みんな違ってみんな良いわけじゃないけどまあ仕方ない

2013年からほとんど毎年のように新しい会社と仕事をしていますが、ほんと会社によって色んな人がいて色んな仕事のやり方があるなあと感じています。合理的なやり方というのはあるはずなのに、どの会社も微妙にその「型」に収まりきらないんですよね。過剰な部分や不足する部分がどうしてもあって、外部の人間からするとそれがとても目だって見える。飲食業の仕事と同じように極力自分の意見を押し通さずに流されるようにはしていますが、葛藤はあります。

人間がやることだから好みが反映されてそうなるんでしょう。不思議なものですね。