【レビュー】映画「映像研には手を出すな!」は原作の再構成版

映像研には手を出すな!
始めに大事なことを書いておきますと。


原作第一主義の人は見てはいけません。


もしくは、次に書くことをご理解いただいた上で閲覧お願いします。



映画版「映像研には手を出すな!」は原作とは全く違います

制作に作者の大童さんも確か入っていたはずなので、制作陣が勝手に切り貼りしたということではないのですが、ストーリーもエピソードも原作1巻2巻の内容を順序を入れ替えつつ、キャラを際立たせるような演出を加えて(例:書記のソワンデが講堂の鍵を切断するシーンとか)印象的になるよう構成し直したという感じですね。「再解釈・映像研には手を出すな!」とでも言った方が良いかな?


そういったいわゆる「オリジナル要素」は許せん!原作しか認めん!という人には苦痛かも知れませんが、僕は原作も大好きですけどドラマ・映画版も好きですし、なにより乃木坂46の3人が好きなのでかなり満足度高い感じでした。確かに話はだいぶ変わってる、例えば最後の上映会の挨拶シーン、原作では水崎氏が覚悟決めて挨拶をするというシーンなのに映画では浅草氏が出てしどろもどろになるシーンが足されてます。浅草氏が困っている姿はちょっと胸に来るものがある。あれは勘弁してやって欲しかったなあ……水崎氏の逡巡を際立たせるための演出だったんだろうなとは思うんですけど。その他、音響部の部室が映像研の隣の棟から地下に変わってたり、大・生徒会による文化祭徹夜禁止の下りがかなり長く描写されてたり、水崎氏の両親が文化祭に来れるようになった理由が変わってたり。細かいところでは音響部の部室摂取を依頼するのがソワンデから王くんに変わってたり。







……とまあ、大好きとか言いつついろいろ思うことはあったんですけど、でもそれでもやっぱりね、良いもんだなと思いました。映画見て、原作2回読んで、ドラマもう一回見返して(Amazon Primeでプライム会員特典配信中)、原作また2回読んで、もう一回映画見ましたよ。確かに違うんだけど、エピソードのパーツは1巻と2巻のどこかで展開されているものだったりするわけですよ。部活動合併とか文化祭禁止の下りとかも、もしかして大童さんが描きたかったけど描ききれなかった分も盛り込まれてんのかなと思ってしまうぐらい「芝浜高校」という環境にしっくり馴染んでた。とてもいい構成だったと思います。原作が大好きな方も、是非広い心で、見ていただきたいかと。原作の裏背景(というか環境設定)的な描写もあるし、楽しめると思いますよ。



映像研には手を出すな!_映画



アイドルとのタイアップという作品の性質上、続編を期待してもなかなか望み薄なのかなという気はしますけど、もし可能なら映画(またはドラマ)は原作とは違うこの路線で続編を制作して欲しいなあと思っています。映画ではまだ地味な存在だった百目鬼氏も、話が進むにつれ音響監督としてかなり重要な役割を担ってきますし、どう考えてもパロディの宝庫である「アニ研」面々を実写でどう表現するんだよっていうのも興味深い。

ドラマ・映画の評判や興行収入がどうだったかはよく知りませんけど、是非とも前向きな検討、お願いいたします。



映像研には手を出すな!


ちなみに個人的MVPは金森さやか役、梅澤美波さんでした!

乃木坂46における個人的なイチオシは齋藤飛鳥さんであり、2番目が梅澤美波さんなわけですけど、そうしたことを加味したとしてもやっぱり梅澤さんの熱演は非常に素晴らしいと思いました。おっとりした本人の性格とは全く違う役柄で大変だったろうとは思うんですけど(それいったら浅草氏の飛鳥さんの方がもっと離れてるけど)、打算的でリアリスト、生まれ持っての交渉役、でもそう言いながらクリエーターや創作物に対して深い愛を持つ「金森さやか」を非常に忠実かつナチュラルに表現していたと思います。いやあ、梅ちゃんのアレは相当に最高だったと思うなあ。



映像研には手を出すな!



「クリエーターや創作物に対しての深い愛」、これは原作5巻の、時計塔前でのテスト上映開始前、トラブってる様子のクリエーター陣の様子を見に行く金森氏の背中を見送るアニ研「鈴木さん」の視線で表現されているように思います。気になったら原作も読んでね。