Webサイトにおける著作権表示について

「COPYRIGHT」のイラスト文字
以前、仕事でWebサイトにおける著作権表示について調べて報告する機会があったのですが、てっきりブログで記事にしてると思っていたら書いてなかったようなのでまとめておきます。日本でも少しずつ変わってきてはいますが、まだまだ古い形式や独自の形式での著作権表示が多くあまり疑問ももたれていないようなので。







法的な前提

著作権に関しては国際的な取り決めがいくつかあります。最も古く最も基本的なものが「ベルヌ条約」(文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約)です。19世紀の1886年に署名が行われ、翌1887年に発効しました。


文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約 – Wikipedia


ベルヌ条約は加盟国を増やしながら1979年までに7回改正され、またベルヌ条約を補完する形で「TRIPS協定」(知的所有権の貿易関連の側面に関する協定)というものと、「WIPO著作権条約」(著作権に関する世界知的所有権機関条約)というものが存在しています。


知的所有権の貿易関連の側面に関する協定 – Wikipedia
著作権に関する世界知的所有権機関条約 – Wikipedia


またこれら以外に有名な条約として「万国著作権条約」というものがあります。


万国著作権条約 – Wikipedia


ベルヌ条約との2択という感じで書かれていることもありますが、Wikipedhiaのベルヌ条約の項目には以下のように書かれており、現在ではあまり考慮する必要はなさそうなのですが、著作権表示に関していうと「万国著作権条約」で定められた形式に従っていることもまだまだ多いです。


万国著作権条約は、ベルヌ条約の著作権保護水準を満たせず国際的な枠組みから取り残されていた国々との橋渡しを目的としていたものの[13]、後に各国が著作権の国内法を整備してベルヌ条約にも加盟していったことから[14]、21世紀に入って万国著作権条約の法的意義は失われている[15]。

文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約 – Wikipedia



ベルヌ条約に基づいた著作権表示の仕方

ベルヌ条約では基本的に著作権表示の必要がありません。著作物はそれが作られたこと自体が著作権を生んでいるので、そこに加えて著作権を主張する必要がないということらしいです。例えばこのブログは僕が書いた時点で著作権が発生しており、インターネット上に公開された記事は、著作権表示の有無にかかわらず僕の著作物だということです。

ただベルヌ条約に加盟している国は177ヵ国であり、世界中のすべての国が加盟しているわけではありません。インターネットには国境はありませんから、ベルヌ条約に加盟していない国のことを考えるとなんらかの著作権表示は必要になります。また記事が寄稿されたり、それ単独として回覧されたりして、著作者の推定が難しい場合もあります。そういう場合にはなんらかの著作権表示をすることが必要でしょう。



万国著作権条約に基づいた著作権表示の仕方

一方で万国著作権条約では、著作権表示をすることが求められています。著作権表示には以下の3つを含む必要があります。

  • ©
  • 制作物のリリース年
  • 著作権者

例えばこの記事が書かれているのは2021年なので、以下のような表示の仕方になります。

© 2021 Ippei Suzuki

慣例として「©」が表示されない環境に対応するために「Copyright」を付記している場合もあります。

Copyright © 2021 Ippei Suzuki

ブログのように常に更新されているものの場合、サイトそのものに付記される著作権表示において「制作物のリリース年」はすなわち現在の年になりますね。



日本でよく見られる著作権表示の形式

一方、日本でよく見られる形式には以下のようなものがあります。

Copyright © 2021 Ippei Suzuki All rights reserved.

魔法の単語「All rights reserved」がくっついています。割と一続きで慣例として使われていますよね。これの意味は「すべての著作権を所有しています」ということなのですが、それ、実は「©」と意味が被っています。そもそも著作権表示をすること自体が著作権を所有することを主張することなので、そこに改めて「All rights reserved」を付記することには意味がありません。まあ別にあったところで問題があるわけではない(万国著作権条約では必要なものが定められているだけで、それ以外のことを書いてはいけないとはされていない)ので構わないのですけど、最近の主流の著作権表示からは「All rights reserved」は無くなりつつあります。



主なWebサービスの著作権表示

現在主流の書き方を知るためには、そうしたことを意識しているであろう多くの人が利用しているサービスの著作権表示を見てみるのが一番早いです。執筆時点での各サイトの表記を並べてみます。

海外サイト

  • ©2021 Google
  • Facebook © 2021
  • © 2021 Twitter, Inc.
  • © 2021 INSTAGRAM FROM FACEBOOK
  • Copyright © 2021 Apple Inc. All rights reserved.
  • © 1996-2021, Amazon.com, Inc. or its affiliates ← Amazon USA

国内サイト

  • © 1996-2020, Amazon.com, Inc. or its affiliates ← Amazon JP
  • © Yahoo Japan
  • © Rakuten Group, Inc.
  • © LINE Corporation
  • © 1999 西日本電信電話株式会社
  • Copyright (C) Yodobashi Camera Co.,Ltd. 1998-2021 All Rights Reserved.
  • Copyright © UNIQLO Co., Ltd. All rights reserved.
  • Copyright NHK (Japan Broadcasting Corporation). All rights reserved.
  • Copyright © 2021 The Asahi Shimbun Company. All rights reserved.


現在、多くのアクセスを集めるWebサイトではシンプルな著作権表示が多いです。

海外サイトの場合「All rights reserved」を付けているのはAppleぐらいで、基本的には「©」「現在年」「運営会社」の3つだけになっています。Amazonに関してはなぜか日本版だけ年が2020年のままになっています(謎)。

一方で国内サイトの場合、たくさん表示している会社がまだまだ多いですね。「Copyright」から「All rights reserved」まで全部盛りっていうところもあります。異質なのはNTT西日本で、会社名を日本語で記載している会社はNTT西日本ぐらいしかありませんでした。日本語表記の場合こうしてるってことかなと思って英語表記を見てみたら「Copyright © 1999-2021 NIPPON TELEGRAPH AND TELEPHONE WEST CORPORATION」となっていて、形式そのものが全く違ってました。え、なんで。



まとめ

正直言うと、著作権者が誰かわかればどういう書き方をしても問題はありません。ベルヌ条約的にそれがなくても著作権の有無が左右されるわけではないので。ただ現在、大きなWebサービスで採用され主流になりつつある著作権表示は非常にシンプルなものになっています。ごちゃごちゃと書くのではなく、明確かつシンプルに。

個人的には「© Yahoo Japan」「© Rakuten Group, Inc.」といった形式で著作権表示をしている会社やサービスを見ると、「お、わかってんじゃん」と感じます。逆に「All rights reserved」までフル装備だとちょっとダサイかなーと思ったり(別に良いんですよ、問題はないです。個人の見解です)。そんなとこ見てる人がどれぐらいいるのか知りませんし、変えたところで企業イメージが上がるわけでもありませんけれども、自社の著作権表示をちょっと見直してみるってのもたまには良いんじゃないのかなと思います。はい。