【レビュー】大童澄瞳 / 映像研には手を出すな!

映像研には手を出すな!
アニメ化、実写映画化されている「映像研には手を出すな!」の原作である、コミック「映像研には手を出すな!」。作品の名前を知ってはいたのですが、入口は乃木坂46の3人が出演する映画の事前告知ドラマが入口だった僕にとって、原作コミックは実写映画版を見る前にどうしても読んでおかなければいけない作品でした。いやあ、完全生産限定盤の「スペシャルエディション」をもう既に買ってあるんですけどね、原作読むまではと思って積んであります。早く観たい。



そして原作コミック




本作品に対する感想として月並みなのかも知れませんが、とにかくその描き込み量に圧倒されました。

キャラクターとしてはまず浅草さんの想像力と、その想像力を絵コンテ(もしくは設定画)という形でビジュアル化する変態的な特殊能力。そして俳優・女優を両親に持つ水崎さんがもつ特殊な観察力と演技へのこだわりから生まれる、アニメーションへの情熱。で、その2人をまとめ上げる金森さんの手腕。この3人の絶妙なバランスがとにかく素晴らしいのですけど、特筆すべきは、この3人それぞれの特異な能力を「マンガ」というメディアで表現しきる大童澄瞳さんの能力ですよね。

東洋美術学校絵画科卒業とのことですが(Wikipediaより)、その経歴から筆が早いということなの……か?連載しているのが月刊誌「月刊スピリッツ」だとしても、1話における描き込み量が異常です。作品内では浅草さんがやたらめったら凝った設定を描き上げるとか、その設定に従って3人で妄想を繰り広げる(金森さんは2人の妄想に付き合ってるだけだけど)とか、そういった表現を実際に書いているのは大童さんですよね。それがとにかくすごい。



世界観が魅力的すぎる

作品自体の世界観は、何十年か未来の日本(なんらかの戦争後?)ということがわかる以外はあんまり多くのことはわからないのですけど、それにしてもこの、芝浜高校の何ともいえない不可思議な構造やそれを取り巻く街並みのめちゃくちゃ魅力的なカオスな感じはホントにもうロマンが溢れすぎてて、浅草さんでなくても毎日探検したくなるぐらい。そんな中でも冷静に金勘定出来る金森さんが逆にすごいぐらい。

物語が進むにつれ、学校内での映像研の地位が向上したり、新たに音響部と提携したり、水崎さんが活動を認められたり、緩やかに時間が流れていくさまが表現されていてそれもなんかいい。基本的にあんまり時間の概念がないドラえもん時空的な印象なんだけど、描かれていないだけでどうも季節感があるみたいだし、その辺が今後どう表現されていくのかもすごい興味があります。そう、アニメ化されたり、映画化されたりしてるから誤解しがちなんだけど、これまだコミック5巻までしか出てないのよね(現在も連載中)。

月刊だし刊行がゆっくりなのかも知れないけど、4巻が出たのが2019年5月10日で、5巻が2020年1月30日なら、間にいろいろあったとしてもそろそろ6巻が出ても良いんじゃないかと思うんだけど……まだっすかね。大童先生。まあ、アニメ制作に参加したりしてたみたいだからその辺で遅れてるのかも知れませんが。



ところで大童さん、落語好きなんですか

3巻でこんなセリフがあります。


(浅草)巴御前のハチマキとか岩見重太郎のワラジとか、小野小町が清水次郎長親分に出した手紙だとか値打ちもんが掘り出せりゃそれで。
(生徒会長)小野小町と次郎長は時代が違います!あるわけない!
(浅草)あるわけのねえもんだから珍しいんですよ。


これ、五代目古今亭志ん生の「火焔太鼓」の枕ですよね。読者のどれだけがわかるのかわかんないけど。浅草さんだけじゃなく生徒会長まで巻き込んでこの下りをやってるところに面白味があります。




アニメ版だとさらに進んで、


また、アニメ放送分では原作にはない「落語」な場面があった。#3で主人公たちが乗ったモノレールの車内風景に、着物姿のご老人がふたり並んで座っているのが一瞬だけ映る。このご老人、どう見ても昭和の名人、古今亭志ん生と三遊亭円生である。原作に流れる落語まぶしをアニメが引き継いだ場面だ。

「映像研には手を出すな!」落語好きならドハマりする小ネタ満載のアニメ (1/2)


とか言う表現になってるらしくて、まじか、くっそ良いじゃん。

最近ちょっと離れてましたが、久々に落語聞きたくなってきました。落語聞きながらランニングってのも結構楽しいんですよね。久々にやろうかな。



オリジナル要素上等

そんなこんなで原作コミック5巻まで読み切って、もう一回通して読んで、かなり満足したのでこれでようやく映画が見れそうです。ドラマでは原作とは結構違ってる部分が多くオリジナル要素満載だったのですけど、個人的には原作で表現しきれなかったことを盛り込んでみましたという感じに見えてそれほど違和感はありませんでした。映画もオリジナル要素が増えているというのを風の噂に聞きましたが、原作も乃木坂46も好きな自分にとってはきっと楽しめるんじゃないかなと楽しみにしています。


あーもう、見よう。すぐ見よう。