事業ごみの海外移出と値上げと環境保全の話。

ゴミの分別のイラスト
先日カフェで話をしていたら、「昔はゴミを全部海外に持っていって分別させていたんだけど、それが出来なくなったから最近事業ごみの値段が上がっちゃって」という話をがあって、そういう話だったっけと思いつつ聞いてたんだけど、グリーンピース的な話でまとめると確かにこんな感じになるようです。



ペットボトルの回収率は、使い捨てプラスチックの中でも88.9%と高く 、ものからものへ生まれ変わるリサイクル(マテリアルリサイクル)の代表例とされています。

が…

現実には、回収されたペットボトルの半分以上は、これまで海外、主に中国に輸出されてきました。

“リサイクル”を目的としたごみの輸出入では、ごみが本当にリサイクルされているのか、どのようにリサイクルされているのか、廃棄されているのか、自然環境に流れ出しているのか、把握することは困難です。

“リサイクル”という神話 – 国際環境NGOグリーンピース


「リサイクル」が「ゴミにしない」→「埋めない」という意味なら売り払うのもリサイクルかも知れませんが、無理がありますよね。実体は中国に、中国が2017年一杯でプラスチック等の資源ごみの輸入を禁止してからは東南アジアに(そしてその東南アジアも順次禁止した)押しつけられていたということだと。これはひどい。



行政的にはもう少し違う話

ただ、グリーンピース的な価値観で言えばそこで終わりなんですが、行政的な見方で言うともう少し奥がある話です。


京都市をはじめ行政が資源ごみとして回収したものは,その大部分が国内でリサイクルされています。一方赤い部分は海外に運ばれ,リサイクルルされたもので,全リサイクル量の40%以上,重量にして20万トン以上が毎年海外に移出されていました。

「いました。」と過去形で書いたのは,昨年(2017年)7月,日本をはじめ,世界最大の資源ごみ受入国だった中国政府が,その年の年末をもって,海外からのペットボトルを含む廃プラスチック,古紙,廃電子機器等の輸入停止を宣言。今年(2018年)になってこの処置は実行されました。

(中略)

「日本の廃ペットボトルはきれいで海外は喜んで買っている」についても記しておきます。赤い部分(海外リサイクル)の大部分は自販機横や駅の回収箱などから,「事業系回収」によって集められたものです※2。洗っていないものやラベルをはかしていないものが相当入っていたはずで,決してきれいなものばかりを海外輸出していたわけではありません。

ごみにまつわるこの数字なぁに? 海外リサイクル率40% – 京都市ごみ減量推進会議


行政としても問題は認識しており、資源ごみの分別を厳しくするとともに国内でリサイクルを行うように努めることで対処しているということのようです。京都市の分別はもともと割と適当だったのですが、最近は結構厳しくなっていっています。同時に事業ごみに対する指導も強まっていて、業者によっては細かく分別することを求める業者もあります。例えばプラスチックごみ、資源ごみは当然として、雑がみや請求書の封筒の住所欄の部分まで細かく。

それでも民間業者が集めて処理する事業ごみまで完全にコントロールすることは出来ませんし、僕が知っている業者のうち1つは袋に入っていれば瓶と発泡スチロール以外は何でも持って行ってくれます。事業ごみと言っても基準がバラバラなんですよね。京都市で営業している民間の清掃業者の中にも、ゴミを海外に「移出」している業者はあるでしょうし、その積み重ねが2017年までの海外移出40%と最近の事業ごみの値上がりに繋がっているんでしょうね。業者側できちんと分別してあれば行政の処理施設に持って行けると思うんですが、それをするコストより「移出」のコストの方が低かったからそうしていた、それが出来なくなって、分別を求めたり行政の処理施設で処理してもらわなくならなくなってコストが高くなったから値上げすることになった、そういう話かなと。



つまり、まー、経営している人だとなかなか言いにくいことだけれど、値上げしてようやく環境的には健全になったんですよね。どんだけ指導したところで、ごみを出す側回収する側の経済的動機の方が環境保全を上回ってしまうというね。経済的に見合わなくなって始めて環境保全に沿う形に変わるというのも、結果オーライではあるけどなんかなあという気がします。仕方ないんですけどね。仮にどこかの国が受け入れを表明してしまったら簡単に崩れてしまう形でもあるし。


道徳的な指導と並行して経済的にも「指導」を行うしかないのかなー