最低賃金が上がって給与が下がる

給料袋のイラスト
社会って世知辛い。


今お世話になっているもしくはこれまでお世話になった店や会社に、何か不満があってそれをここで主張したいというわけではなく、シンプルに一般論として。







フリーターとして働き始めておおよそ4年半

フリーターで食べていくのは大変だなあと日々思っています。特に、未経験の世界に飛び込むと賃金が上がる理由も無いし、最低賃金で何年も据え置きみたいなこともあろうかと思いますが、経験を重ねて正社員との間で能力差が小さくなったもしくは無くなったとしても、正社員と非正規雇用者とでは評価基準がそもそも違うので賃金はさして上がらず、職責だけが重くなるという状況になりがちです。


よくある「正社員に変わって店を回しちゃうアルバイト」(僕はそんなじゃないけど)は多分正社員より仕事できる面もあるけれど、給料は圧倒的に安いので。「同一労働同一賃金」だの、「能力に応じた賃金」だの言うけれど、まあそんなの現実的には存在しませんよねって感じです。フリーターだろうとパートだろうと大学生だろうと、非正規雇用は人件費の調整弁であるわけなので。



本題:最低賃金が上がっています

ここ5年くらい、最低賃金がすごい勢いで上がっています。非正規雇用者が増え、社会環境が変わっていることがその背景にあるのだと思いますが、最近10年の推移をグラフにするとこんな感じです。


京都府の最低賃金の推移_2008-2017
(引用元:京都府の最低賃金 | ひと目でわかる!最低賃金


2008年には717円だった京都府の最低賃金は2017年には856円になりました。たった150円弱の違いですが、10年前のアルバイトと言えば時給750円だったのがいまや最低ラインが時給900円になるくらいのインパクトです。少し体力を使う仕事、拘束時間が長い仕事、勤務時間が朝または夜の仕事などになってくると、時給1,000円を超えるのは普通で、大学生でも時給1,100円のバイトをしているとか珍しくありません(東京の場合は+100円くらいで読んでください)。フリーターで月労働時間が150時間くらいだとすると、月2~3万円くらいの差になります。割とデカい。元が安いですからね。



最低賃金が上がったところで給与が上がるわけではない

時代は変わったなあ、アルバイトの収入もさぞかし増えているのだろうなあと思われると思いますが、実際のところそんなことありません。考えてみれば当たり前のことなんですけど、最低賃金が上がったところで会社が出せる人件費には限りがあります。利益率が高かったり、年々成長しているような企業であればいいけれど(そういうところが非正規雇用者に依存しているか微妙だけど)、そうでなければ最低賃金とは関係なく人件費の総額は決まっています。つまり、最低賃金が上がれば上がるほどアルバイトを雇用できる時間数は少なくなります。


では所属しているアルバイトの人数を減らすか、というと、これまた悩ましいところで、人数を減らせば減らすほどシフトの柔軟性が下がります。柔軟性が低いと、大学がテスト期間に入った瞬間にアルバイトがゼロみたいなことにもなります。安定したシフトを組む上で所属するアルバイトの人数はなかなか減らせない。また、所属している以上ある程度バランス良く出勤させてあげないと、「あんまり稼げないんで辞めます」ということになりかねない。雇用できる時間数が少なくなり、アルバイトの人数が減らず、バランス良く出勤する……最低賃金が上がり時給が上がったぶん労働時間が減るので、結果的に1人あたりの収入にはあんまり影響がありません。



さらに:時給据え置きだと人が来ない

最低賃金が上がると言うことは、賃金全体の水準が上がるということでもあります。今まで時給900円でアルバイトを確保できていた仕事があったとして、最低賃金が856円になったけど上回っているからまあいいかなと据え置いたとしましょう。確かに時給が下がったわけではないけれど、これまで時給800円で応募していた仕事が850円や900円になることで、時給900円の相対的な価値は下がります。加えて、同業他社が時給を1,000円に上げた場合、時給は下がっていないのに実質的に価値が下がることになります。時給を下げたわけでもないのに、アルバイトの確保が難しくなる。


で、ま、実際に何店舗かの飲食店で体験したことなんですけど、もしアルバイトが集まらなかったらどうなるか?もちろんある程度までは1人のアルバイトに仕事が偏り、労働時間数が増える流れになるでしょうが、それ以上になってくるともっと話は簡単で、店休むんですよ。アルバイトの人件費は店を開けてこそ発生する経費なので、閉めてしまえば経費は掛かりません。もちろん店としての収入は減るけれど、休む日を選べば店としてはさほどダメージは大きくならない。小売業サービス業には、売り上げが期待できない日とか赤字の日とかあるもんですからね。

正社員の多くは月給制でしょうから、シフト上のお休みと定休日が重なる限り収入に影響はありませんが、アルバイトは明らかに労働時間が減ります。そして収入が減るわけです。



結論:最低賃金が上がったところで生活は別に楽にはならないんですよ

だってね、当たり前だけどさ、店や会社の利益が増えるわけじゃないですからね。もちろん元々安すぎたと言えるでしょうけど、だからといって「最低賃金上がりました、じゃあ時給もその上がり幅分上げましょう」とはならないわけで。むしろ後から入ってくる新人アルバイトの時給が上がっていて人件費が嵩むので、先に入っているアルバイトの時給は上がりにくくなります。今僕、職能給もらっても良いようなポジションで仕事してますが、大学生アルバイトと時給ほぼ同じです。上がんないんですよねー。正確に言えば、上げられないんですよねー。


あくまで結果的になんですが、最低賃金が上がると、みんながほどほどに貧しくなります。いや、本当は最低賃金のせいじゃなくて、収益性の低い事業の問題なんでしょうけど、そんなこと言ったって仕方ないからなあ。すぐに儲かるようになったりしないし。最低賃金上げるのと一緒に法人税の減税も行われるんですが、実効税率3%の法人減税で給与増加に繋がるかっていうと……ならんよなあ。コスト管理は毎日の売上高でしか捉えてない感じするし。


別に今いる会社がどうこうじゃなく中小企業ならだいたい同じような状況じゃないのかなあ。最低賃金で唯一変わることと言えば、転職しやすくなることですかね。周りの求人の時給が上がっているので。フリーターの転職もしんどいけどなあ。

世知辛い世の中だぜ。