梅田さんは偶像から降りるってことなんだろうと思う

今話題のインタビュー。

「ウェブ進化論」から3年。梅田望夫さんは日本のWebが「米国とはずいぶん違うものになっちゃった」と残念がる。Twitterの“はてブコメント事件”についても聞いた。
 

Webも将棋も、最先端・最高峰を見せてくれる点が好きなのだと梅田さんは話す。はてなの米国行きは「難しいと分かっていた」が、近藤社長への期待は揺るがない。
 



このインタビューに対する代表的なリアクション

梅田望夫氏が何か言っていて面白い件: 切込隊長BLOG(ブログ) Lead‐off man’s Blog
おい望夫! ヤフーで賭け将棋しようぜ (追記あり): 切込隊長BLOG(ブログ) Lead‐off man’s Blog
404 Blog Not Found:梅田望夫は「残念」なただ一つの理由
あなたの自由は、他の人も持つ自由。 : ひろゆき@オープンSNS



前編を読んだ段階で、今更何言ってるんだろうこの人という印象だけが残ったんだけど、他の人のリアクションを読んだりしながら考えてて、後編を読んで思った。要するに「偶像」としての梅田望夫から降りますよ、っつーことなんだろうと思う。

JOJO風に言うと、「俺は偶像を止めるぞジョジョーーー」的な何か。


このインタビューを素直に読むと要するに、「僕ってそんな器じゃないのよね、えへへ」的な香りがもの凄いする。

良い悪いは別にしてもの凄く大きな影響を与えた書籍「Web進化論」を含めて自分の書く本は「エッセイだ」と今更言ってみたり、自身が取締役を務める株式会社はてなのアメリカ進出に対して失敗すると思っていたが止めなかった(正確には止められなかった、だけど)と言ってみたり、ひろゆきが指摘しているように「何を言うかは自由だが結果としてそれ相応のコストを払う、それが言論の自由」ということであれば、取締役たる人間の発言に役職を離れた見解なんて他人に強制できるわけもないのだけどそれを愚痴ってみたり、切込隊長がつっこんでるみたいに自分が提示したビジョンに基づくWebを言葉で表現できなかったり(しなかったり、かもしれない)、弾さんが言っているとおり現在日本で活況を呈しているサービス(ニコニコ動画やクックパッド)についての興味は別にないようなことを言ってみたり、そういうこと全体が、だから僕にそう言うことを求められても困るんだよ実際の話、的な暗喩っつーか、たまたまコンサル的なアレでWebについて書いたらこうなっちゃっただけで、僕がそれをどうこうする立場じゃないでしょ的な。一流であるか三流であるかとかいう話はよくわからんけど、どっちかっていうとポジショントークに近い?

僕自身は別に信者でも何でもなくて、梅田望夫さんについては「へーそういう見方もあるよね」くらいしか思ってない人間なのだけど、信者であるかそうでないかに関わらず、Webを取り巻く世界の中に「梅田望夫」という偶像が存在すると言うことはまぁ事実なわけで、この人が示す先に明るい未来(面白いサービスとそれに基づく豊かな暮らし、そしてビジネスとして成功する企業)がきっと存在する、だから彼の示す先に進んで行こう!的なノリ。そしてその立場から「梅田望夫」という人はこういうことを言うべき(言わないべき)というのがあっての、そんなことを梅田さんが言うなんて!的なリアクションなわけで、逆に言えば意図的にそう言うことを表明していくことによって、自ら偶像という立場から降りることは可能なんじゃないのかっていう。いやまぁ、この一連のインタビューがそういう意図を持ったものであるんじゃないかってのもある意味でその偶像イメージをベースにした印象でしか無くて、本当はただ単に何も考えてない人なのかも知れないんだけど(梅田さんご自身にお会いしたことがないのでそのへんはよくわかりません)。



そんな感じで見ていくと、前編に付けられたタイトル「日本のWebは「残念」」ってのはまぁ若干釣りタイトルに近くて、本音を言えばもうあんまり興味ないんじゃないですかね。Webビジネス全般みたいなテーマに対して。仮に自分が関わってるビジネスがどういう方向に進んでいくべきか…ということに注力している(だから他の人なんかしらねぇ)ということだったとしても、日本人顧客を相手にしている以上、アメリカではこういうサービスが受けてて、日本ではこういうサービスが受けててっていう話はしないと金になるものもならないし、やりたいことややれることの切り分けとか、こういう理念は大事にしつつ日本的なこういうプラットフォームに載せていこうとかそうなるわけなんで。そう言うのをしてないってのは、要はふとアメリカで接したような社会を変えてしまうようなサービスを日本でも作れないかと感じて、色々動いてみたけどどうも上手く行かなかったんでもういいやってことなんじゃなかろうかと。例外として自身が取締役を務めるはてなについては、社長とのよりプライベートに近い関係もあって色々と考えていくけど、他は知らんってことなんじゃないのかね。

前編のインタビューを読んだときに、もしかして重要なインタビューになるかも知れないなーとか思ったんだけど、色々考え合わせるとまぁそういうことなんだろうかなと。梅田さんなりの幕引きって言うか、「梅田望夫」の終わりというか。近藤さんみたいにリアルに近しい人は別としても、ある程度「梅田望夫」という偶像を意識していた人が読めば、あーこんなんなっちゃたのねと思わざるを得ない内容だし実際多くの人がいわゆる「幻滅」しているようだし。これはきっとこう意図されて用意されたテクストなんだろうね、と思う方がなんとなく自然に思えるなーとか。


まぁそうは言っても、彼が示唆したWebの姿が変わるわけではないし、それが間違ってたって言う話でもないし、彼の意図したような形には育たなかったけれども、日本のWebサービスはゆっくりだったり蛇行したり余分なものを付けたりしながら、やっぱり日本という特異な社会をそれに沿った形で変えて行ってると僕は思うから。そうしたWebサービスの方向性について、自身の示したビジョンによって色んな意味で引っ張ってくれた梅田さんにはお疲れさま、今までありがとうございました、とお礼を言うと共に、今後は「梅田望夫」という逃げ場を用意せずにそれぞれがそれぞれに取り組んでいくことが求められるのかも知れないなと思った次第です。