Number664 『黄金の世代』は、稀に見る酷さだ。

定期購読こそ申し込んでないが(意志はあるのだけど機会を逸し続けてるだけ)、
購入し、愛読し続けている唯一の雑誌、『Number』。
そのときの、人気の盛り上がりに左右はされるものの、
基本的には、『スポーツ全般を紹介する』という方針に基づき、
文化としてのスポーツそのものを、
多くのフリー・ライターを起用しながら、描き出している。
最近は後続の雑誌もいくつかあるが、
僕個人としては、『Number』さえあればもう、十分満足だ。


『Number』の発売は、隔週木曜日。
最新号は10/19に発売になった、664号。
早速買って読んでみたのだが…

これが、酷かった。
『Number』を買うようになって、優に10年以上経つが、記憶にないほどだ。
ここまで、質の低い『Number』は読んだことがない。


664号の主題は、『黄金世代』について。

『黄金世代』とは、1979年生まれのサッカー選手の世代。
1999年にナイジェリアで開かれた、ワールドユース世界大会で準優勝するなど、
輝かしい実績を誇り、将来の日本を背負って立つと期待された世代だ。
主な選手は、小野伸二、高原直泰、稲本潤一、中田浩二、小笠原満男、坪井慶介、
遠藤保仁、加地亮、本山雅志、酒井友之、播戸竜二など。

黄金世代 – Wikipedia


まぁ、俗にそういわれていることは、
サッカーを少し知っている人なら誰でも知っているし、
選手個人も把握していることだと思う。
だからそれはいいのだが、その主題の設定を意識しすぎたせいなのか、
インタビューの内容が酷すぎる。

小野伸二(田村修一)、稲本潤一(佐藤俊)あたりは、
比較的よく喋る選手であり、ライターもさすがの感じで、
正しく主題を解釈し、“かつて黄金世代と一括りにされていた選手が”、
今何を考えているのか、を、示唆を含みつつ表現できている。


しかし、それ以外のインタビュー…
例えば、高原直泰(木崎伸也)なんて、酷すぎる。
高原があんまり喋らないとはいえ、ライター/インタビュアーとして、
こんな記事を書いてよく恥ずかしくないな、と思う。

インタビュー内の何が一番酷いかというと…結局は、
選手個人に黄金世代と発言させたい、という思いが嫌らしいほど透けて見えることだ。
選手にとって、そうやってひとまとめに括られることは、
誇らしい気持ちがあると同時に、
自分自身を評価してくれているのか、という疑問も生む、
木崎伸也ほどのライターなら、その心情くらい余裕で把握しているはずなのに、
とにかく『インタビュー』の目的を果たすために、
表現を変えて、何度も何度も同じ質問をぶつける。

目的が、意義のあることであれば、そういうインタビューも有効ではあると思う。
高原や、イチローや、野茂なんてのは、そういう『手法』が有効なこともある。
でも、この場合は…『黄金世代』なんて言うメディアが勝手に作った言葉を、
強引に選手に当てはめて語らせるという非常に陳腐な目的でしかなく、
結果、何の収穫もない。

『Number』は選手に昔を回顧させたかったのか?
まだ現役で、しかも、ヨーロッパではこれからシーズンが本格的に始まるというのに?

だとしたら、ジャーナリストも地に堕ちたもんだな、と思う。
読者が望んでいるのは、そんな回顧ではないだろう。
そういうのは、他にいくらでもやるメディアがあるだろう?
TVのスポーツ番組でも、スポーツ新聞でも、下手したら大衆雑誌でも。


同じ雑誌内に掲載されたインタビュー、
例えば、大塚晶則などは面白かった。

そこに、選手の姿が見えるからだと思う。
見たいのは、『黄金世代』なんて言う、バズワードじゃない。
(そう、黄金世代なんて、バズワードだって。)
そもそもそういうテーマそのものが、陳腐で、媚びてる感があるんじゃないかと。
結果、ライターの思考を縛るくらいなら、ない方が良いような。


商業的な意味で、受けを狙っていくのは仕方がないのかもしれないけど、
『Number』には、出来うる限り、
ずっと硬派でいてもらいたいなぁ。

そう思う。