東寺の謎―巨大伽藍に秘められた空海の意図 (祥伝社黄金文庫)東寺の謎―巨大伽藍に秘められた空海の意図 (祥伝社黄金文庫)
三浦 俊良

祥伝社 2001-04
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ブックオフの新書コーナーでたまたま手にとって購入したのだけど、存外面白かったので。


子供の頃に「法隆寺の謎」と言う本を読んだことがあって。今で言う新書なんだろうけど、歴史学者の人が書いたどちらかというとロマンチックな歴史本で、かなり面白かった。本書を手に取った理由は、その本と名前が似ていたからと言う以上の理由はないのですけど、実際に読み始めてみたら著者が東寺の人であることがわかって、「あーこれはもしかして宗教的な本なのか...」と少し残念に思いつつ読み進めてみたらば。

いや、全然そんなことはなかった。

もしかするとそう思われることを危惧されていたのかも知れないけれども、全体を通して宗教的な理不尽さ(「奇跡」といった理屈の無いような表現)は一切無く、あくまで文献資料に当たった上での客観的な歴史の記述になっていて、非常に面白い。「謎」部分で言えば実際問題そう大した謎はなかったけれども、いや、796年に創建されて以来幾度も廃寺の危機を乗り越えながら現在の形になっていること自体が奇跡であり謎であるなぁと、強く思いました。


本書は確かに東寺の歴史をまとめた本ではあるけれども、読んでいる内に「これは東寺を軸に日本史をまとめた本ではないのか?」と思えてきます。いや実際の話、そうだしな...新田義貞軍の矢の跡が残る不開門(東大門)とか、傍若無人で悪辣な「廃仏毀釈」とか(憤りを抑えられない!)とか、もうね、歴史ロマン過ぎます。素晴らしい。



惜しむらくは...

惜しむらくは...著者の三浦俊良氏が、昨年の6月に98歳で亡くなられていること。僕もさっき、Wikipediaで調べて知ったんですけども。最終章で書かれているご自身の人生、もしこれが本当であるならば、若い頃は本当にどうしようもない甘えた子供で、しかしそれが徐々に開かれていくその経験は多分普通の人ではなしえないものではないのかなぁと思っていて、出来れば一度お話を聞きたいなぁと思っていたのですが、それも叶わぬ話のようです。


最終章で著者が書かれている教え、

人間は損した儲かった、好きだ嫌いだ、という世界をいっぺん「   」(カッコ)にいれて、生まれかわった身にならないといけないとおもます。

これはもうなんというか、もの凄く響きました。うん、確かにそうだと思います。そうした思いは消すことは出来ない、かといってそれに身を任せていてはいけない、だから、カッコに入れてその存在は認めつつ自分にとって何が大事か?何をすべきか?を考えながら進んでいくのが大事なんでしょう。

日々、生きていきたいと思います。