マリーシア (光文社新書)マリーシア (光文社新書)
戸塚啓

光文社 2009-01-16
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「マリーシア」と聞いて一番最初に思い浮かべるのは次のようなこと:
  • 勝っている状況で無理をせずボールをただ回し続けて時間を流す
  • チャージを受けていないのに倒れる

僕だけでなくて、プロのライターである戸塚さんでさえそう考えていたくらいだから、多分日本人のほとんどの人は「マリーシア」をそうした、よく言えば「狡賢いもの」悪く言えば「汚いもの」として捉えていると思うけれども、実はそれは違って、「マリーシア」というのはもっと奥が深く幅広い概念的なものなのだ...

本書は、Jリーグで活躍するブラジル人選手を中心にインタビューを重ねる中で、本当の「マリーシア」とは一体何なのか?を明らかにしています。各ブラジル人選手にとっては、「マリーシア」の意味するところとしてそれは比較的自明に近いようなのですが、そういえばそんなこと考えたこともなかったなぁ。


最終的な結論としてはマリーシアとは、
  • インテリジェンスでありクリエイティビティ
  • 発送の柔軟性
  • 勝利に繋がる駆け引き
であると。具体的に彼らブラジル人が何を語り、どんなことを目指しているかは本書を読んでもらいたいと思うのですが(それぞれがなかなか言葉にしづらいと思っているところをインタビューを重ねることとで形にしていく様は、非常に読み応えがあります)、個人的には野球でよく言う「野球センス」のようなものかなと理解しました。

高校野球の強豪校にはそれがありますし、プロ野球でもそれがある選手はチームの要になります。特に野球はテンポがゆっくりした競技なので、マンガや小説などでもその心理描写が描かれることが多く、そうした「駆け引き」の様はまさにマリーシアそのものです。WBCなどで他国と戦った日本代表にもそんな選手が揃っていましたし、チームの勝利という目的の下今自分が何をすべきかを的確に判断し、それを確実に実行していました。

確かに日本人のメンタリティはブラジル人のそれとは大きく違いますし、社会のコミュニケーション方法から見てもマリーシアが浸透しやすいとは思えませんが、野球で出来ていることがサッカーで出来ないわけはないんじゃないかと。松井や長谷部が国内で活躍していたときもマリーシア十分だったかと言われると分かりませんが、しかし、キャリアの途中からでも十分に身につけられる証明でもあります。環境や考え方の転換でそれは身につくんだと。



考えてみれば...自分も日常生きていて「マリーシア」が足りないかもしれません。
もう少し頭を使って上手くやれるような場面で、バカ正直に立ち向かっていって「頑張ったけど惜しかったね」というような。それは「全力を出し切れたからOK」だし「結果だけが全てじゃない」なのですけど、もう少し周りが見えて、「人とは違う方法で上手くやる」ことを模索していれば、結果も伴ったかもしれません。

自分では、自分にもそれなりのインテリジェンスとクリエイティビティがあるんじゃないかと思ったりもするんですけど、結果から見てみれば正直別に何も無いですし、仮にあっても発揮するのを怖がってる。リスクを冒すのが怖い。小心者だから仕方ないんですけど、でもそれじゃあダメですよね...


日本のサッカー選手達と同じように、僕ももっと、「マリーシア」が必要なようです。
どうしたら身につけていけるのかなぁ。