動画共有におけるP2P的側面。

Winnyの登場以来P2P技術というと、
著作権違反なんかと背中合わせな感じで語られることが多くなったけど、
まぁそれはともかくとして従来のサービスとの違いは、やはり中央サーバーが無いということ。

Winnyが開発される前から、
色んなファイルをネットワーク越しにやりとりするって言う環境はあって、
多くの場合は真ん中にそのサービスを提供する会社のサーバがあり、
みんなでそこにファイルを持ち寄って都合するっていう形が圧倒的だった。
在りし日のNapsterなんかはその典型かな?
→ Napster自体はP2Pだったけど、ファイルの管理自体は中央サーバが行っていた。


だけどまぁ書かなくても明らかだけど、そういうネットワークの場合、
中央サーバを叩きつぶせばネットワークそのものが破綻するわけで。
違法なファイル交換を監視する方も凄くやりやすかったと思うのだけど、
Winnyを始めとした分散型ソフトウェアの登場で、その手法は使えなくなった。
今や全てのソフトウェアがサーバになりうるわけで、ネットワークそのものが中央サーバであり、
使用者が一人でもいる限り、そのネットワークは維持されてしまう。
なんということでしょうね。


まぁそんなわけでファイル共有に当たっては、
そういう明確なサーバを持たない形が主流なのだけど、
共有するだけでなくて、視聴するようなサービスの場合にはそういうわけにはいかないわけで、
1つのサーバにみんなで持ち寄ってみんなで共有すると言う形は未だに現役。

YouTubeもそうだし、もちろんニコニコ動画もStage6もVeohもそう。
考え方によっては、GoogleやYahoo!の検索システムもそう。
まぁその方が色々管理しやすいんだろうけどね。


そう、なんだけどさ。

この状況をぼんやり眺めてて思ったのは、
サービス単体としては確かに中央のサーバを中心としたクローズドなネットワークなんだけど、
それはあくまでサービスを中心にした視点によるもの。

そうではなくて、ある動画を共有したいと思ってるユーザ群の方から見てみると、
そのサーバ(例えばnicovideo)は決して唯一無二の選択肢ではなく、
他のどんなサービスであれアップロードさえ出来るのなら何でも良い。
Yourfilehostなんて、検索が役立たずなせいで実質的にただのアップローダーだけど
それでも重宝されてるのはそのせい。

そういう意味で言うと、このユーザ群のネットワークを無効化するために、
叩きつぶさなくてはならないサーバの数ってのはホントに無数にあって、
多分全部をきちんと網羅するのは不可能。

ユーザ群の中ではそれぞれのリクエストに従って、
適切なサービスを通して動画をやりとりするようなそんなシステムが動いているようにも見える。
言ってみれば各動画共有サービスは、ユーザ群から見ると1つのノードに過ぎず、
そのサービスにアクセスすることは、そのサービスに参画すると言うよりはむしろ、
リクエストを送っているだけ、っていうような感じ?


決して技術的分析に基づいた概念ではなくて、
むしろコミュニティ全体を実際の技術に模して表現してみただけなのだけど、
世の中に溢れている動画共有サービスと、
それらを使って動画をやりとりしようとする人たち全体の様子って、
なんだか、P2Pネットワークに似てるというか…
外部から制御不可能で、サーバとなりうるノードは無数にあって、
実際にそれを利用して非常に多くのアクセスが生まれていて…みたいな。


この流れはきっと、著作権法をどれだけ厳しく改正しても変わらないと思う。

良いか悪いかは別にして、そこに要望がある限りそのネットワークは存続し続けるし、
そこにネットワークがある限り、それに付随した活動は行われ続けるし、
現在まだ特定のサービスである動画共有が、今後技術的な問題の解決を見て
より低い閾値(支出を補うための収入を気にしなくて良いレベル)で提供されて、
『不特定の』サービスになったとき、
今現在の中央サーバ的な捉え方で作られた著作権管理は全て崩壊するんじゃ無かろうかと。


そんなことをぼーんやり考えてみたのでした。