非正規雇用の多い職場における「社員」てただの会社員のことではないのよね

学生時代にアルバイトで働いた経験を考えてくれれば大体わかるとは思うのですけど、「社員」てのは文字通り企業に採用された人間と言うことでは無くて、多くの場合は「幹部社員」的な意味を持ちます。非正規雇用に比べて給与や福利厚生が厚い一方で、課せられる責任が重かったり、労働時間が長くなったりします。店頭スタッフの大量辞職で脚光を浴びた「すき家」を運営するゼンショーの「階級ピラミッド」が解りやすいでしょう。 11_01.jpg (「キャリアステップについて | 【公式】「すき家」ではたらく!」から引用) すき家の分類では、店長、複数店舗を担当する人間ですら非正規雇用(契約社員)であり、正社員はその上のランクに位置づけられています。さすがにこれは正社員の比率が低すぎるだろうと思いますが、でも「社員」とそれ以外のランクの差、大きさについてはどこも大体こんなもんでしょう。

続きを読む

「良いこと」も「悪いこと」も受け入れてみた

半年間お世話になっていた間、僕の目から見て「良い」と思うことも「悪い」と思うこともたくさんありました。レストラン経営というのはただ料理を作れば良いわけではなくて、お客様のこと、お金のこと、仕入れのこと、従業員のこと……やることが一杯あります。人間には良い部分も悪い部分もあるので、時には店に対して良くない影響を与えることもあります。僕自身の仕事に対する倫理観からすると、「目に付く「悪いこと」は訂正し改善していくのがスタッフとして当然のあり方」なのですが、今回はそれを採用しませんでした。

続きを読む

料理と握力の関係、または筋トレの意義

自分ではそれほど意識していなかったのだけど、左手に比べて右手の握力がかなり低いみたい。しかも小指があんまり自由に動かないので余計に力が入らなくて、料理をする上でいくつかの作業に支障を来していました。例えば、包丁をきちんとハンドリングするとか。包丁は親指とひさし指で刃を支え、その他の指と手のひらで固定して使うのだけど、僕の場合このホールドが甘いらしくて堅いものが切りにくかったり、自分が切りたい場所を上手く切れなかったり(=みじん切りの幅が揃わないとかスピードが出ないとかいう感じで表れる)してました。 多分どんな「手に職」系のお仕事でも同じだと思うのですけど、こういうときに言われることって「すぐには出来ないから」「時間を掛ければ出来るようになる」。それはもちろんその通りで、技術の習得というのは始めた次の日に上手く出来るようなものでは無いのですが、「なぜ上手く出来ないのか?」と考えて原因を整理してみると、その中には上で挙げた「筋力不足」のような物理的に不足していて練習でカバー出来るような要素も含まれていることがわかります。もちろんそういう筋肉の充実も含めた「時間を掛ければ」なんですが、でもそれってね、野球で言うところの「投げ込みを繰り返すことで肩の持久力を作る」みたいな話と同じなんですよね。 現代野球の投手のトレーニングにおいて、数多く投げ込むことがいつでも有効であるわけではないというのは常識です。むしろ肩は消耗品なので如何に消耗させずに、ピッチングに必要な筋肉を鍛えていくか。もちろんフォームを作り上げ固めたり、コントロールを鍛えたりする目的でのピッチング練習は必要になるのですけど、ピッチング練習は必要なだけにとどめて、極力ピッチングさせずにかつ調子を整えるというのが投手のトレーニングの主流であろうと思います。特にMLBでは。つまり、投げ込みで筋肉が付くのは正しいとしても、その筋肉を付けられるのは投げ込みだけではないという考え方で、「投球数と怪我には関連性がある」というデータに基づくものです(参照)。 もちろん料理はピッチングと違うので、包丁を握る機会を極力減らす必要なんて別に無いのですけど、でも包丁を握るよりも効率的に不足した要素を補う方法はあるわけです。握力が足りなくて包丁の保持が上手く行かなくても、何万回と包丁を使えばきちんと包丁を保持出来るようになるでしょう。それは修行の成果ではありますけど、でも例えば握力のトレーニングを平行して行えばそれが何千回で実現出来るかもしれないわけです。フライパンの修業として「フライパンで砂を振る」というのもそうですけど、フライパンを手に馴染ませるにはたくさん握るのがいいとしても、それとは別に筋トレ(例えば上腕二頭筋)を取り入れても良いんじゃないのと思ったりします。「意味のないことを延々繰り返す」という精神修養の意味もあるのでしょうけど、そういった感じが、プロ野球の一昔前のトレーニング概念に似ているなあと思ったのでした。

ちなみに

握力を鍛えて2ヶ月くらいたって、右手の握り込みが随分変わったのを感じています。その間もちろん包丁も数多く握りましたけど、多分それだけではここまで右手小指に力が入るようにはならなかったろうな。それだけで料理が上手くなるわけじゃないですが、そういうことも大事なんだろうなと改めて確認しました。「4月から高卒で料理人の道に入ります」みたいな若者とは違って、これからじっくり30年修業出来るような人間では無いからなあ、僕は。

続きを読む

初めての確定申告をしてみた(申告書作成編)

確定申告に来た人のイラスト

社会に出てからこの方ずっとサラリーマンで副収入もなく「確定申告」というものにはとんと縁が無かったのですけれど(父親は自営業なので青色申告してましたが)、ひょんなことから会社を辞めることになったその年度末ということで確定申告をする必要が出てきました。 当初は、この辺の規定を読んで「確定申告する必要は無いかな(面倒だし)」と思っていたのですけど(強調は僕)、

【確定申告・還付申告】|確定申告期に多いお問い合わせ事項Q&A|国税庁

ロ 給与を1か所から受けていて、各種の所得金額(給与所得、退職所得を除く)の合計額が20万円を超える ハ 給与を2か所以上から受けていて、年末調整をされなかった給与の収入金額と、各種の所得金額(給与所得、退職所得を除く)との合計額が20万円を超える ※ 給与所得の収入金額の合計額から、所得控除の合計額(雑損控除、医療費控除、寄附金控除及び基礎控除を除く)を差し引いた残りの金額が150万円以下で、さらに各種の所得金額(給与所得、退職所得を除く)の合計額が20万円以下の方は、申告は不要です。

まず初歩的な勘違いとして、これが解ってなかった。
  • 確定申告は1月から12月までの収入等について行う
年度毎だと思ってました……休職したの5月の頭だからほとんど収入ないよね?いやいや、年度毎だったら2月3月の分どうすんのよ。あほか。というわけなので、普通にする必要があるよね。あと、
  • 「いやでも大してメリット無いんじゃないの?」→「源泉徴収の還付金、かなりバカにならない」
と言うこともあって、いやあ、やらなきゃダメだなと。 事業主でもないし収入構造が複雑なわけじゃないし経費で落としたいものがたくさんあるわけでもないし収入少ないし、思いついたらやってしまおうということでやってみました。レッツ確定申告。

続きを読む

どんな仕事をしてどんな給料をもらうか

薄給の作業員の不満に対して「誰でも出来る作業なんだから給料安くて当たり前」というのはまま見掛ける意見でして、僕自身も反対はしない。人の仕事に対しても、自分の仕事に対しても思う。だから「誰でも出来る作業でありながら自分でしか出せない違い」というのを作って実績を積み、その実績を元によりよい給料をもらえるようにするという方向に行くわけだけど、これを「自分にしか出来ない仕事をする」と勘違いすると「自分にしか出来ない仕事してるから良い給料を」みたいになって、ちょっと違うことになるよね。アーティストとか職人とかであればそれで良いんだけど、一般的な会社員というものは基本「自分以外の誰にも出来ない仕事」というのは無いわけで、もしそういう場所が社内にあったとしたらそれは会社としては明らかにリスク。会社に対してリスクになっている部分を積極的に評価するのは難しいわけで、逆にそういうリスクを減らすことこそ評価したい。でもそれで「そうか、それじゃあ自分だけがしている仕事を誰でもやれるようにしました」みたいにすると実際には評価が下がるわけで、「誰でもやれる」と「誰がやっても同じになる」との間には大きな差があるにもかかわらずあんまり考慮されないために、やっぱり「誰でも出来る作業なんだから給料安くて当たり前」という意見に落ち着いてしまい、なんだよ給料上がらないじゃねーかよどういうことだよみたいになるっていうのがあって、まあ要するに言うと、会社としては安い給料は安いままにしておきたいってことです。身も蓋もねえ。 ……というのを、このツイート見掛けて思いました。

組織に与える価値なんぞクソ食らえだと思います。 真実かも知れないけどどうせ薄給維持の言い訳にしか使われないんだよ。

続きを読む

レストランの仕事は覚えゲー

「なんでも仕事は覚えることから始まるだろ」 それはそうなんですけど、なんですかね。マニュアル対応できる部分や、パターン化できる部分が少ない気がするんですよ。例えばホールの仕事なんか顕著だと思うんですけど、基本的な仕事の流れはあるにしても、当然お客様は皆同じではないので、「こういう場合はこうするのがベター」というのがお客様の数だけあるわけです。この間はこう対応したから今度もこれで正解、とは言い切れないような。相手が若者かお婆ちゃんかで変わるし、出している料理がアヒーヨかパエリアかで変わるし、夏か冬かで変わるし、17時か22時かで変わるし、その日儲かってたかどうかで変わるし、明日定休日かそうでないかで変わるし……理想はあらゆる「パラメータ」をぶち込んでパターン計算して正解を引き出すことだけど、実際にはそんなのは無理で、1回1回シチュエーションとセットで正解を覚えていかなくてはならない。お婆ちゃんがパエリアを夏の17時に食べるから、スタッフが取り分けてあげる……みたいな感じで。 2つ、3つサンプルを集めるとパターン化できるような気がするんだけど、その程度のパターンではすぐに破綻してしまい、特例だらけになってしまう。結局は、覚えられるだけ覚えて、引き出しに入れられるだけ入れて、なにか対応すべき状況に出くわしたとき、引き出しの中にかならず対応するパーツが入っているという状態にしなくてはならない。簡単に言うと、考えたところで正解にはたどり着けないし、百歩譲ってたどり着けるとしても考えていたのでは時間が掛かりすぎて良いサービスにはならない。 つまり要するに、覚えゲー。覚えていないといけない。事務仕事というのはたいていの場合、もっと簡単にパターン化できるものだけどなあ。コンビニやファミレスの接客もしかり。でも、きちんとしたサービスを提供するなら違う。色んなことに気付いて、色んなものを引き出しに入れていかないと。今は出来なくても明日は出来るようになっていかないと。

続きを読む

出来ることと、出来ないこと ―― 指導するときの「見積もり」、指導される時の「整理」

新しいことに挑戦しているとき、次のような葛藤が生じることがあります。

  1. 自分自身が作る「そんなことは自分には出来ない」という壁が成長を邪魔しているのではないか
  2. 出来ないことを要求されすぎて、どれを最優先にやっていけば良いのか混乱しているのではないか
一般的には、「モチベーションが高そうに見える」という理由で1が支持されることが多いでしょう。すなわち、「自分には出来ない」という壁を作らず、なんでも積極的に新しいことにトライしていくべき、と。それが出来ないのは歳を取って色んなことを知りすぎているからだ、というのも事実であろうし、年を重ねてから始めることの成長が遅い理由の1つでもあろうと思います。 ただ、大学時代の人馬の調教から始まって、色んな指導する人/指導される人のコンビを興味を持って見てきた僕の経験で言うと、その「なんでもトライしていく」姿勢をポジティブに捉えることが出来るための一番の要因は、本人ではなく、その指導者が状況をきちんとコントロールできていることです。与える課題が多すぎず少なすぎず、本人の能力を少し超えたものをちょうど良く与えているという状況があってはじめて、無心でトライしろ、ということが可能です。 逆に言えば、指導者が適切に状況をコントロールできていない状況での「なんでもトライしていけ」というアドバイスは、それは単なる戦術無き精神論であり、成長のための指針ではありません。本人に「混乱の芽」が生じていることを見て取って、課題や優先順位を整理し、状況をよりシンプルにしてやることが必要です。 「これが出来るべき」「出来て欲しい」という要求も大切ですが、大事なのはそれが本人にとってどれくらいのレベルの課題であるかを測り、要求を我慢すること。上手く行っていない指導の過半はその要求が過大で、指導される側が混乱するか、自信をなくすか、モチベーションを落とすかという状況になっていると感じます。もちろんレベルの見積もりを誤って課題が甘過ぎても(要求が過小すぎても)それは良くないわけですが、指導者には通常「よく出来る人」がなることもあって、要求が過大になることが多いです。「これが出来たらあれも出来るようになる」と考えたくなる気持ちは解りますけどね。でもそれは出来る人であるから見えることで、目の前のことを1つずつ処理している人間には見えないことです。 指導される側に回ってみると、自分に課されている課題が1なのか2なのかはっきりとは自覚できないのですが、それでも指導者が状況をコントロールできているかどうかは、少し見えます。真面目な人であればあるほど、自分の状況を無条件に1だと判断して、闇雲に頑張ってしまいがちなのですが(僕もそれで疲れてしまったことがこれまでに何度も)、出来ることと出来ないことをきちんと整理し、自分にとって必要なことを取捨選択しながら、1つずつ課題をクリアしていくようにすることが大事だな、そう思う日々です。

続きを読む

「シエスタ」のある生活に対する印象の違い

ヨーロッパではランチに1時間とか掛けるし、スペインではシエスタ(午睡/昼寝)の時間があるし、朝から晩まで場合によっては昼休みも切り詰めてきりきり働いてる日本に比べて優雅で良いよね、なんて思っていたのですけど、スペイン人の働き方をあれこれ聞いてみた結果、別にそれで労働が楽ってわけじゃないっぽい。 昼休みが3時間ある場合の1日のタイムスケジュールは、こんな感じ。

  • 朝9時 …… 出勤
  • 昼13時 …… 午前中の仕事終わって帰宅、昼食、シエスタ
  • 昼16時 …… 再び出勤
  • 夜20時 …… 定時、退勤
昼休みが3時間ある分、単純に拘束時間が長くなるんだね。それだけ。 実際に働いてるときには、間にシエスタが入ることで「4時間ずつの仕事になるから気分的にはすごい楽で、まだかまだかと短い感じしてた」と言ってたけど、うーん、習慣の問題ではあるんだろうけど、僕だったら昼休み1時間で良いからさっさと終えて家に帰りたいなあ。あとにやることが残った状態でのんびりするのはあんまり好きじゃない。でもスペイン人はそうじゃないんだな。シエスタ込みで、その長い仕事の時間を楽しむということなのかしら。 僕ら日本人はシエスタのことを「余り働かない」という印象で見ているけれど、スペイン人のシエスタの印象はそうではなくて、シエスタは「よく働くこと」の証。労働時間が短くなるわけじゃなく、「朝から晩まで一日中よく働くからそのために昼間少し休む」んだと。昼寝ってなんか優雅な印象があるんでいまいちピンと来ないけど、そういう文化なのだろうなあ。シェフに「今の君はスペイン人みたいな働き方だね」と言われて褒められてるのか注意されてるのか解んなかったんだけど、どうやら朝早く起きて別の仕事して、仮眠取ってレストランに来るっていう長時間労働を「スペイン人みたいに頑張ってる」と言ってもらってたみたい。 ああ、感覚が違うなあ。

続きを読む