煙草の炎の揺らめき
部屋の灯りを消して煙草に火を付ける。 ふう … …。 真夜中の一服。 昼過ぎに降り出した雨は、時折、勢いを強めたり弱めたりしながら 街灯に照らされたアスファルトの上に 静かに撫でるように、しとしとと降り続く。 滴がトタン屋根に落ちる音が、不規則に混ざり 風は穏やかに雨の臭いを室内に運ぶ。 ふと、煙草に目をやると、 白い灰に覆われた内側で、ゆらゆらと炎が揺らめいている。 内側で揺らめく炎は、紙巻き煙草の真っ白な外装を 舐めるように灰に変えていく、 左から右に、手前から奥に、ゆらゆらと上下に揺れながら、 黒と白の混じり合う、炎の殻を作り上げていく。 炎が完全に通り過ぎた先では、 熱を失った真っ黒な抜け殻が、少しずつしなりを持ち やがて、、、落ちる。 炎は、外装を求めて内側をじんわりと進みながら 淡いグリーンで描かれたゴシックの銘柄を飲み込んだところで フワリと消える。 また、出逢う時まで。