で、なにができるの?
その昔、メトロで、若い男、若い女をたくさん引き連れた、 女性(おばさん)に出会う機会があった。 女性はどうやら美容室の経営者で、 若い男女はそこの従業員のようだったが、 彼女が強い権力を持ち、容姿や性格を含めて全て、 彼女の好みで統一しているのは明らかだった。 どうして彼女と会話をすることになったかは記憶が曖昧だが、 彼女は僕を見て、僕をそばに呼び、話を始めた。 僕は少し酔っぱらった頭を抱えたまま、 なんでこんなおばさんに自己紹介を…と思いつつ、 簡単にプロフィールを話す。 そして、一通り話が終わった後、彼女は、こう言ったのだ。 『で、なにができるの?』 学生にとって、こんな酷な言葉はない。 ほぼ若いだけが取り柄なのだし、手に職があるわけでもない、 実際、街角でいきなりそういわれても言葉に窮する人は大勢いるだろう、 社会人だって怪しいものだ、 しかし彼女は、僕に対してそんな言葉を投げかけてきたのだ。 ただでさえアルコールが入ってる上に、生来のアピール下手。 そもそも、アピールしたかったわけでもない、 そっちから見ず知らずの男を呼んで置いて、それはないだろう… 当然のように言葉に詰まる僕。 その後の展開はすっかり忘れてしまったが、 恐らく嫌気がさして、フロアのどこか離れた場所へ移動したのだろうと思う。 今でも、そんな言葉をいきなり投げかけられたら、 言葉に窮するだろうし、不快になるに違いない。 ただ…その言葉の持つ意味は、昔よりよく分かるような気がする。 君は何が出来るの? ぶしつけに聞かないだけであって、結局、世の中はそういうことなのだ。 僕らはそれを示さなければならないし、 それに応じた評価を得る。 ま、他人の評価なんて別にどうでもいいけどね。 ただ、自分による評価だけは絶対に無視できない。