ワグネルさえ叩けばロシアの戦闘力は大きく減退する、そんな風に考えていた時期が僕にもありました

モンゴル帝国の最大版図と各ハン国地図 ©世界の歴史まっぷ
ロシアの正規軍は軍律を損ない、装備は最新鋭でも練度やモチベーションが低く戦闘力は対したことがない……と聞かされていたんですが






ワグネルを倒せば終わりじゃないの?

ウクライナ東部バハムトはウクライナ軍とロシア正規軍+民間軍事会社ワグネルの合同軍の戦いが続いており、ワグネルが成果を上げたと主張する一方でウクライナ軍は反攻を始めたと主張しており、先行きが混沌としています。ただ報道ではウクライナ軍の猛反撃を受けてロシア正規軍は後退(ロシア曰く戦略的撤退)したことになっており、残るはバハムトの主要部分を押さえているワグネルのみ。しかしワグネルは長引く戦闘でかなりの損失を出している上に現在は逆にウクライナ軍に包囲されている状態とも。


ロシア正規軍がいなくてワグネルも壊滅状態なら、ワグネルさえ叩けばロシアの戦闘力は大きく減退し戦争は終わりに近付くのではないか……そう楽観的に考えていたんですけど、ロシア国内の混沌はどうやらそんな生やさしい状況ではないようです。



範馬刃牙


さしずめ戦国時代・前夜

本来、雇い兵組織は法律で認められていないのだが、実はロシアの民間軍事会社はワグネルだけではない。公開情報の収集分析を行う国際企業「モルファー」が4月下旬に公表したリストには37の民間軍事会社が名を連ね、このうち25社がウクライナで活動しているという。

プーチン体制崩壊の予兆か?ロシアで「民間軍事会社」乱立の3つの事情 | TBS NEWS DIG (1ページ)


え、ロシア軍と結び付いている「民間軍事会社」ってワグネルだけじゃないの?ワグネル創設者プリゴジン氏が特別で、彼がロシアの悪意を代表する存在なのかと思っていましたが、全然そうじゃなかった!わかっているだけで37社もあってそのうち25社がウクライナに参戦しているとは……それってもうロシア正規軍より多いんじゃね?


しかも、有力政治家や富豪、果ては有力軍人までが私兵を兼ねた民間軍事会社を持つ始末。


例えば、ロシアが2014年に併合したクリミア半島の首長、アクショノフ氏が資金面等で支援する民間軍事会社「コンボイ」。約3000人いるという戦闘員にはワグネル出身者もいて、ロシアの主力戦車T80やT90、航空機を保有している。

(中略)

最近注目を集めているのは、ロシア最大の国営天然ガス企業のガスプロムが設立した民間軍事会社で、「ポトーク」「ファンケル」「プラーミャ」という複数の会社の存在が明らかになっている。

(中略)

プーチン大統領に近いオリガルヒ=新興財閥のデリパスカ氏とティムチェンコ氏がスポンサーになっている民間軍事会社「レドゥット(リダウト)」もウクライナ侵攻に戦闘員を派遣している。

(中略)

また、興味深いのはショイグ国防相までが「パトリオット」という民間軍事会社を立ち上げていることだ。ウクライナ東部軍の広報担当官は去年12月、ドネツク州南東部のウフレダルでパトリオットの部隊がワグネルと競う形で活動していると指摘していた。

プーチン体制崩壊の予兆か?ロシアで「民間軍事会社」乱立の3つの事情 | TBS NEWS DIG (1ページ)


この光景、三国志の黄巾の乱で描写された後漢の風景にそっくりな気がします。日本の戦国時代だって、元はといえば室町幕府の勢力が弱まり各地の守護代(地方警察などに相当)が経済力を蓄え私兵を持ったことが始まりなわけで、もし仮になんらかの形でプーチンが退陣して権力的な空白が出来た場合、最初は側近が権力を握るかも知れませんが、軍事力による権力争いが生じてロシアが分解することがあったらそれはもう完全に歴史小説もの。



そもそもロシアとは

ロシアの正式名称は「ロシア連邦」であり1つの堅固な組織と言うよりは1つの中央政府と多くの行政組織の寄り合いなわけで、


ロシア連邦は、89の連邦構成主体と呼ばれる地方行政体からなる連邦国家である。連邦構成主体としては、48の「州」(область oblast’)、9の「地方」(край kraj)、3の「市」(連邦市、город федерального значения gorod federal’nogo znacheniya)、24の「共和国」(республика respublika)、1の「自治州」(автономная область avtonomnaja oblast’)、4の「自治管区」(автономный округ avtonomnyj okrug)がある。ただし、このうち6つの連邦構成主体(ドネツク人民共和国、ルガンスク人民共和国、ザポロージェ州、ヘルソン州、クリミア共和国、セヴァストポリ連邦市)はウクライナと帰属係争中である

ロシア – Wikipedia


これが89個に分裂するは言い過ぎだとしても、5個ぐらいに分裂するようなことがあっても驚きではないです。もしそうなったらきっとみんな、チンギスハーン亡き後のモンゴル帝国の図版を思い浮かべるんだろうなあ。まんまだもの。



モンゴル帝国の最大版図と各ハン国地図 ©世界の歴史まっぷ
引用元:モンゴル帝国の解体 | 世界の歴史まっぷ



例えば今のロシア連邦が、キャプチャク・ハン国(現在のロシア)、オゴタイ・ハン国(ウラル山脈あたりのオリガルヒ)、チャガタイ・ハン国(中央アジア諸国)、元(親中傀儡国家)なんて感じに分割されて、キャプチャク・ハン国は戦争で負けて大人しくなったけど中央アジアの2国は逆に軍事力を付けてめんどくさい存在になり、東の方は中国に食われて中国がますます肥大化する的な。ウクライナ戦争は終わるけどロシア情勢は混沌として平和から遠ざかりそうですよね、、



真の意味で歴史を見ている気がします

それもなんか人間が繰り返してきたダメな部分で、多くの反省を経て現代社会では克服しつつあると信じられているような部分が、これだけわかりやすく目の前に提示されてしまうと、人間って変わらないんだなと思ってしまいます。先進国や発展途上国でも近代化している国ではもう「無くなった」と思われるようなことが、リーダーが誤った判断をし情勢が少し変わっただけで顔を出してしまうと言うね。圧倒的強者といわれるアメリカだって、いつ分裂してもおかしくはないし。。


歴史から学ぶべきことはまだまだあるのですね。人間はそう大きくは変わらないのだなあ。