刑事さん再び
前回は刑事さんが自宅にやってきて資料を見ながら参考人として話を聞くという時間でしたが、今回はこれまでの話を供述調書にまとめて確認、署名するという話でした。流れとしては、こんな感じ。
- 持参されたノートPC上に仮打ちされた供述調書を読み合わせながら、事実と異なる点や修正したいところを確認しつつ、随時更新
- 供述調書内に資料(過去のECサイトをプリントアウトしたものなど)の提示があれば、それを確認
- 全て読み合わせて問題なければ持参した小型プリンタで京都府警指定の用紙にプリントアウト
- 供述調書に署名、捺印
- 添付の資料それぞれの1枚目に署名、資料全てのページに対して前後の頁間で割り印(1ページ目と2ページ目、2ページ目と3ページ目)
- 捜査協力金の受領と署名
供述調書の確認
供述調書は時系列に沿って書かれていて、話をスムーズにするために僕の感想や背景の説明なども書かれています。大体は僕が口にしたことで間違いありませんが、そうではない刑事さんの想像による記述もあり、そういう部分については細かく確認が入ります。それが事実と違っている場合には訂正をお願いし、まあ大体合ってるという場合にはそのままにしました。悪気があるわけではないけれど、それでもやはり警察側には警察側が作りたい「ストーリー」というのがあり、今回の場合僕は容疑者ではなく参考人ですから、容疑者の犯罪を立証するためにここでこういうコメントがあると嬉しいみたいな警察側の思惑みたいなものももちろんあります。誘導質問的な形で聞き出すときもありますし、その旨を正直に語られてどうですか?と聞かれるときもある。
僕としてはぶっちゃけ自分に火の粉が降りかからなければ某自転車販売店がどうなっても構わないんですけど、だからといって警察の思惑に乗ってやる義理はありませんし、過剰なことを語っても仕方がないので、淡々と事実だけを述べ、記憶が曖昧な部分については供述を避け、意図せず断定的な書き方をしていた部分については修正してもらいました。なにせ7年も前のことですからね。細かいことなんて覚えてないですよ。当時は、その後に行く居酒屋での仕事の方が自分にとっては何万倍も重要だったので。
ともあれ、おかげで概ね僕が意図する調書にはなったかなと思います。
小型プリンタ持参
調書が出来上がってこれどうすんのかなと思ったら、大型のカバンからおもむろにキヤノンの小型プリンタ登場。マジッスか。多分これの何世代か前のヤツ。ポータブルって書いてあるけどそれでも重量2kg。僕が警察署に出向いていれば署内のプリンターでプリントアウト出来たんでしょうけど、家に来てもらったせいで彼は車を止めた京都府警からここまでこれを持って徒歩で。マジでご苦労様です。申し訳ない。
署名は良いんだけど割り印が超だるい
警察が勝手に資料を入れ替えないように、資料全てに割り印を入れるんですよ。4ページで1つの資料になっていたとしたら、1ページ目に現在日時(和暦)と署名、1ページ目と2ページ目、2ページ目と3ページ目、3ページ目と4ページ目に割り印。ページ数が増えれば増えるほど割り印の数も増えていくので、資料がたくさんあるとすごい大変……まあ、不動産契約とか銀行手続きとかほどはきちんと印字できていることを求められないので、その点は気が楽ですけどそれでも大変。いやあ、こういうのも全部電子署名にならないかなあ。
どこぞの会社がWordファイルに添付させている印鑑風の画像ファイルではなくて(そんなの押印でも何でもねえ)、カードリーダーでマイナンバーカードを読みこんで暗証番号を入力すると、捜査資料の変更がロックされるみたいな仕組みとか。供述調書も同様に。ECサイトを全部プリントアウトするとか無駄も良いところだと思うんですよ……仕方ないけどさ。現場の刑事さんには罪はなく、変えることも出来ないし。
捜査協力金いただきました
まあ大した額ではないです。夫婦でラーメン食べに行けるかなぐらい。目の前で刑事さんが古いノートPCと古いプリンタを使ってて、話をするだけで幾ばくかの警察予算をもらうというのはちょっとなんかなと思ったんですけど、お役所仕事ですからここで僕が辞退したところでそれがプリンタの更新に使われるわけもなく、有り難くもらっておくことにしました。で、もらうに当たっても、刑事さんの名前と金額、日付、住所、氏名の入力が必要(押印の必要はなし)。いやあ面倒くさい。この日、僕は多分一生分の「令和」を手書きしたような気がします。基本的に西暦派の人間なので。
他の人に話を聞いて疑問点が出てきたら確認の電話をするかも知れませんとは言われましたが、ともあれこれで一区切り。お疲れさまでした。
ちなみに:何が問題なのか
「電動アシスト自転車」について知っている人がいたらある程度想像が付くと思いますが、問題は販売していた「電動アシスト自転車」に、- ペダルを漕がなくてもモーターを回すことが出来る
- 法律で定められた速度「24km/h」を超えたスピードを出せるようになっている
という2つの機能があったこと。この機能が付いた車両は自転車ではなくバイクの扱いになります。で、この車両を販売すること自体は問題がないそうです。だからそれは取り締まれない。しかし一方でこういう「自転車」が販売されることで事故が増えているのも事実なので、警察としてはなんとか流通量を減らしたい。というわけで考えたことが、
- 電動バイクを「電動アシスト自転車」であると誤認させて販売することは不正競争防止法に当たる
ということのようでした。最初はそんな大げさなと思いましたが、よくよく考えてみれば買う方は確かに「電動アシスト自転車」だと思って買うわけですけど、実際にはそうじゃない。「電動アシスト自転車」だと思って買って乗ってたら、ある日警察に止められて道路交通法違反に問われるということもあり得ます。
またECサイト上では「防犯登録付けます」「TSマークと個人賠償責任保険加入できます」と書いてあるけど、自転車じゃないから防犯登録シールを貼ってはいけないし、自転車用の品質保証もそれに基づく保険にも加入できない(実際事故ったとしても保険金は下りない)。法律上公道を走れる車両でもないから、「街乗りラクラク」とか「通勤に使えます」とかも事実と異なります。公道を走るにはウィンカーなどを取り付けた上でナンバープレートを付けないとダメ(今話題のLUUPとかそんな感じ)。
そういうことを考えると、確かに「電動アシスト自転車」と偽って売ることには消費者保護の観点方見ても、いろいろ問題がありますね(交通課の仕事じゃない気はするけど)。
会社側は知ってた
しかも問題となっている車種の取扱説明書を見て見ると、下ボタンを長押しすると、後輪モーターが回転します。モーターの動作確認時に使用します。
★動作確認の際には、必ず後輪を持ち上げて操作を行なってください。
6kmボタンを長押し(2秒間)すると、前輪モーターが作動します。モーターの動作確認時に使用します。
★動作確認の際には、必ず前輪を持ち上げて操作を行なってください。
といったような記述があり、「商品に法律上の問題があることは把握していたが、使用方法を指定することで電動アシスト自転車として利用できると考えていた」と受け取れそうです。24km/h以上出せるとは書いてありませんが、実際に街で40km/hぐらいで走ってる某自転車販売店の車種、見掛けますからね。アレはヤバい。当然のようにノーヘルだし。そういうものを販売してしまっていることの社会的責任について、社長はもう一回考え直した方がいいと思いますね。
……でもまあ、あ、これは供述してませんけど、社長はもともと山師みたいな人だからなあ。どういう売り方してたとしても僕は驚きません。「グレーはまだ黒くない」とか言いそうな人だしな。
襟を正して正しい業務に戻ってくれることを期待しておきます。知らんけど。