【今日のニュースから】朝日新聞が購読料を大幅値上げ



朝日新聞社は10日、朝夕刊セット版の月ぎめ購読料を7月1日から363円値上げして税込みで4400円にし、朝刊のみの統合版は407円上げて3500円にすると発表した。消費税増税時を除いて値上げは1993年12月以来、27年7カ月ぶり。販売・広告収入が減る中、経営努力が限界に達したという。

 朝刊1部売りは150円から160円、夕刊は50円から60円に上げる。

朝日新聞、27年ぶり値上げ 7月、月ぎめ4400円に | 共同通信


363円値上げして4,400円になるということは、これまで税抜3,670円だったのが4,000円になるということであり、約9%の値上げ。消費税が大幅に上がるでもしない限りなかなかそこまでの大幅な値上げってないですよね。購読料上げれば当然発行部数は減るし朝日新聞もそれは解っていると思うけれど(だから我慢してきたんだと思うけど)、だからこそ本当に「経営努力が限界に達した」んでしょうね。そんなに苦しいのか。



先月末に2021年3月期の決算短信が出たらしいのですが、確かに苦しそう。


朝日新聞社が26日発表した2021年3月期連結決算は、純損益が441億円の赤字(前期は106億円の黒字)だった。赤字額は1879年の創業以来で最大。売上高は前期比16.9%減の2937億円で、同社は「新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けた」と説明した。

 売上高は、新聞などのメディアコンテンツと不動産の両事業で前期を下回った。赤字は11年ぶりで、将来の利益を前提に税金の前払い分を資産計上している「繰り延べ税金資産」を取り崩したことも響いた。本業のもうけを示す営業損益も70億円の赤字(前期は23億円の黒字)だった。

朝日新聞、赤字441億円 過去最大「コロナ影響」 | 共同通信


前期に比べて純利益が550億円も減ってるわけで……どうしてそこまでなる?東洋経済の記事によると新聞などのメディア・コンテンツ事業の赤字を不動産事業が支えており、不動産事業が赤字にならない限り大丈夫という話なんですけど、新型コロナウイルスの影響でそこまで不動産事業がマイナスにナルってことあるんだろうか。


朝日新聞社が公表している財務データを見ると、朝日新聞社という企業は新聞社でありながら、不動産事業で安定した利益を上げていることがわかります。

具体的に2020年3月期の決算データでは連結従業員数6174人が関わるメディア・コンテンツ事業(新聞はこの中に含まれます)の売上は3345億円、セグメント利益は19億円となっています。

一方で不動産事業は売上高385億円、セグメント利益は68億円です。コロナでオフィス需要が今後どうなるのか不安な昨今ではありますが、一般論でいえば朝日新聞社が行っているオフィスビルの賃貸事業は長期安定ビジネスです。構造的にはメディア・コンテンツ事業の長期凋落に対して、不動産事業の安定利益が下支えしていることになります。

朝日新聞「創業来の大赤字」のとてつもない難題 | メディア業界 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準


2021年3月期のセグメント別売上、利益はまだわかりませんが、2020年3月期までのセグメント別売上はこんな感じになってます。


朝日新聞社 | セグメントごとの売上高・利益等


これを見ると2020年3月期のメディア・コンテンツ事業は売上高3,118億1,700万円、営業利益は49億9,900万円の赤字。不動産事業は売上高385億1,400万円で、営業利益は74億700万円となっています。不動産事業が利益を出しているのは確かにそうなんですけど、でも不動産事業の売上高が仮にゼロになったとしても、550億円も純利益が減ることにはなりません。元々そんなにないし。そう考えると、(新型コロナウイルスの影響かどうかはさておき)よほどすごいレベルでメディア・コンテンツ事業の打ち上げが落ち込んでない限り、こんなことにはならないですよね。

そのうちどっかで誰か偉い人が詳しく解説してくれるかな。



新聞事業もいよいよ終わり

不動産事業で延命してきた新聞事業もいよいよ終わりなのか感がありますね。新聞メディアに対しては、正直言って社会のためになっていることと社会の害悪になっていることとを比べると害悪の方が多いかなあという気はするのですけど、でも会社としては多くの文化事業を支え、文化的な活動の発展に寄与してきたのは事実なのでなくなってしまうのは困る。新聞社がなくなることで存続出来なくなるもの、大きなものでいえば高校野球や将棋の棋戦など小さなものでいえば数え切れないぐらいあるわけで、単純に潰せば良いということでもない。朝日新聞社といえどもなんとか立ち直って欲しいと思いつつ、でもやっぱり新聞は高いから読まないんだよなあ。有料会員も検討すらしたことない。

やっぱりメディア企業として新聞事業はいよいよ終わりなんですかねえ。