十分に考えて臨み、感じながら動く

方向音痴の女性のイラスト
たぶん僕の働き方の「癖」みたいなもんなんだと思うんですけど、事前に考え方とか方針とか方向性とか、そういうのをきちんと考えて作り込んでから実作業に向かうというのが好きです。

逆に、ぼんやり現場に行ってぼんやり対応するのは好きではありません。現場での臨機応変な対応は重要ですが、「臨機応変」というのは自由と同じではないと僕は思っています。「臨機応変」が求められるようなシチュエーション、例えば答えが存在しない問題に直面したとき、基礎的な方向性に沿ってあるべき回答を求めて提示する、それが「臨機応変」であって、場当たり的に対応するのはただのカオスです。それで上手く合理的に収められる人もいるのかも知れないけれど、残念ながら僕にはその才能はなくて、全くフリーの状態で対応するとただ方針がぶれるだけ、混乱するだけになってしまいがちです。損するのが自分だけなら別に自業自得だし良いけれど、たいていの場合は他人、お金を払ってくれるお客様や同僚や隣人に迷惑を掛けることになるし、それは出来るだけ避けたい。

だから僕は、事前に方向性や考え方のすり合わせを熱心にやります。

でも時々勘違いされることもあります。「この人は事前にすべての段取りを決めておきたいんだ」「すべてを想定して答えを用意しておかないと気が済まないんだ」「想定外のことを許せないんだ」そんなことを思われることがありますが、いや、違うんですよ。例えばカフェ営業とか、何が起きるのかその日になってみないとわからない現場で、すべての答えを用意するのは不可能です。そんなことをしても無駄だし、動きづらくなるだけ。現場で大事にすることはマニュアルを遵守することではなくて、状況を感じてそれに合わせて動くこと。その動くときにガイドライン、補助があったら判断に掛かる時間を短縮出来たり、判断がブレることを少なく出来たりするよね、そのためにどういう方針で何を目指して活動するのかは共有しておくんだ、そういうことです。



十分に考えて臨み、感じながら動く

つまるところ、目的や方針や方向性から外れていなければ、何をやろうと自由です。どんなに見た目キレイに見えたとしても、その目的を損なっていたらそれはNGです。何か想定外のことや前例のないことが起きたら、その基本的な部分に立ち返って判断する。カフェ営業なら、どう対応したらお客様の不便を減らすことが出来るかを第一に考える。回避できない不便が生じるのであれば、事前にお知らせするし、こちらのアレンジに必要な情報は確実に聞き出しておく。お客様に急な利益が生じるのは良いけれど、急な損害が生じるのは絶対に避ける。

細かく出すとキリがないように見えるけど、ここで考えていることは「お客様に気持ち良く過ごして帰っていただきたい」だけで、それ以外のことは些末なことです。そして、世の中にたくさんいる、気持ちの良いサービスをしてくれる人たちというのは、それぞれに決めているポリシーがあり、事前にそれをきちんと練り上げた上で、その場で目の前の僕らのことを見て感じて動いてくれるわけです。だから、やることとお客様がして欲しいことがシームレスに繋がるサービスになる。それが良いサービスってものです。



接客だけの話ではなく。

こういうことは、接客だけでなくありとあらゆる仕事に通じることだと思うんですけど、日常働いていると「仕事が出来る人は無自覚にやってる、出来ない人は考えたこともない」ぐらいなことで、もっとちゃんと考えればいいのにと思うことしきりです。サービスを重要視していたスペインレストランではもちろん、以前いた居酒屋でもそうしたことは比較的共有されていましたが、所帯のデカい今のレストランではあまり大事にされていません。エンジニアやってる会社でも、95%の社員は何も考えずに仕事が発生してるから対応してるだけだなあ。もうちょっとね。考えて仕事したら仕事に奥行き作れるんじゃない?社長がどう思ってるかは知らんけど、それで給料が出てるんだからいいんだろうな。

ちなみに最初の段落で「僕の働き方の「癖」みたいなもん」と書きましたが、でもこれ僕の性格とは関係がなさそうです。僕そんな細かい人間じゃないですし。きっと日々働きながら、大事にする中で醸成していくことなんでしょうね。接客業でも出来てない人は大勢いるから、意識次第ってことなんでしょう。