- 母の実家は北海道増毛町。漁業が中心で人口は4,000人強。人口密度は11.5人/平方kmで、京都市の154分の1。最近鉄道が廃止になって、今はバスが唯一の公共交通機関。
- 祖父が亡くなって祖母1人になったが家が古く、日用品を買うのにもバスで30分という立地のため東京または静岡で引き取ることに
- 周りに知人もなく都会は慣れないということで北海道に戻り、施設に入所することに
- 入所した増毛町の施設で「言うことを聞かない」「ものを食べない」「体が弱く医療施設ではないので面倒見切れない」などの理由で退所を求められる
- 母と叔父が面会に行ったところ、認知能力に問題はなく、きちんと喋る
- 調べた結果、怒声を上げる、食事を引き上げる、そもそも食事が酷いなどの問題があることが判明
- 別の施設に移動
- 知人も近くにおり食事も普通にもりもり食べよく喋るようになって、そのまま認知症にもならずに亡くなる
相手が高齢者であることを良いことに、もうダメだの手が掛かるだの言いたい放題だった増毛町の施設に対しては、悪意しか感じない。病気で面倒見切れないから出て行って欲しいと、なかば追い出されるようにして退所して、移転先の施設で健康診断を受けて「歳は取ってるけどどこにも悪いところはない」と診断されたのはほんと意味がわからなかった。要はちゃんと食べさせてもらえずに衰弱していたということらしくて、それやっぱり虐待だったんじゃないか。祖母は特に文句を口に出して言わない大人しいタイプだったから、余計に言われ放題だったのだと思う。
母も叔父もその施設がそんなところだと知らずに入れてしまって後悔しただろうけれど、施設を移ったあとは幸せに亡くなったようで、本当に良かった。
高齢者施設での高齢者に対する虐待に関しては、京都新聞でも去年こんな記事があった。
介護施設職員による高齢者虐待は近年、増加の一途をたどる。厚生労働省によると、2016年度は計452件(前年度比44件増)と過去最悪を更新した。このうち、暴力などの「身体的虐待」は6割超に上る。
老人ホーム、過酷な労働環境要因も 91歳女性暴行受け死亡 : 京都新聞
日常の業務がストレスフルだったのかも知れないけれど、そしてそれに対する手当が十分ではなかったのかも知れないけれど、だったら入所者に当たっても良いのだろうか。そして僕の祖母の話はもちろん大きなニュースにはならず、通報もしていないから厚生労働省の数字にも入っていないと思う。つまりそんな事例は、日本全国にまだまだ山のようにあるということだ。
単純に施設や働くスタッフの人たちを糾弾すれば済む話ではない。後に入った施設ではそんなことはなかったし、ほとんどのスタッフの人は一生懸命働いてくれているんだと思うのだけれど、でもストレスが重なっていけばどんな人でも壊れてしまうし、そのごく一部が何らかの虐待に繋がってしまうこともあると思う。
もちろん現場だってその必要性は感じていて、実際上の記事でもスタッフに対するメンタルケアに取り組んでいると書いてあった。
京都府内のある特別養護老人ホームでは、年1回のペースで職員のストレスチェックを行っている。ただ、同施設関係者は「入所者からの暴言や暴力行為がきっかけとなり、突発的に手が出ることもありうる」と打ち明ける。職員の負担軽減を図るため、人材確保を目指すが、「資質が乏しい人でも雇わなければやっていけず、業界全体が悪循環に陥っている。施設頼みの対策には限界があり、公的な支援が不可欠」と話した。
老人ホーム、過酷な労働環境要因も 91歳女性暴行受け死亡 : 京都新聞
でもそんな金は施設にも、日本にもない。結果、スタッフの人たちの良心に頼るしかなくなっていて、それが壊れてしまうとどこかに被害が出てしまう。きっと構造的な問題なんだろうなあこれは。
僕には、どうしたらいいのかよくわからないのだけど。