賃金の低さと雇用流動性

個人的な感覚による話で申し訳ないのですが、求人に関する需要が十分にある状況においては、賃金が低ければ低いほど雇用流動性は高くなるんじゃないのかなと思っています。



例えば今京都府の最低賃金は882円(2018年10月1日より実施)になっているので、パートタイムの仕事のほとんどは時給が900円となっています。最低賃金が上がり始めてから顕著なのですが、会社や職種による時給の差というのはほとんど無くなってきました。軽作業でも接客でも朝でも昼でもどれ選んでも900円。時間帯が特殊だったり、重労働だったりするとさすがに上がりますけど、京都の場合は引っ越しバイトでさえ時給1,200円前後から。以前みたいな「稼ぎたかったらしんどい仕事」という感じが薄まる一方で、どんな仕事を選んでもそこそこは稼げるという感じになってきました。通販会社の事務バイトの補充が比較的容易であることと、居酒屋の求人への応募が殆どないこととは、これらの条件が重なった結果であろうと思います。お世話になっている居酒屋には悪いけれども、今、しんどい思いして居酒屋で働く理由がないんですよね。よっぽど好きなら別ですけど。

で、思うわけですよ、別にどの仕事に移っても良いんだよなあと。生活が楽かどうかは別にして、今の仕事を辞めて次の仕事始めたところで、待遇がほとんど変わらないのであれば、少なくとも生活レベルは変わらない。新しい職場、新しい人間関係にストレスは感じるとしても、それも1ヶ月もすれば慣れてしまうし、転職先の労働環境が良くなければまた転職すればいい。


先に書いたようにどこに行っても時給900円でそれ以上でも以下でもないので、学生アルバイトならどこで働いてもまずまず稼げる一方で、非正規雇用者は常に生活自体は苦しいです。一般的なサラリーマンのように完全週休2日、1日8時間(昼休みは時給にカウントされないので給与の対象は7時間)で働いたとしたときの、月額給与は138,600円。所得税や住民税、社会保険を差し引いた手取りは100,000円前後ではないでしょうか。つまり給与以外の色んなものを選択できる —— 職種、勤務地、勤務時間、上司、同僚など —— しどこにでも行けるけど、どこに行っても貧しい。雇用流動性ってそういうことじゃない気がするけど。


もちろんそうした非正規の仕事を本業ではなく副業として捉えると、今は選択肢がとてもたくさんあって良いんじゃないかなと思います。少しずつ副業が解禁されているみたいですが(会社による)、どれを選んでも収入が変わらないのなら収入ではなくて職種で選ぶことが出来ますよね。サラリーマン時代には考えも及ばなかったけれど、めっちゃ働いてる今なら、週何回か牛丼チェーンで働くのも気分転換になって良いかもなと思ったりします。そういう働き方をしたことない人にとっては「そんなん無理」と思うかも知れないけど、いけるいける、出来るって。終わらない残業するよりかは、随分楽ですしね。メンタル的に。


僕はもういい年なのでなかなか「職種も職場も、気分で選ぶ。」みたいな働き方は出来ないけれど、もし20代で今の状況だったら、そういう働き方を選んでいるかもしれません。あの当時、安い給与に少しでも上積みするために残業代が出る限界まで頑張って残業するという働き方をしてたけど、あのとき、「定時で上がるようにして必要なら他で少し働く」という考えが出来てたら、労働時間は長くても、メンタル的な負荷はだいぶ減っただろうに。なんとなく今はそう思います。