【健康に関するメモ】 第15回:眠気と食事の関連について

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「健康に関するメモ」シリーズについて

このシリーズは健康に関する話題、特に「根拠無く危機感を煽る」または「根拠無く安全性を訴える」ような話題について、科学的な情報を持ち根拠を提示できる人の意見を集め、可能な限り文献や論文、公的機関の報告書に目を通した上でまとめています。情報源としては正しさが疑われるページが多数あることは承知していますが、記述に出典元が付けられており出典元と合わせて合理的であると判断できる場合には、Wikipediaの記述を根拠として採用する場合もあります。

このシリーズの性質上いわゆる「トンデモ」や「似非科学」と言われている話題を扱うことが多くなりますが、始めからトンデモだと決めてかかるのでは無く、もちろん正しいと決めてかかるのでも無く、きちんとした根拠が揃うまでは出来るだけフラットに話題を捉えるよう心がけます。

ただ僕自身は専門の知識を持っているわけではありませんので、どう努力しても1ブロガーのメモ書きを越えるクオリティを保証することは出来ません。基本的には自分が考えるためのベースとしての資料集積でありますし、内容の正しさについて疑問に感じる部分があれば独自に調べることをオススメします。


第15回は眠気と食事の関連について。


目次

  1. 食事を摂ったあと眠くなる原因は?
  2. 「血糖値」説は糖尿病初期症状を混同している?
  3. 「血流」の話は何かソースがあるのかな
  4. 医師の話ではこんな話も
  5. まとめ




食事を摂ったあと眠くなる原因は?

Webで検索してもっとも多くヒットするのは「血流」や「血糖値」に関するものです。

昼食(ランチ)後の強烈な眠気を抑える方法まとめ!食事中の水分補給や血糖値上昇を抑えよう – Latte

食後に眠気が起きる原因の一つとして、脳の血流が少なくなることが挙げられます。 胃腸が活性化する食後は、そちらに血流が集中するため脳にまで届きにくくなります。その結果、脳の血流が鈍り、眠気を引き起こすと考えられています。

また、「インシュリン分泌の乱れ」もその1つです。 食事をインスタントラーメンやファストフード、ケーキなどで済まそうとすると、血糖値が上昇します。それを安定させるためインシュリンが分泌されますが、そのせいで血糖値が一時的に乱れてしまいます。眠気の原因はここにあると言われています。



確かにどちらも聞いたことがありますし、僕も信じていたのですが、改めて様々な記事を読んでみて思うのは、この説を主張している記事のどれにもソースが書かれていないのですよね。ソースを書く必要が無いほどよく知られていることということだとは思うのですが、きちんと考えるときにはやはりきちんとしたソースを確認したい。せめて、病院や行政機関が運営するサイト内のコラムであって欲しいのですが、出てくるのは健康志向サイトばかり。うーん。


「血糖値」説は糖尿病初期症状を混同している?

「血糖値」が上がりやすいものを食べると、食後に眠くなるというようなことを書いている記事はたくさんあるのですが、いろいろな記事を読んでみると、「インスリンの分泌が不安定で血糖値がなかなか下がらない場合に、眠気を生じる」と書かれていることが多いことに気付きます。

インスリンが正常に分泌されないのは、膵臓が弱っている、つまり糖尿病の初期症状です。それを緩和するために、糖類の摂取を控えたり、食べる順番を工夫するなどの対策は有効だと思いますが、逆に、「今日の食事がこうだから眠くなった」ということではないでしょう。

食後の眠気は一時的な低血糖が原因?!食後の急激な眠気の原因と対策方法 | iGotit

これらの行動を実践することで、膵臓への負担を軽減させ、インシュリンの分泌量を正常に戻すことができます。3週間程度の期間、実践して頂ければ効果を実感できるでしょう。食後の急激な眠気を感じる方は、是非実践してみて下さい。


とのことなので、眠気対策というよりかは、「病気のサインなので注意して」という方が説得力がありそうです。


「血流」の話は何かソースがあるのかな

半ば常識として書かれていることが多い「血流」の話。

理屈では、「食事を摂ると消化器官に血液が集まって脳の血液が減るので眠くなる」。対策としては、「たくさん食べない」「消化器官の負担を減らす」。割と筋が通っているようにも見えますが、本当に脳の血流が減るのか?ということについてきちんと書かれている記事はなかなか見つかりません。

そもそも、「脳の血流が減る」なんていう自体が起きたら危険じゃないのかな?そう思って調べてみると「食事性低血圧」(または「食後低血圧」)という症状があることがわかりました。これは、食後に血圧が下がってめまいがする症状ですが、健康的な人は筋肉の血液などを使って血圧を維持するようになっているので、低血圧は起こりません。つまり、健康的な人であれば、脳の血流は減らないんです。そうなの?

知っておきたい「食後低血圧」 | はじめよう!ヘルシーライフ | オムロン ヘルスケア

食事をすると、消化・吸収のために大量の血液が腸の近くに集まります(※2)。そのままだと心臓の血液量が減り、血圧は低下しますが、急激な低下は危険なので、私たちのからだには心拍を速めたり、血管を収縮させるなどの方法で、血圧を維持するセーフティー機能が備わっています。これによって、脳への血流も維持されているので、健康な状態では食後にめまいなどは起こりません。ところが加齢や病気によって、体内の代謝をコントロールする自律神経などがスムーズに働かなくなることがあります。すると、食後の血圧を維持するセーフティー機能がうまく作用しなくなり、急激な血圧低下が起こりやすくなるのです。



さらに、咀嚼をすると脳の血流量が増えるという話もありました。

食事の時に噛む回数を今の1.5~2倍にする | 健康メモ

18歳から40歳までの12人にガムを噛んでもらい、その後、脳の血流がどのように変化するのかをPETで調べました。すると、咀嚼中は大脳の感覚運動領野で25~28パーセント、味覚中枢で9~17パーセント、小脳などで8~11パーセントも血流量が増加し、また、咀嚼をやめると血流量が元に戻ることがわかりました。


眠気の話をすると「脳の血流が減る」、ボケの話をすると「脳の血流が増える」。健康ネタってほんといい加減ですね。脳内の血流が減るという論文は見つけられませんでしたが、咀嚼によって脳内血流が「増える」という論文(発表)は見つかります。

第15回日本咀嚼学会学術大会 一般講演抄録集 (その1)


これらの話をまとめると、「食後、低血圧を生じる」という症状が高齢者を中心に存在していることは確かなようですが、むしろ、咀嚼によって脳内の血流が増えていることが確認されており、一般的な健康的な人の話においては、「食後に脳内の血流が減る」という話には信憑性が無いように見えます。もちろん、食事中・食事直後は咀嚼により血流が増えているが、その後消化にともない徐々に減少するということなのかもしれませんが、その当たりを総合的にまとめたテキストを見つけられませんでした。どうやって探せば良いんだろう。



医師の話ではこんな話も

実は食事とは関係ない? ランチ後の眠気撃退法!-シティウェーブ京都版

「眠気にもリズムがあるんです。一般に人間は、深夜の午前2時〜4時に、24時間で一番の眠気のピークがくるのですが、お昼にもちょっとした眠気の山がきます。それが、ちょうど午後2時〜4時(上グラフ参照)。ですから、食事との直接的な関係はないんですよ」と教えてくれたのは、京都大学大学院医学研究科の准教授である角谷寛さん。 では、私たちの多くがお昼ご飯を食べると眠いと感じるのは、気のせいだったの?

「確かに、昼食をとると眠くなるという話はよく聞きますよね。これはご飯を食べると眠くなるというより、ご飯を食べることで本来の体のリズム(昼間に眠くなる)になっている、ということなのです」

えっ! どういうことでしょうか。「ご飯を食べていないというのは“生き物”として危険な状態。何も食べていない状態が続くと、いずれ死に至るわけですから。そういうストレスがかかった状態だと、人間の体は本来のリズムで動けません」

つまり、お昼を抜いたり、腹八分目でとどめると眠くならないのは、「それだけ『もっと食べたい!』というストレスが働いて、眠気がやってこないだけなのです」。


あー。人間の体は自然と眠くなるように出来ていて、昼食後に眠くなることが本来の人間の体のありかたってことか。眠気を生じないようにするのであれば、ストレスを掛ければいいと。そして、低糖質だとか、腹八分目だとかは、なんだかんだと理由が付いていますが、実は体にストレスを掛けて眠くならないようにしているだけってことか。水分を取らないもそうかな。

わかりやすいけど、そんなことでいいんですか、角谷先生?

角谷先生は日本睡眠学会の理事もされているようなので、その辺調べたら有用な資料があるかもしれませんね……探すのはなかなか骨が折れる作業ですが。

日本睡眠学会 – The Japanese Society of Sleep Research



まとめ

ちゃんとした資料を見つけられたとは言いがたいので、まとめと言えるか解りませんが、様々な文献、論文を読んだ結果では、

  • 食事をしても脳内の血流が減るわけではない
  • 血糖値が上がると眠くなるが、食事をして血糖値が下がらないのは、膵臓の異常を疑うべき

という2点については確認出来たのかなと。
また眠気の根本原因と、その回避方針については、

  • 人間の体は昼食後のタイミングで眠くなるように出来ている(生体リズム)
  • 昼食を満足させないことでストレスを掛け、本来のリズムを崩すことで眠気を回避出来る

ということなので、食事内容の変更にせよ、生活リズムの変更にせよ、負担になりすぎない程度にストレスを掛ければ眠気は回避出来そうです。なお、生体リズムに関しては日本睡眠学会のこの資料内に、実験資料が添付された詳しい説明があります。

「初心者のための睡眠の基礎と臨床」

あと、まあ身も蓋も無い話ですけれども、

  • そもそも、寝不足だと眠くなります。

質の良い睡眠を十分に取るようにしましょう。
まあそういう結論になりますよね。


結論:あまり、食事と睡眠の関連性について、強く結びつけて考えない方が良さそうです。