不確かな情報で「イカサマ科学」を叩くやつは「イカサマ科学」と同等

ayuさんとこでこんな記事あったらしいので読んでみたらこれが酷くて、ayuさんには申し訳ないけどちょっと書く。


歴史に残る偉大な「イカサマ科学」まとめ(CROSSBREED クロスブリード!)

160:エンダイブ(福島県):2008/10/31(金) 14:50:50

マイナスイオン:根拠の「レナード効果」は100年前の仮説で、科学的実証研究ゼロ
カテキン:緑茶1日5杯飲んでも胃がんのリスクは上昇も低下もしない
コラーゲン:分子が巨大で皮膚には浸透しない&飲めばただのアミノ酸として分解吸収
コエンザイムQ10:アンチエイジング効果にも疑問/過剰摂取は酸化促進で動脈硬化も
にがり:主成分の塩化マグネシウムが下痢を引き起し、強制排出で体重減少→ダイエット効果?
ミネラルウォーター:水道水より砒素の基準が5倍も緩い・ハイリスクハイリターンの嗜好品
海洋深層水:逆浸透膜法で淡水化すると東京湾の表層水でも同質に(もともとケイ素しか違わない)
クロレラ:免疫力アップのためには1日1000錠(体重50kg当たり200g)が必要
イチョウ葉エキス:プラシーボ効果のみ/皮膚炎&アレルギー誘発成分「ギンコール酸」含有
キチン・キトサン:「食物繊維としての整腸作用」以外の全ての効果が未確認
リノール酸:過剰摂取すると生活習慣病・各種ガン・アトピー・血栓・狭心症・喘息なども誘発
核酸(DNA・RNA):若返り、ダイエット効果に根拠なし/プリン体のとり過ぎで通風・高尿酸血症も
キシリトール:虫歯菌に利用されにくい糖アルコールだが、虫歯を防げるわけではなく過信は禁物
エストロゲン:効果以前に国内販売10銘柄中含有率ゼロ/天然ざくろ内でも「検出限界以下」
大豆イソフラボン:厚生労働省も過剰摂取に警鐘/妊婦や乳幼児の追加摂取に注意促す
ポリフェノール:じゃがいも、玉ねぎも赤ワインと同程度含有/体内での抗酸化効果はまだ研究中
痩身茶:中国産で致死事件まで発生/利尿効果・下剤効果成分で体重減少ダイエット
ベータ・カロテン:90年代の大規模研究から肺ガン発生率上昇・短命化などの報告あり



ayuさん曰く、

まあ、真偽のほどはご自分でお調べください。

わかりました。調べます。
(煽っておいてこの逃げ方は、僕は卑怯だと思いますけどね)





調査結果

以下、順に列記します。


マイナスイオン:根拠の「レナード効果」は100年前の仮説で、科学的実証研究ゼロ

→ 正しい


カテキン:緑茶1日5杯飲んでも胃がんのリスクは上昇も低下もしない

→ カテキンの効果は胃がんだけでは無い。典型的な詭弁。
胃がんのリスクが低下しなくても、他のリスクを下げるのであれば摂取して良いのでは。


コラーゲン:分子が巨大で皮膚には浸透しない&飲めばただのアミノ酸として分解吸収

→ 正しい


コエンザイムQ10:アンチエイジング効果にも疑問/過剰摂取は酸化促進で動脈硬化も

→ 効果がはっきりしないという点では正しい。だがそれは過剰摂取に対しても同じこと。
総合的に判断して、以下が正しい。

  • 「有益性のある調査結果があるが、効果を確認するまでには至っていない」
  • 「調査件数が乏しく安全な摂取量の設定は困難である」

参考:
コエンザイムQ10について – 「健康食品」の安全性・有効性情報


にがり:主成分の塩化マグネシウムが下痢を引き起し、強制排出で体重減少→ダイエット効果?

→ 正しい、が、推測を交えた記述は煽りすぎ。正しくは以下。

  • 痩身効果は確認されておらず、過剰摂取は下痢の原因となる

参考:
「にがり」と「痩身効果」について – 「健康食品」の安全性・有効性情報


ミネラルウォーター:水道水より砒素の基準が5倍も緩い・ハイリスクハイリターンの嗜好品

→ 少なくとも、東京都の基準では間違っている。ヒ素の検出基準は下記の通り。

  • ミネラルウォーター:検出されないこと
  • 水道水:ヒ素の量に関して、0.01mg/L以下

参考:
水質に関するトピック:第12回 ミネラルウォーター類|東京都水道局


海洋深層水:逆浸透膜法で淡水化すると東京湾の表層水でも同質に(もともとケイ素しか違わない)

→ 大体正しい。

参考:
海洋深層水 – Wikipedia

正確には「細菌的な意味で綺麗ではあるが、濾過後の水道水の方がもっと綺麗」「水道水よりもミネラルが豊富だが微量で有り、健康に影響を与えるほどではない」など。特別健康に良いというものではない。ただし効果については研究が進められている途中であり、飲用以外の用途での効果も確認されつつある。


クロレラ:免疫力アップのためには1日1000錠(体重50kg当たり200g)が必要

→ この文章自体は正しいが、クロレラの評価はそれだけではない。カテキンと同じ種類の詭弁。
正しくは、

  • 服用しても免疫力アップは望めない
  • 高血圧と高コレステロール血症、肝機能が改善したという報告あり
  • アレルギー症状を生じる可能性がある
  • 血液凝固剤の効果を下げる可能性がある

ということで、総合的に判断すると、どうでもいいんじゃないの。少なくとも「イカサマ」とまでは言えない。

参考:
クロレラ – Wikipedia


イチョウ葉エキス:プラシーボ効果のみ/皮膚炎&アレルギー誘発成分「ギンコール酸」含有

→ 間違い。コントロールされた摂取量において有効性と安全性が確認されている。

ただし安全性については製品としてきちんと内容量をコントロールされた製品(例えば医薬品)のについてであり、市販されている製品には安全とみられる水準を超えた商品もあることから、服用には十分な注意が必要である。

参考:
イチョウ葉エキスの有効性および安全性 – 食品成分有効性評価及び健康影響評価プロジェクト解説集


キチン・キトサン:「食物繊維としての整腸作用」以外の全ての効果が未確認

→ 「整腸作用のみ確認されている」という表記は間違い。正しくは以下の通り。

  • 高コレステロールの人に対する有効性が示唆されている。ただし実験は腎不全患者や血液透析患者に対して行われたもので、一般的に効果が確認されているわけではない
  • 安全性が示唆されている

効能を裏付けるとまでは言えないが、コレステロールに対する有効性を示す実験データはあることから「インチキ科学」とは言えない。

参考:
キチン・キトサン – 「健康食品」の安全性・有効性情報


リノール酸:過剰摂取すると生活習慣病・各種ガン・アトピー・血栓・狭心症・喘息なども誘発

→ 過剰摂取が健康に良くないという点では正しいが、その後の表記はいかにも危険を煽るスタイルで有りむしろ「インチキ科学」的。

脂肪酸であるから、過剰摂取が生活習慣病に結び付くのは当然である。その他の病気の原因については研究結果はなく、確認されていない。総合的には「食品に含まれる量であれば、経口摂取でおそらく安全」と判断される(つまり良くも悪くもない。油分であることを鑑み常識の範囲内で摂取のこと)

参考:
リノール酸:「健康食品」の安全性・有効性情報


核酸(DNA・RNA):若返り、ダイエット効果に根拠なし/プリン体のとり過ぎで通風・高尿酸血症も

→ 若返りに関しては効果なし。ただし手術後または重篤な疾患の回復促進、免疫機能の向上に有効性が示唆されている。

参考:
核酸 – 「健康食品」の安全性・有効性情報

なお核酸と痛風の関係については、「関係がない」という情報が多くある。詳細は不明。


キシリトール:虫歯菌に利用されにくい糖アルコールだが、虫歯を防げるわけではなく過信は禁物

→ 間違っている。正しくは以下の通り。

  • 歯の再石灰化を増強する機能があり、虫歯の予防に効果があることが確認されている
  • 虫歯を治すことは出来ない
  • 幼児の急性中耳炎発症率を低下させる効果が示唆されている
  • 長期に多量摂取するのは危険性が示唆されている

参考:
キシリトール:「健康食品」の安全性・有効性情報


エストロゲン:効果以前に国内販売10銘柄中含有率ゼロ/天然ざくろ内でも「検出限界以下」

→ 不明。

ただ個人的にはエストロゲンのような多すぎても少なすぎても障害を起こす、微妙なバランスにあるホルモン物質を安易に添加する食品は口にすべきではないと思う。


大豆イソフラボン:厚生労働省も過剰摂取に警鐘/妊婦や乳幼児の追加摂取に注意促す

→ 間違ってはいないが、危険性だけを記述するのはいかにも煽りすぎ。

安全性が確認されている1日の摂取量は75mg/日(大豆イソフラボンアグリコン換算値)。日本人の平均値はおおよそ20mg/日程度。納豆1パックでおよそ30mg、豆腐一丁で80mg、豆乳100mlあたり25mgなどとなっているので、そのあたりを考慮しながら判断すると良い。

参考:
食品安全委員会:大豆及び大豆イソフラボンに関するQ&A | 食品安全委員会 – 食の安全、を科学する

妊婦や乳幼児への注意は、安全性が確認されていないため。大豆イソフラボンに限らず、注意するにこしたことはないと思います。


ポリフェノール:じゃがいも、玉ねぎも赤ワインと同程度含有/体内での抗酸化効果はまだ研究中

→ 研究中であることは正しいが、そのことと効果があるかどうかは関係がない。そもそも「ポリフェノール」は種類が膨大にある(5,000種類以上)ので、効果を一概には言えない。例えば、お茶に含まれる「茶ポリフェノール」に対しては以下の評価がされている。

  • 適量であれば経口摂取でおそらく安全と思われるが、多量の経口摂取はカフェインの副作用が出やすくなるので、危険性が示唆される。
  • 緑茶カフェインは胎盤を通過し、早産や低体重児出生のリスクを高める報告がある。
  • 過剰摂取は便秘、消化不良、めまい、動悸、不整脈、興奮、不眠、頭痛、利尿、不安、胸焼け、食欲不振、下痢を起こす。
  • 慢性的に長期間、特に多量に摂取していると、耐性、習慣性、精神的依存性が生じることがある。
  • 経口摂取で有効性が示唆されているのは、1) 血中コレステロールおよびトリグリセリドの低下、2) 血圧調節、3) 下痢の治療、4) 認識能の向上、5) パーキンソン病の予防および進行を遅らせること、6) 食道がん、胃がん、膵臓がん、大腸がん、膀胱がん、卵巣がんの予防および乳がんの再発予防、7) 口内のロイコプラキー (粘膜の角化障害) の治療、8) 子宮頚部形成異常
  • 結腸直腸がんの予防に対して有効でないことが示唆されている。

過剰にならない程度で適度に服用を。

参考:
茶ポリフェノール – 「健康食品」の安全性・有効性情報


痩身茶:中国産で致死事件まで発生/利尿効果・下剤効果成分で体重減少ダイエット

→ にがりと同じですかね……よくわかりません。「痩身茶」という種類のお茶があるわけでもないですし。


ベータ・カロテン:90年代の大規模研究から肺ガン発生率上昇・短命化などの報告あり

→ 一部正しいが、基本的には間違っている。正確には以下の通り。

  • 喫煙者が毎日20 mgを5~8年経口摂取すると肺がんおよび前立腺がん、脳出血、心臓血管病のリスクを上昇させ、タバコを吸う人の死亡率を上げる可能性がある

一方で以下の有効性が示唆されている

  • 1) 食事によるβ-カロテンの男性喫煙者に対する気管支炎や呼吸困難の予防、2) 栄養失調の女性において妊娠に関連した母親の夜盲症、下痢、発熱や死亡率の減少、3) 老人性黄斑変性症の進行の遅延、4) 血漿中のβ-カロテン濃度が低い男性に対する前立腺がんのリスクの減少、5) 胃に前がん状態の病変があり胃がんのリスクの高い人における胃がん予防、6) 光感受性の人における日焼けの防止、7) 白斑 (板) 症患者の症状の寛解、など

参考:
カロテン – 「健康食品」の安全性・有効性情報



まとめ:不確かな情報で「イカサマ科学」を叩くやつは「イカサマ科学」と同等

大した根拠もなく「これを摂取すれば健康に/綺麗に/スリムになれる!」と主張するのは、健康食品とか化粧品とかでよくありがちですが、まあ「イカサマ」も含まれてますよね。商売とは言えあくどいことやってんなあと思います。しかし一方でそれを否定するために、その害毒を誇張すること、それも根拠なく主張することは、前述の「イカサマ」と同様に愚かなことだなあと思います。

基本的に考えてることは同じで、根拠なんか出さなくても、

  • 最初の数点に正しいことや共感を得られやすいことを列記しておく
  • 根拠がない場合は印象を上げる
  • ネガティブな要素があればそれだけを取り上げる
  • 気持ち良く言い切る
  • 数を増やしてボリューム感を上げ、説得力を持たせる
  • と言うことさえやっておけば、バカは簡単に騙される

つーことなんですよね。そんなもの書く人に「インチキ科学」を批判する資格があるとは到底思えませんが……


現実的に考えて、読むひと全員が全項目について調査出来るわけではないわけですから、こういう嘘や誇張も混じった不確実な情報を流布するのは止めるべきだと思うんですけどね。ネットリテラシーだの、「嘘を嘘と見抜けないと」だのと言ったところで、そんなの普通の人にわかるわけないじゃん。



あとどうでもいいけど、

このタイトルの記事のアフィリエイトで表示されるのが「万田酵素」でさすがにこれは草不可避