京都の老舗鰻屋「かねよ」の商標権の話と、図表付き商標のアピールの話

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昨日に引き続きまして、商標のお話。



2軒の「かねよ」

京都には「かねよ」という名前の鰻屋さんがあります。「日本一のうなぎ」を自称し、鰻丼の上にでっかい卵焼きが載った「きんし丼」が名物なのですが、このかねよ、諸事情ありまして2軒あります。京都市街にあるのが「京極かねよ」。滋賀県との県境にあるのが「逢坂山かねよ」です(「逢坂山かねよ」の方は正確には滋賀県大津市)。で、まあ京都ではとてもありふれた事ではあるのですが、この2軒はもともと1つでありかつ犬猿の仲です。「逢坂山かねよ」が明治5年(1872年)創業、「京極かねよ」が大正時代創業なので、「逢坂山かねよ」から分かれたのが「京極かねよ」ということになるんじゃないでしょうか。そんなことはサイトには書いてませんけど。

日本一のうなぎ【かねよ】
京極かねよ 店舗のご案内


「きんし丼」を巡る商標の争い

んでまあ、この2店は色んなことで地味に喧嘩してるんですけど(どっちが「日本一」なのかとか)、そのうちの1つが「きんし丼はどっちが作ったか」「きんし丼はどっちのものか」です。いやあ元々1つなら最初からあって受け継いだんじゃねーの、そもそもその店しか出来ないというほど特殊なもんでもないんじゃねーのと思うわけですが、わざわざ「他店では味わえない」と書いているところを見ると両「かねよ」さんはそうは思っていないようです。当然、商標についても争っていて、特許庁の商標検索サービスで「きんし丼」を検索すると3つの登録が見つかります。

  • きんし丼(登録番号:5314080)
  • §日本\一∞きんし丼(登録番号:5476697)
  • §日本一∞登録商標\きんし丼(登録番号:5482114)

単なる名詞としての登録では難しいのかいずれも図表付きの登録で、権利者は3つとも「株式会社かねよ」となっています。…が、これ、実は2種類の「株式会社かねよ」が登録を行っています。つまり「逢坂山かねよ」も「京極かねよ」も法人名は「株式会社かねよ」。商標について具体的に言うと「逢坂山かねよ」の「株式会社かねよ」が持っている商標が、

  • きんし丼(登録番号:5314080)
  • §日本一∞登録商標\きんし丼(登録番号:5482114)

「京極かねよ」の「株式会社かねよ」が持っている商標が、

  • §日本\一∞きんし丼(登録番号:5476697)

です。

時系列的には、「逢坂山かねよ」の「きんし丼」がまず出願(2009/10/20)、続いて「京極かねよ」が「§日本\一∞きんし丼」で出願(2010/3/25)、「逢坂山かねよ」の「きんし丼」が登録され(2010/4/2)、「京極かねよ」の「§日本\一∞きんし丼」が拒絶査定(2011/3/30)、それを受けて「逢坂山かねよ」が「§日本一∞登録商標\きんし丼」を出願(2011/4/19)、査定不服審判を経て「京極かねよ」の「§日本\一∞きんし丼」が登録(2012/3/9)、「逢坂山かねよ」の「§日本一∞登録商標\きんし丼」が登録(2012/3/30)。

ああややこしい。もうなんというか、愛憎絡む人間ドラマが妄想できてしまうくらい(本当はどうかは知りません)ドロドロの展開ですね。なにやってんだ。なんかもうプロレスみたいですね。遺恨的な。


Webデザイナー頑張れ

そんな事情で商標の争いが絶えない2店なわけですが、商標というのは継続して使用していないと有効性を失うもの(訴えられなければ大丈夫だけど)なので、きちんと維持しておきたかったらきちんとPRすることが大事です。日本の企業はその辺あんまり神経質ではありませんが、権利関係にうるさい海外の企業(特にアメリカ)だとくどいくらいの数の「®」が製品に表示されていたりします。

で。

「逢坂山かねよ」のウェブサイトみるとそんな感じです。
トップページを見ていただければ解るのですが、基本的にテキストとして出てくる「きんし丼」は画像です。


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さすがにお品書きのところはテキストですが(検索に引っかかりにくくなるし)。


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でもこれは多分間違ってるので「®」削除した方が良いかも。


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Webデザイナーの人は面倒くさかったろうなあと思いました。
テキストの合間合間に画像を入れるとか正直やりたくないよねえ…