芸術性と政治理念の関係について

坂本龍一さんの発言が注目を集めていますが、まぁあんまり中途半端な覚悟で言及するのもどうかと思うのでそれについてはノーコメントで。炎上したいわけではないですし。


ただまぁ気になっているのは、坂本龍一さんの政治的な発言を「変化」「変節」と呼んでいる人がいること。またこれを機に「大好きだったが嫌いになった」と発言されている方がいること。

坂本龍一さんと言えば古くから左翼思想を持ち、学生時代には学生運動に参加、アーティストとしての活動を初めて以降折に触れそうした活動を行ってきた方で、そのことはあまりに有名です。今さらの変節ではありません。そうした政治理念がどれくらい音楽家としての作品に滲んでいるのか僕には解りませんけども、少なくとも僕にとっての「坂本龍一」にはそういう味付けはなくて、それはそれ、これはこれです。


まあなので、考え方として、

  • 政治理念も含めて坂本龍一さんの芸術作品が好き

というスタイルも成り立ちますし、

  • 政治理念はよく分からないけど坂本龍一さんの芸術作品が好き

と言うスタイルだって成り立つわけです。あ、

  • 芸術作品はよく知らないけど政治理念には共感する

というのももちろん。


その上で「政治理念が理解できないから芸術作品を好きになれない」というのはないなあと言うのが僕の考え方です。坂本龍一さんの政治的な主張や活動には、賛同できる部分も賛同できない部分もあり、必ずしもすべてが素晴らしいとは思いませんが、その作品は大好きです。というよりも、芸術作品というのはそういうスタイルで楽しむことが出来るものでは無いのかな。

坂本龍一さんに限らず政治理念や政治思想を表明するアーティストが最近増えていますが、その理念や思想に賛同できないからと言って作品を嫌いになる必要はないし、作品が好きだからと言って理念や思想に賛同しなければならないと言うこともないでしょう。そうした芸術作品が大好きな僕らは、政治理念や思想に対する自らの主張を明らかにすることなくその作品を楽しむことが出来ます。そのことによって作品の良さは1つも傷つかないからです。プロパガンダとして作成された作品ではないのですから。


文化とは、そうして育まれていくものだと思っています。