いしいひさいちさんが病気療養で連載を休載(2009年11月21日~2010年3月1日)されたこともあり、前作(第7集)以来約2年ぶりの発売となった第8集。例によって病状が公開されなかったので結構心配していたのですが、開けてみれば相変わらずのいつも通りで安心しました。いつも通り。
先日、2ちゃんねるまとめサイトで「今日のののちゃんが意味不明」みたいな記事が掲載されていましたが、いしい作品のオチが行方不明になるのは昔から割と良くあることだし、ひさいち文庫(発刊休止中)のあとがきにあった会った友人・知人によるエピソードによると、いしいひさいちさん本人にもオチがわからないことがあるらしいので…まぁそういうのは考えても仕方が無いかなと言うか。ストーリーを把握してテキストとして飲み込むだけがいしいひさいち作品の楽しみ方では無いよねとは思います。
【4コマ】今日の『ののちゃん』が意味不明すぎると話題に : 2のまとめR
で、今作の注目は、多分『ののちゃん』でいしいひさいちを知った人にはわからない、コアなファンだけが喜ぶ作品。うひょー。なんという俺歓喜。
それが何かというと、作品の中にたまに混じる学級新聞風の4コマ。作者はののちゃんだったりキクチ君だったり藤原先生だったり校長先生だったりするんだけど、本来の『ののちゃん』と関係しているのはそれが「学級新聞の4コマ」だという設定だけで、掲載されている4コマの内容は、
- シャーロック・ホームズ
- ああ栄冠は君には輝かない
- 仁義もなき戦い
- B型平次捕物帖
- さがし屋ケンちゃん
- ナンセンスBOX
- 鏡の国の戦争
- ガラクタの世紀
- バイトくん
- チャンチャンバラエティ
- コミカル・ヒストリー・ツアー
といった、いしいひさいちファンなら多分わかるだろう有名なネタ。
これらのネタはものによっては単行本になっているものもあるけれど(『B型平次捕物帖』『鏡の国の戦争』『バイトくん』など)、基本的には『ドーナツブックス』『スクラップスチック』といった選集に収められているだけで、新作を作ろうにも発表の場が無く新作を諦めていたようなネタです。多分人気はあるんでしょうけど。それが『ののちゃん』でまさかの復活!どう考えてもフリーダムかつ無茶苦茶な復活方法ですけど(苦笑)、朝日新聞紙上でケンイチ君が怪獣の弱点を探しに飛び立ったり、ハチが理不尽なフリを理不尽なオチで落としたりしていたかと思うともうね、それだけでにやけます。いいぞ、もっとやれ。
もちろんその他の普通の『ののちゃん』もいつも通り面白いです。さすがと言わざるを得ない。少しずつ、本当に少しずつだけど、ののちゃんたちが住むたまのの市(岡山県玉野市がモデルらしい。いしいひさいちさんの出身地)の「キャラ」が立ってきたというか、人間では無くて舞台も含めて全体像がぐわっと立ち上がった感じがしてなんだかいつも以上に、妙な感情移入をしてしまいました。なんかいいなぁ。
今回も買って良かったー
あ、出来ればそろそろ「ひさいち文庫」(双葉社)を再開していただけると嬉しいですね…こちらももう2年出てないので。期待。